人間の持つ「欲」や「恐怖」が、私たちの正常な認識を歪めると書いた。まさに、その通りだ。

 後で冷静になって振り返ると何ということもないのだが、その渦中にある時には、どうしても正しく物事を見たり、理解したりすることができずに、その結果として誤った行動をしてしまう。


 「欲」が出る時には、ついつい自信過剰、あまりにも過度な楽観主義が支配する。すべてを自分の都合のようい方向へ考えてしまう。

 このような間違った認識が、勇気や行動を後押して、最後は事態が好転することもたまにはあるが、たいていの場合には肥大化した欲や希望的な観測に引きずられて、思わぬ罠にはまってしまう。


 「恐怖」が出る時には、さらに強く認識は捻じ曲げられる。人間の感情は欲による甘い希望よりも、恐怖による不安の方がより強烈に意識に作用するものだ。

 この点については、カールマンの「プロスペクト理論」によっても証明されている事実だ。

 一時的な不運や挫折が、今後の人生の長きにわたって続いていくような暗い不安に心が覆われる。そのために事態解決へ向けた前向きな道が見えてこないのだ。そのために現状において問題のないことにまでマイナスが及んでしまう。(たとえば事業の失敗に落胆して健康まで害するなど)


 このような状況に陥ったと少しでも感じたならば、いったんあらゆることをストップして、心静かに自分を取り巻くものを遠くから客観的に眺めることだろう。

 またはこのような適切なアドバイスをしてくれる友人を日頃から大切にするものだ。