年明けから安倍政権の経済政策への期待から株価は上昇を続けている。いくらかでも株を持っている人々は嬉しいだろうし、そうでなくても何だか経済的な明るい見通しを世の中は感じている。

 しかして、その通りだろうか。大幅な金融緩和(20兆円とも言われているが)や経済対策を実行するといっても、その原資はほとんど国債という借金なのだ。

 政府がお金(通貨)を刷りまくって、市中に出まわす。当然のことながら、通貨は希薄化していき、その実質的な価値を減ずる。この場合の通貨とは「円」だ。だから円安が進行していく。


 株価が上昇したといっても、その分だけ通貨の価値が棄損しているので、実質的には儲かってなどいないのだ。株で利益を得た人々は、本当の意味で儲けを手にしたのではなく、棄損した通貨の分だけ「損をしなくて良かった」ということにすぎないのかもしれない。


 「現金の価値が下がるって?」、このことにピンとこない者もいるだろうが、現在進行していることは、まさしく「円」という通貨の棄損だ。だって円安ではないか。

 円高だったからこそ、現在までエネルギーや食料品が安く輸入できて、物価の上昇を抑制することができていたのだ。物価が上がれば、同じ額のお金での購買力は低下する。まさに現金の価値が下がる。

 そもそも政府が「物価上昇の目標を2%」などと明言していることからして、将来には明白に、しかも確実に現金の価値は下がるというものではないか。

 物価が上昇して名目の景気が拡大しても、けっして国民の給与が上がるわけではない。景気が上向くことで、財務省当局は正々堂々と消費税を引き上げる免罪符を獲得するというだけのもの。

 実は関係者がみんなとりあえずの利害を一致させての行進というだけの話。


 しかし現在の日本の国の借金は、もはや将来的にどうこうできるレベルの額ではない。ならば、無理にめんどくさいことを悩むよりは、現在の状況を乗り切りましょうということだろう。

 よく政治家が「子供たち、孫たちの世代にツケを回さない」とかのスローガンを掲げるが、もうすでに解決不可能なくらいのツケを回しているのだ。


 だから私たちはきちんと現状を認識したうえで、つねに賢い道を選択しなければならない。

 株で小金を儲けたとかいって、喜んでいる場合ではない。

 だからといって何もしないのは、さらに最悪ではあるけれど。