溺れるものはワラをもつかむとは、よく言う言葉であるが、逆境にあってジタバタすることこそ、最悪の事態を招きかねない。もっとも危険な夢遊病者の行動だ。


 事がうまく運ばない時に、何とか事態を打開しようとあせって動く、新たな一手に出る、確かに一点突破で状況が好転する場合もあるが、思い付きや感情に引きずられての行動はたいていは悲惨な結果に終わることが多い。


 座して死を待つくらいなら、とにかく行動に走る、この気持ちはわからなくないが、まず冷静に自分の周囲を眺めることが大切だ。


 海にほうり出されて、あわてるあまりにワラをつかもうとバタバタしなくても、落ち着いて浮きながら空を眺める余裕がほしい。海水ならば静かにしていれば溺れることはない。人間の身体はやがて浮いてくるのである。

 雄大な大空を眺めながら、次にたどり着く島を探せばよいことだ。遠く島が見えなくとも、ジタバタして溺れるよりはましだ。


 この当たり前のことが見えなくなるのは、やはり人間の持つ欲と恐怖からだろう。


 最近はブログで自戒の話を書くことが多いが、人生の岐路とはそのような時間なのだろう。