世田谷区の86歳の男性が向かいに住む62歳の女性と、猫の餌やりをめぐり揉め事となり、日本刀で殺傷した後に自らも命を絶つという事件が最近マスコミで報道されている。

 たかだか「ネコのトラブル」で、そんな馬鹿なと思われる人も多いであろうが、この問題はなかなかに根が深いのだ。


 私が新宿区議会議員に初当選した当時、もう10年以上も前の話であるが、その当時から「野良猫」をめぐっての地域のトラブルは続発していた。餌やりだとか糞尿の始末だとか、おおよそ些細なことからのトラブルではあるが、当事者同士はそうとうに興奮するような生活の琴線に触れる問題なのだ。

 都心部における野良猫を「地域ネコ」と位置付けて、行政が不妊・去勢手術のための補助金を拡充してきたり、地域ネコを近隣に住む個人同士の問題ではなく、広く地域全体の課題として取り組むように、区議会でも積極的に働きかけていった。

 当時は、そんな私の活動にも風あたりが強く、「人間を対象とした福祉政策も充分でないのに、ネコなんかに予算をかけてどうする」といった批判も議会内で数多かった。

 しかし粘り強く訴えていく過程で、現在では「地域ネコ」も自治体が取り組むべき課題としての共通認識も生まれてきているし、そのための予算措置も充実してきている。


 それにしても、ネコ問題が殺人にまで発展するなんて。しかも分別のついた老人が。何とも驚きに満ちた事件だ。