今回でピグの話はひとまず一区切りしたい。ピグの世界とは当然の事ながら、リアルではなくバーチャルの世界である。そのためいつの日かは忘却の彼方へと流れていく世界だ。


 ピグを途中でやめる人もいる。また一時的に中断する人もいる。ピグの世界はそれぞれ様々だ。たまに他者の庭に訪れてみると、畑全面がパプリカやエダマメで覆い尽くされいる庭に出くわすことがある。パプリカやエダマメは以前のイベントにおけるクエストで植えられたものだろう。この人はたぶん、途中でピグのゲームを中断して、そのまま放置されているということなのだろう。その人のバーチャルな世界は、その時点で時計が止まっているのだろう。


 リアルな世界は私たちにとって離れる事ができない世界だ。なぜなら、実際にここで生きているのだから。いくらリアルの世界に無関心、背を向けようが、私たちはここで生きている。これは世の中で生きているすべての人々にあてはまる。

 腹も減るし、眠たくもなる。リアルな世界を中断していたら、生きていけない。本当の意味での狂人にでもならないと、私たちはリアルな世界を無視することはできない。


 しかしバーチャルな世界はいくらでも捨て去ることができる。最近は私もピグでなかなか楽しませてもらったが、この先の私の人生10年後には、たぶんピグのことなんですっかり忘れているだろう。

 ちょうど20年前に存在した「セガ・サターン」というゲーム機で遊んだゲーム(私は「シム・シティ」というゲームに夢中だった)を、現在ではまったく触れないのと同じことだ。


 そしてバーチャルな世界は、あくまでもその人独自の世界なのだ。ピグの世界にしても、もともとは存在していない世界だし。たとえ存在していても、ピグについて知らない人々(全人口でみれば知らない人々の方が多いであろう)にとっては、存在すらしていない世界なのだ。

 これはビートルズの「アビーロード」も、ルーカスの「スターウォーズ」も、そのものを知らない人にとっては、まさに存在しないものであるのと同様だ。


 鉄道模型やサボテンのコレクターなどなど、いわゆる「オタク」といわれるような趣味人の中には、その一生涯にわたって、本人にとって大切となるバーチャルな世界が継続する場合もあるが、バーチャルな世界は忘れ去られる運命にある。