この夏に思索するテーマとして、「リアルとバーチャル」を取り出してみた。今回から何回かにわたって、このテーマについて考察してみたい。

 「リアルとバーチャル」について考える時に必ず突き当たることが、人間の持つ思考と感性の問題である。思考(考えること)と感性(感じること)は、それぞれが別々であるが、同時に双方に影響を与えながらつながっている。

 

 感性が思考に影響を与えること、たとえば気分がすぐれないので正確な思考が定まらないとか、恐怖心から正しい判断が失われるといったことは、私たちが日常生活で普段から出くわすことである。

 しかし思考が感性に影響を与えることもある。私たちは固定概念も含み思考の枠組みで日々生活を送っている、そしてそこでのものの感じ方もこの思考の枠組みの延長線上にあると言える。


 一つの例を取り上げてみたい。カレーライスを食べることを想定してほしい。帝国ホテルか中村屋の高級カレーライスだ。これを3種類の器に盛ってみたい。

 一つ目はどこにでもある普通の食器だ。もう一つ目はウエッジウッドの高級食器だ。最後にはペット用のトイレか赤ちゃんが使うオマルだ。

 それぞれとも新品のものを使う。当然のことながら、新品のものを器として使用するので、どれも清潔な状態である。そこに盛られたカレーライスそのものの味覚には変わりはない。しかし食べる時に感じる、美味しい美味しくないという感じ方には差が出てくるであろう。

 このように私たちの思考や概念は、感じ方にも微妙な影響を与えるのである。


 この思考と感性の相互作用が、リアルとバーチャルを捉える際に重要なファクターとなってくるのである。