先日、映画に関連して「地獄の黙示録」について取り上げたが、その原作とも言えるコンラッドの「闇の奥」をもう一度読み直してみた。

 だいぶ昔に学生時代に読んだ時には、翻訳の時代的な古さからか、難解で読みにくさを感じていたが(さすがに英語なのだが原書で読むほどの気力は私にはなかった)、改めて読み直してみれば、やはり素晴らしい作品だ。



  「闇の奥」   コンラッド著  中野好夫訳    岩波文庫



 これだけ抽象的な作品を映画化することは、まさに困難を極めただろうに、さすがにコッポラの「地獄の黙示録」は傑作と言えよう。そして新たに「ベトナム戦争」という基軸により世界観に広がりが出ている。

 これと同様のものは、私はあと一つしか知らない。トーマス・マンによる「ベニスに死す」を映画化したルキノ・ヴィスコンティ監督の作品だろう。この場合の新機軸は、マーラーによる美しくも物悲しい音楽だ。