何回かにわけて出題形式で進めてきたコミュニケーションシリーズだが、ここまでの話の論点についてまとめてみたい。


 コミュニケーションのあり方は状況において常に変化していくものであり、その変化の土台となるものは、コミュニケーションを取る際における相互の認識の枠組みであり、それを生み出している前提条件の枠組みである。


 たとえば、私にとって身近な例を引き合いに出して説明したい。駅前などで見知らぬ人々に挨拶をすることは政治家として何ら不自然な行為ではない。できるだけ陽気に気さくな感じを持って、見知らぬ人にも接するのが我々の日常の仕事だ。

 しかし一般の人間が、これと同じことをしようものならば、大体の人々、特に学生や若い女性などは怪しがってしまうだろう。普段そんなことをする人などいないからだ。

 政治家、立候補者、選挙に出る人、そういう人イコール「誰にでも気軽に挨拶する人」という図式が、多くの人々によって共有されているから、私はどのような場面でも人に気軽に挨拶をしても怪しまれない。

 逆に私が議員であることの認識度が低いところで街頭活動などを行うと、誰もが例外なく怪訝そうな顔をする。そしてしばらくしてから、毎朝駅前で出会う怪訝そうな顔をしていた人も、「ああ、選挙関係の人ね」と気づいて納得していくのである。


 よって、自分にとって有利なコミュニケーションを実行していのならば、お互いの認識の枠組みを確認して、それを変えていくことが大切である。