消費税の増税をめぐっての議論が、世間においては最近では盛んに展開されているが、この消費税に関する私の立場をまず述べたい。

 消費税という仕組み自体は悪いとは思わないが、現在の時点での消費税増税には反対である。消費税の増税はこのような景気が停滞している時に実施するべきものではない。増税による民間から政府にさらにお金を吸い上げることで、現在のデフレ傾向は強まるし、景気のいっそうの悪化を招きかねないからだ。そして消費税増税はたとえ将来の時点で行うにしても、あくまでも他の分野での減税策とセットで実施するべきものだと考える。


 消費税に反対する立場の人には二種類いる。増税という観点から反対する者と消費税の持つ逆累進性に反対する者だ。そして私は前者の立場だ。消費税という仕組みそのものに異を唱えるものではない。(ただしギリシャのように20%とかいう間接税はどうかと思うが)


  消費税の逆累進性とは、同一の物やサービスには同一の税率の税金が課せられるので、同一の物やサービスを消費した場合、高額所得者よりも低所得者の方が税負担が重くなるということを示す。特に生活必需品は、所得の大小にかかわらずに誰もが消費しなくてはならないので、その点についてはさらに不公平感が増すということである。そのために消費税増税にあたっては、生活必需品に関しては特例を設ける案や低所得者への税金還付の案なども持ち上がっている。


 消費税の逆累進性に関しては、一般的にはこのように言及されているが、実際の生活の実感としてはどうだろうか。米、パン、塩、味噌などの生活必需品に対して、人々はどれほどのお金を使っているのだろうか。高額所得者も低所得者もほとんど微々たるお金しか使っていないのではいか。

 それこそ帝国ホテルやリーガロイヤルホテルのベーカリーでパンを買ったり、人形町の老舗店で高級梅干しを買ったりしたら、そこそこのお金は使うだろうが、この豊かな日本において「喰うや喰わずの生活」で生活必需品の税率アップによって大打撃を被る人々が大勢いるとも思われない。


 そして、そもそも何を持って、どこまでを生活必需品として認めるのかが難しい。パンはOKで、パンケーキはダメなのか。人によっては携帯電話やパソコンだって生活必需品なのだ。それぞれについての判断が複雑すぎる。

 また低所得者への税金の還付にしたって、いったいどのようにして個々人の所得を正確に把握することができるのかという問題もある。第一に生活保護受給者の不正受給ですら完全に掌握が困難であるのが現状だというのに。


 さらには、私はこの「消費税の逆累進性」という考え方、そのものに疑問を持っている。その辺については次回にくわしく検討したい。