山手線の中でタバコを喫いだしたあなたは、隣のオバサンからすごい剣幕で怒れら出した。周囲にいる他の乗客もあなたに対して同情する者などはいなく、誰もが批判的な冷たい視線を投げかけている。

 さぁ、困った。怒り心頭、激しくまくしたてるオバサンに対して、あなたはどのように切り返すのか。


 静かに一言、こう言えば良い。

 「すみません、出産をまじかに控えた妻が危篤状態になりまして、これから病院に駆けつける所なんですが、つい気が動転してしまいまして」とか。

 あるいは、「小学生の娘が交通事故に合いまして、これから現場に行くところなんですが、どうしても気が落ちかなくて、無意識のうちにタバコを喫ってしまって」とか。


 このように言われても、なお激しく怒り続ける人などはめったにいない。非難のトーンは急速に和らぐというものだ。

 一般的に共有するモラルや社会ルールが、いったん捨象される場面というものはあるのだ。コミュニケーション一つで、その場面はがらりと変化するものだ。

 あまり悪く活用することはお勧めできないが。