前回までは我が国日本の人口動静、つまりは「少子化の是非」に関して書いていたが、今回からは再び世界人口の増加に関する問題に話を戻していきたい。


 世界人口が急激に増加することで、問題となる事象は様々あるが、何といっても「食べ物」が一番の難題となってくるであろう。

 衣食住といっても、衣料については現有の莫大な生産設備があるし、住についても人が暮らすスペースにはまだ余裕がある。(ちなみに全世界の人々を満員電車もしくはカプセルホテル状態で詰め込めとするならば、ひつようなスペースは香港島ひとつくらいだそうだ)

 しかし食については、現在でも待ったなしの状況だ。食といっても、大まかには「穀物」と「水」の二つがある。今回は「穀物」について考えていきたい。


 まず、現時点(今年の夏)において、とんでもない穀物の生産危機が生じていることをご存知でしょうか?

 近年、遺伝子組み換え技術により、穀物の単位面積当たりの収穫高は改善されてきた。しかも総生産量を確保するために、耕地面積も増大している。それでも加速して増大する消費量には追いつかない状況がつづいているのだ。

 コーンや大豆の適正在庫率は15%ほどであり、10%を下回ると危機的な状況とも言われている。

 しかし今年はコーン、大豆ともに、かるく10%を割り込み、大豆などは5%にも満たないのではとも予測されている。

 コーンなどは今年の作付面積は史上最大規模にまで拡大していたので、豊作ならばかなりの生産量が期待されていたにもかかわらずである。しかし今年は不作見通しだ。

 運が悪いことに今年の夏はアメリカ中西部で熱波乾燥がつづき、干ばつの被害により大不作の見通しである。アメリカ海洋大気局(NOAA)によると、干ばつは全面積の55%にも広がり、1956年以来の被害面積ということである。(The Weather Channnel: USDA:RAIN TOO Late for Most of Indiana's Corn 参照)


 当然、この見通しを受けて穀物価格は急上昇している。先週のシカゴ市場では、コーンは8ドル(史上最高値)、大豆16ドルを突破した。特に南米産が出回る前の期近限月は凄まじいまでの値上がりだ。そして価格はまだ落ち着く様子はない。典型的な天候相場だ。

 この価格上昇は時間をおって、小麦や他の食糧品にまで波及していくことだろう。日本で暮らしていると、このような食料品高騰をあまり実感できない。それは、たまたま円高であるお蔭(円が高くなれば輸入食料品は国内では安くなる)にすぎない。通貨安に見舞われているユーロ圏などは大変であろう。


 「コーン、大豆は普段の食生活には関係ない、そもそもトウモロコシなんてほとんど食べないし、豆腐や納豆も嫌いだし」なんて思っている君、それはとんでもない勘違いだ。

 コーンも大豆もほとんどが家畜の飼料として使われている。つまりは肉(タンパク源)のもとなのだ。

 そしてコーンに関しては、世界最大の輸出国はもちろんアメリカだが、世界最大の輸入国は実は我が国日本でもあるのだ。


 さらには国民の生活水準が向上して肉を食べるようになった中国さえも、どんどん穀物を輸入している。まさに急速に増大する需要に供給が追い付かない状況が継続していく。

 工場品ならば生産設備を拡大すれば良いが、全世界の耕地面積には限りがあるし、天候は人間の力ではいかんともしがたいものである。


 これを世界レベルの危機と言わずして何と表現できようか。