今回の消費税増税問題で、民主党から小沢一郎グループが新党結成に離脱するなど、ここの所にわかに解散風を意識する声が聞こえている。

 そしてこの増税問題に関して、あらためて民意を問ういう観点から、解散総選挙を早急に求める意見もあるが、私は反対である。このようなバタバタした状態で、総選挙を繰り返しても政治自体が混乱するだけで決して益はないと思う。


 だいたい、そう消費税増税の一点に争点が絞られての総選挙というものに疑問を持つからである。先の政権交代を促した総選挙も、「年金」「子ども手当」など「生活が第一」の掛け声のもとに、きわめて限定された争点での選挙であったし、その前の総選挙も「郵政民営化」に特化した争点での選挙であった。

 そもそも、国政選挙というものは、その時々の話題の争点で戦うような人気取りの選挙ではなく、もっと将来をみすえた本質的な国家観をめぐって行われるべきものだと考える。

 国政なのだから、外交や防衛、「日米関係を重視するのか」「多元的な国際社会を重視するのか」とか「国際貢献できる普通の国を目指すのか」「従来型の防衛方針を重視するのか」とか「グローバル世界に対応した社会の在り方か」「北欧型の社会民主主義路線か」とか、本質的な政治路線によって戦われるべきである。

 消費税も、年金も、子ども手当も、どれも大切な問題ではあるが、なぜにこのような内向きのテーマでばかり大切な国政選挙が展開されるのであろうか。そして内向きな問題といっても、しょせんはどれも「目先のゼニ金」の問題ばかりである。

 政府民主党と最大野党の自民党、そして公明党が手を組んでの消費税増税であるから、当然のことながら、それに反対の勢力(小沢グループ、みんなの党、共産党、社民党など)は、ここぞとばかりに「ブレない政治」とかなんとか言って、世論を味方につけて早急に解散総選挙を行い、勢力を伸ばしていきたい考えるのであろう。

 しかし、このような選挙がらみの主張には、どうも政治特融のいかがわしさがある。本当にどの勢力もブレないのであろうか。(まぁ、共産党くらいはブレないでやっていくのだろうが)

 

 また、第3極の不在のまま解散総選挙が断行されても、「自民党がダメなら民主党、民主党もダメなのでやっぱり自民党」というような不毛なシーソーゲームが続くだけのような気がする。

 劇場型の選挙ドラマも良いが、政治家だけでなく有権者ももう少し腰を据えて「日本の針路」に関して考える時期に差し掛かっているのではないだろうか。