今回はリスクと直感について。リスクをいち早く感じ取るための方法で一番当てになるのは、私の場合は自分の「直感」である。

 物事を進めてきて、「何か違うのでは?」とか「どうも腑に落ちない」とか「わけのわからぬ胸騒ぎ」がするとか、このような場合はたいてい危機が自分に迫ってきていることが多い。

 当然のことながら杞憂に終わる場合も多いが、なんせとてつもない危機に遭遇する可能性を考えれば、自分自身の内なる声に従った方が得策である。

 何かが変だと感じるには、それなりの理由が潜んでいるものだ。その理由について自分がまだ無知なだけということだ。

 だから私は自分の直感が何らかのリスクを感じた時には、一歩退却して様子をうかがうことにしている。少なくても現状の地点に立ち止まり、先に進むことは避けるようにしている。


 5年ほど前の年末年始、あるトレードで手痛い傷を負った経験がある。実はこの時にも、すでに11月くらいの時期から、なんとなく嫌な予感がしていた。地方都市視察に出かけた時のバスの中でも、そのような不安を友人と話していたように記憶する。

 しかし客観的な理性やそれまでの経験の範囲で考えれば、何ら問題となるようなことは想定できなかった。だからこの時に自分の直感を押し殺して、問題を深く検討しようとしなかった。

 むしろチャンスが来たのではとも考えていたくらいだった。しかし、やはり直感を捨てることはできずに、さらなるポジションの拡大は控えて、現状維持のまま様子を見ることにした。

 結果としては、想像だにしないような、とてつもないリスクに見舞われた。現状に止まっていたため、何とか全面的な破滅は免れたが、やはり最大級の傷を負ってしまった。


 その後、私は臆病になり、少しでも直感が伝えるリスクに敏感に反応するようになった。しかし、この手痛い経験が幸いした。その1年後に全世界を襲ったリーマンショックの打撃からは、ほとんど無傷で逃れることができたのだった。