前回、一国の通貨が強くなったり弱くなったりする要因について、短期的・中期的・長期的な視点から考えてみた。そして現在は1ドル80円を切る円高(ユーロ円も100円を切っている)である。
短期的な要因。各国の金利差を見てみよう。ご存じのとおり、現在の日本は超低金利である。100万円を一年間定期預金しても、その利息たるや300円にも満たない。世界一の低金利である。
主要各国の政策金利:日本0.10%、アメリカ0.25%、イギリス0.50%、ユーロ1.00%、オーストラリア3.75%(2012年5月31日現在)
金利だけをみると、ここに円高になる要因などない。
中期的な要因。貿易収支のプラス・マイナスを見てみよう。かつては輸出大国だった日本も、今年は東日本大震災の影響もあり、数十年ぶりに貿易収支が赤字に転落したとかしないとかの、暗いニュースが報じられたばかりである。
1980年代のプラザ合意の時代は、確かに輸出によって莫大な外貨がなだれ込んできたことを背景に、為替は大幅な円高になった。しかし現在は事情が異なる。
貿易収支だけをみると、ここに円高にある要因などない。
長期的な要因。その国、日本の総合的な国力を見てみよう。かつて奇跡の戦後復興を遂げて、世界第2位の経済大国にまでのし上がり、「JAPAN AS NO.1」とまで世界中から讃えられたのは過去のこと。
経済分野だけではく、教育水準でも、治安の良さでも、クエスチョンマークがつき始めている。おまけに大震災に原発事故ときたもんだ。
総合的な国力の面からも、ここに円高になる要因などない。
短期的、中期的、そして長期的な要因、そのどれを見ても円高を正当化する理由は存在しない。
しかし、現実には円高は震災後も、静かに進行している。これは紛れもない事実なのだ。この現実における為替の不思議について、さらに検討していきたい。
経済に詳しい人なら、「何をバカなことを書いているのだろう。円高の理由など明白じゃないか。」と思われるかもしれないが、このブログには様々な読者がいる。しばしくだらない話におつきあいいただきたい。