今回から誰もが興味を抱く「お金」に関するテーマで書いていきたい。最初は為替について。やれ円高だやれ円安だと世間では騒ぐが、そもそも為替をめぐる世界について思うところを書きたい。


 先日、仲間の新人女性議員から、こんな質問を受けた。「現在は円高で日本経済は困っているが、そもそもどうして円高になったり円安になったり、為替は変動するのだろうか?」

 だいたいこんな基礎的なことも知らないで、地方議員とはいえよく政治家が務まるものだと非難したかったが、ここは隣に席を持つ先輩としてわかりやすくその仕組みを説明した。以下がレクチャーの簡単な要旨。



 一国の通貨が他の国の通貨やりも高く(強く)なったり、安く(弱く)なったりする要因として、次のようなものが考えれれる。それぞれ短期的、中期的、長期的な要因があげられる。


 短期的には、その国の金利と他の国の金利との間の金利差による。金利の高い国の通貨は強くなるし、金利の低い国の通貨は弱くなる。世界のマネーはより高い金利(より多くの利潤)を求めるから、金利の高い国の通貨が強くなるのである。


 中期的には、その国と他の国との貿易収支の状態で、通貨の強弱は決まる。貿易収支がプラスの国の通貨は強くなる。貿易収支がプラスの国は、他の国々から輸出で外貨を稼いでいるので、それを自国の通貨に換えていくために、当然その国の通貨は強くなる。


 長期的には、その国の総合的な国力によって、通貨の強弱は決まる。ひとつの国力とは、何も経済力だけでなく、軍事力や文化の水準、国民の意識や教育レベル、社会の持つ安定度など、総合的な観点からはかられる。ひとつの通貨の信用とは、とりもなおさずその通貨を発行する国家(正確には国家ではなく、その国の中央銀行だが)の信用の度合を表すものだからだ。


 これらの短期的、中期的、長期的な要因が、時の政治状況や経済状況と相まって、それぞれの国の通貨の強弱が決まり、それに従って為替が変動していく。



 以上のように、きわめて教科書的に説明したら、さらに質問を受けた。「それならば、現在の日本は短期的、中期的、長期的に、円高になる要素があるのだろうか?」と。

 これにはまいった。実際には円高が進行しているが、状況的には正反対だ。

 不思議だ。一瞬、答えに詰まってしまった。この為替の不思議(実際にはこの世の中に不思議なことはあまりなく、そこには何らかの理由が存在するものだ)について、検討してみたい。