なんだか今年のゴールデン・ウィークは本ばかり読んでいる自分がいる。このブログも何やら書評のブログみたいになってきている。
こんな時間も大切なのであろう。目の前のくだらない雑音ばかり気がいくよりも、よほど生産的な時間であるような感じもする。
まあ、今日は朝から気持ちが良くなるほどの「快晴」なので読書はしばし休憩か。
新緑の街に、光の外界に飛び出して、新しい兆しを身に受けることだろう。
昨日、読んだものは以下の通り。
「ヴァイマルの反逆者たち」 八田恭昌著 世界思想社
ヴァイマル共和国時代のドイツの時代的な雰囲気を、いくつかのテーマをあげて分析している一冊。19世紀末から拡がった「ヴァンダーフォーゲル運動」についての記述、「闘士」と題された最後までヒトラーに抵抗したナチスの闘士オットー・シュトラッサーに関する記述は圧巻である。
「熊野考」 丸山静 せりか書房
共同体の聖地ともいえる「熊野」の地をめぐっての民俗学的な考察は興味深い。後半の(小栗判官)を題材にして、カブキの本質にまで迫るところは特に。異形を表現に巻き込む私たちの血にある劇的な要素、通俗的なくだらない街頭演説の研究などするよりも、よほどためになるヒントがある。
以下は文学作品。
「君の中の見知らぬ女」 高橋たか子 講談社
いささか宗教的なテーマ、哲学的もしくは観念的なテーマで物語は進行していくが、実はもっと単純な核の表現なのかもしれない。「わたしって、成っていく者なのよ」という謎めいた詩の一節が、美しく描かれたフランスの情景の中で、幾度となく繰り返されていく。
「光の帝国」 恩田陸 集英社文庫
ちょうど私と同世代の作家が表現した短編のファンタジー集。私が常に問題意識の片隅にあったテーマが、まったく違った手法で優しく表現されていた。素直に感動した作品だ。語り過ぎなのか、語り足らずなのか、わからないが、とても大切なものが語られているということだけは、確実に垣間見ることのできる作品だ。