無駄のないシンプルな生活を心がけたい。何も禁欲的な生活を推奨するのではない。「ああ、余計だった」と後悔するような、無駄をなくしていく意味でのシンプル・ライフだ。


 そのために、いつも気をつけていることは、何事についても「これは本当に必要なのだろうか?」「これは本当に自分が欲しているものなのか?」について常に自問することだ。

 なんとなく惰性で、なんとなく流れでということに、最大の無駄(ほとんど強く意識されない無駄)が潜むものだ。


 たとえば居酒屋で、たいして食べたくないのに、なんとなくもう一品オーダーしてしまう。グラスが空になって、店員に「お飲み物はいかがですか」と言われると、なんとなく「もう一杯頼みます」と答えてします。

 こんな経験をしたことは誰にでもあるだろう。確かに惰性でもう一品、もう一杯余分に注文したからといって、致命的なマイナスを負うわけではない。いかにもケチ臭い話ではないかと、思う人もいるだろう。

 しかし、違うのだ。しみったれた話ではなく、心のありようについての話だ。たとえ巨万の富や無限の時間があったとしても、無駄なものは無駄なのだ。なぜなら、それを心の底から欲していないのだから。


 渇きは精神を研ぎ澄ませ、無駄は精神を弛緩させる。


 ダイエットでも言うではないか。一番良くないのは、たまたま残っているからと無自覚に食べてしまうことだと。