先週末に新宿区議会予算委員会が閉会した。日程からは、まず歳出から審議して、最後に歳入について審議するのだが、歳入の中の、株式等譲渡所得割交付金というところで、共産党の沢田あゆみ委員が質疑していた。

 これは株式の売買益(売買の儲け)に課される税金のうち一定の割合が地方自治体の歳入になるというものである。株価底支え、景気対策の一環として、時限立法として長らくその税率が低減されている。つまり歳入がその部分減っているわけだ。

 このことについて共産党の彼女は、「これはまさしく金持ち優遇税制で、新宿区の財政にマイナスである」といって批判していた。彼女はたまたま私の真後ろの席だったので、しっつかりとその論点を聞いていた。ふっとデジャブを感じた。いつかこの光景を体験したのでは。

 過去の予算委員会の議事録を検索してみると、数年前にも同じ共産党の近藤なつこ議員が、同じところで同じ質問をしていることが確認された。いかにも共産党らしい質疑だ。


 そもそも論として、このような株式の売買益に税金を課するということ自体がどうなのかという議論(私は大反対だ、そんなことをやっているのは日本くらいだ)は横に置いといて、はたしてこの税率を上げるということが歳入確保の点から正しいのであろうか。

 景気が好転すれば、当然企業の業績は伸び、その株価は上昇する。売買で利益を上げる者も多くなるであろう。と同時に、株価が上昇すれば、個人や企業の資産価値は増大して、それにより消費や投資が促進され、景気は上向くであろう。その逆に、株価が低迷すれば、個人や企業の資産価値は下落して、経済は不景気となろう。

 つまりはこの類の税収は、株価の上昇、その過程で人々による株式売買の儲けが増えることで、全体としての増収につながる。

 だから税率を上げて、人々の株式投資離れ(株価の下落)を引き起こすことは、結果としてマイナスにしかならないわけだ。なんせ、株式投資で損失を出している人から税金なんて取れないわけだから。

 極端な話、株式譲渡益に100%とはいかないまでも、90%の税金を課した場合、誰も株式投資などする者はいなくなるだろう。当たり前だろう。株価が下がって損をしたら、はい、さようなら。株価が上がって儲けが出たら、ほとんどすべて税金で持っていきます。こんな状況のもとで、誰があえてリスクを冒すというものか。

 たとえ10%やそこらでも、とても高い税率だ。だいたいローマの古代から、個人に課すこの手のの税金は10%がいいところだったのだから。


 しかし、共産党や社民党の理論からは、「株式投資で儲ける連中から、どんどん税金を徴収しよう」ということなのだろう。これは私の考え方とは異なった意図だ。そして、この意図がたとえ正しいものだとしても(けっして正しいとは思わないが)、結果としてはマイナス(税収減)しか及ぼさない。

 そして、意図より結果を重要視することが、現実状況に的確に対応する政治家のあるべき姿だろう。


 このことは、「たばこ税」についても当てはまる。近年、たばこ税はどんどん税率が上げられている。これにより、たばこの値段が以前よりは高くなっている。そのためか喫煙者の人口も減少の一途をたどっている。当然、その結果として、新宿区に受け取る「たばこ税」に関する税収も減少しているのだ。

 「たばこ」の場合、たとえ税収が減っても、肺がんにかかる人も減り、社会全体の健康増進にとってプラスだから、それで良いのかもしれない。しかし株価が低迷して景気が悪化することで、プラスを得る人々など日本中探してもどこにもいない。

 

 ラッファー曲線という考え方がある。これはもしかすると、現在話題にあがる「消費税」、しいては税制や国民負担率をめぐる全般的な議論の鍵となるのかもしれない。