前記事からの続きです。
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2.『抗がん剤は効きますか?』にお答えします
渡辺 享先生
(浜松オンコロジーセンター院長/聖路加国際大学臨床教授)
「抗がん剤は効きますか?」に答えるためには。
効くとは…患者さんはどんな効果を期待するのか?
~効果1~
・骨転移で痛みが強いので痛みを取って楽にして欲しい。→症状の緩和
・肝転移がある。今は痛くない。今後、痛みが出ないようにして欲しい。→症状の予防
☆患者さんの症状緩和や予防が期待される薬剤を使い、痛みの軽減の有無や薬剤の副作用、検査の値を評価。
疼痛が軽減されていても、薬剤の副作用が強く発現する、腫瘍マーカー値が上昇するなどした場合や薬剤を使用しても疼痛が緩和されない場合などは、適宜薬剤変更をしてコントロールしていく。
~効果2~
・骨転移、肺転移、胸水がある。どうしても子どもの行事に参加したい。→延命
☆ある患者さんのケース:再発乳がん
(病歴…1995年初発。術後化学療法。1998年に鎖骨下リンパ節転移で再度化学療法を受けるが肺、骨転移。放射線照射を受けるも病状悪化)
がん性胸膜炎による胸水で呼吸苦を訴え、がんセンターの救急外来受診。
かかりつけの病院ではもう長く持たないと言われたが、どうしても子どもの卒園式に出席したい。そのためにも治療をしたいと。
この症例では
化学療法はできるが、抗がん剤の効果が得られるとは限らないが…。
治療開始(パクリタキセル)後の症状改善が見られなかったが、その後症状が緩和し子どもの卒園式、入学式にも参列できた。(治療開始から2ヶ月後に旅立たれた。)
2ヶ月の延命ではあったが、とても意味のある治療であった。
・進行がんだが治したい。→治癒
☆ある患者さんのケース:32歳。4cmの腫瘍。
当初、受診した医療機関では手遅れだから全摘・化学療法を勧められるも全摘を拒否。
乳房温存での手術を希望。
この症例では
針生検でがんの性格を判断。→サブタイプ別で薬物療法を分類。
この患者さんはHER2陽性タイプ。術前に化学療法を行いその後温存手術。病理学的完全奏功した。
「抗がん剤は効きますか?」
サブタイプに合わせた治療の選択(治療の個別化)をし、術前化学療法による治療効果の評価(治療の見える化)をする化学療法(抗がん剤治療)を行うことで「はい」と答えられると考える。
抗がん剤の副作用について
「4054人のがんと向き合った声から」を参考
2003年、2013年ともに1位が脱毛、2位が抗がん剤による副作用で手術による副作用はランキングにあまり入ってこない。
・必ず脱毛する抗がん剤…ドセ・パクリ・ドキソルビシン・エピルビシン・エリブリン・シクロホスファミドなど
キードラッグと言われている抗がん剤は脱毛する。
トラスツズマブ・ペルツズマブ・カドサイラではほとんど脱毛しない。
脱毛しない抗がん剤もあるので、自分の希望を医師に伝えて最善の治療を受けよう!
最後に、渡辺先生が一篇の詩をご紹介くださいました。
乳がんと共に生きていく私にとって、心に留めておきたい言葉です。
~静穏の祈り~
神よ 変えることのできないものを 受け入れる冷静さと
変えなければならないことを 変える勇気と
それらを区別する知恵を 我らに与えたまえ
ラインホルド・ニーバー
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次は保坂 隆先生のお話です。