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hiro-chanのsmile日記

2014年9月に乳がん発覚。
手術、化学療法を経て現在、経過観察中。
乳がんと向き合いながら日々のできごとや想いを綴っていきます♪

ピンクリボンシンポジウム2017で講演してくださった先生方のお話を、いつもご訪問くださる皆さまとshareします。

3回にわたってレポートします。

 

1回目は大野真司先生(がん研究会有明病院乳腺センター長)の『乳がん医療の未来を拓く』です。

 

ピンクリボンはーと2ピンクリボン

 

最新の話題(2017年のトピックス)

Deescalation & escalation

治療はescalation(エスカレーション)からDeescalation(デエスカレーション)へ。

 

治療をより加えていく→不要な治療を減らしていく流れになってきている。

治療は良くなってきたが、その一方でお金がかかったり体への負担が大きくなっている。これからは効果を損なうことなく様々な負担を減らしていこうという流れになってきている。

2016年、世界で13人の医師による電話会議を経て発表された論文

「これから解決すべき12の研究課題(research needs in breastcancer)」

その中の1番目がDeescalation(デエスカレーション)

本当に必要なものだけを。効果は高く体に優しい治療を。

一番少なくしていく治療として手術がある。

 

時代とともに変わる標準手術

1986年7月に初めて乳房温存手術が行われた(がん研有明病院)

30年前は乳房、大・小胸筋、腋窩リンパ節を切除していたが現在は大・小胸筋の切除はしない。また状況に応じて乳房や腋窩リンパ節郭靖を一部温存するなど臓器を切除から温存へとシフトしてきた。しかし乳房に関しては2014年に乳房再建が保険適用になったことをきっかけに乳房切除+乳房再建が増加し現在、乳房温存は全体の40%。無理に乳房温存をして乳房の形を大きく損なうなら乳房切除と再建を選択するという患者さんのアピアランス重視が要因になっている。

10年後、腋窩リンパ節に転移が認められても郭靖しない、乳がんがあっても乳房を傷つけない、薬で消えたら手術をしない、早期乳癌(ステージ0:非浸潤性乳管ガン)なら何もせずに様子を見るなど変化していくだろう。このような臨床試験が開始されたり予定されている。

 

10年後の未来は~watch and wait~

直腸がん、リンパ腫などのおとなしいがんは様子をみる時代になるだろう。

 

☆手術を減らしても乳がんの生存率が上昇しているのは薬剤の効果が高まったためである。

薬物療法には抗がん剤・分子標的薬・抗女性ホルモン剤が使用される。

例)50才女性 リンパ節転移(-) 悪性度(Ⅱ) ER(+) HER2(+)

30年前:手術のみ 再発率46%

20年前:手術+抗ホルモン剤 再発率31%

10年前:手術+抗ホルモン剤+抗がん剤 再発率22%

現在:手術+抗ホルモン剤+抗がん剤+分子標的薬 再発率8%

 

 薬剤の開発が進み、薬剤の効果が高まったため生存率が上昇している。

Deescalation & escalationになっている。

(手術は下げて。薬剤効果は上げて。)

 

※これから日本で保険適用になり使用できる乳がんの薬剤

CDK4/6阻害剤パルボシクリブ(商品名イブランス):細胞周期を抑制する薬剤。世界70カ国以上で承認されている。日本では2017.9.27製造・販売が承認。11月から使用可能。価格は未定(来月決定)。保険承認されれば高額療養費制度を使って8万円以下で使用できるようになるだろう。

適応…手術不能または再発乳がん。ホルモン受容体(+) HER2(-)

抗ホルモン剤と同時内服。1個/1日内服。3週間内服し1週間休薬。無増悪生存期間を抗女性ホルモン剤単独投与より2倍に延長するデータが出ている。現在の適応は再発乳がんとなっているが、術前/術後に使用し評価・検討する臨床試験を世界と一緒に行っている。

 

PARP阻害剤:2018年か2019年から使用可能に。

 

PD-1 PD-L1抗体:免疫チェックポイント阻害剤。臨床試験中。

トリプルネガティブ再発乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験が行われている。手術前/手術後に1年間使用しての薬剤効果が評価・検討される。

数年後には乳がんにも適応になるだろう。

※免疫チェックポイント阻害剤の登場でがん治療が大きく変わってきた。

 

ドラッグラグをなくすために

かつては海外で保険承認後に日本で使用できるようになるまで5~10年かかっていた。今は世界中の臨床試験に日本も同時に参加している。(患者全体の10%)これによって、世界で保険承認された薬剤をあらためて日本で厚労省の確認試験を行わなくても良くなった。結果、ドラッグラグは1~2年になった。最近アジアからの参加が全体の1/3を占めるようになった。その中で質の高いデータを提供する日本の重要性が増している。

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の臨床試験には全国で20施設が参加している。

 

アメリカのケネディ大統領が50年前に人類が10年以内に月に足を踏み出すことができたら、それによって世界は変わるというムーンショット計画を打ち立てた。(実現しました)

2016年1月、オバマ大統領が薬剤開発を10年から5年に。5年から2年に進められればがん治療は変わるとがん撲滅ムーンショット計画を打ちたてた。

日本は立ち遅れている。ドラッグラグをなくすために世界に加えてもらっている状況。米国は国がバックアップしているため臨床試験も加速している。日本も続いていかなければ同じ薬剤を使用するのに日本の患者さんが米国の患者さんよりも数年遅れになっってしまう。

 

再発をなくすために

適切な治療を  適切なタイミングで  適切な患者さんに

手術のみで治癒する患者さんは70~80%

しかし誰が再発するかは分からない。誰に効いて誰に効かないのかを見極める。それには臨床試験・臨床研究や基礎研究が重要。

どのがんにどの薬剤を使用するかの見極めに必要なのがサブタイプ分類。

サブタイプ分類も進行度から性質(生物学的特性:Biopsy)に基づく治療へ変化している。

1980年~2000年:2タイプ ERが陽性または陰性

2001年~2014年:4タイプ 上記+HER2が陽性または陰性

2011年~:20タイプ 遺伝子プロファイルによる分類

 

どんな乳がんなのかを見極めるサブタイプを知るためには組織が必要となる。そのために生検を行う。

今まで、生検(組織を取る検査)には吸引乳房組織生検、CTガイド下生検などが行われてきた。これからは採血によるリキッドバイオプシー(血液などの体液サンプル)へ。

低侵襲 豊富な情報 頻回に検査が可能となる。これによって早期診断・早期治療・再発リスク評価と治療・再発治療選択・効果測定・機序解明・新規治療薬の開発に役立つ。

膨大なデータの解析には人工知能が用いられることになる。

 

日本人女性と乳がん

がんになる確率は2人に1人。 がんで亡くなる確率 は3人に1人。

乳がんに罹患する確率は11人に1人。女性がサバイバーになる確率は20人に1人。

乳がんサバイバーになる確率は50人に1人。

2012年の年齢別罹患数では40代女性のがん罹患者全体の50%くらいが乳がん。

乳がん罹患前に妊娠・出産する人が少なくなってきた。そのため再発はしたくないけれど子どもは将来欲しいと考えている患者さんもいる。

患者さんのニーズに応えるため、卵子や受精卵の凍結など産科とも連携している。

現在の年齢別乳がん罹患数では40代以下が3割ほどで、50代から70代が増加し7割を占める。

世界の先進国の70%以上が50才以上の女性。

40才以下での乳房再建は64%だが70才~79才の乳がん罹患者で乳房再建をしている患者さんが9%いる。(がん研有明病院HPデータより)高齢者でも乳房再建が増えている。

高齢の乳がん患者さんにとって抗癌剤治療は体への負担が大きい。それぞれの状況にあった治療の見極めが重要になる。

また乳がん検診も一律ではなく、遺伝性乳がんなど、その人のリスクに応じた乳がん検診になるだろう。(年1回のMRIなど)

 

乳がんはいつになったら治るのか

乳がんは5年経っても、10年経っても再発する患者さんがいる。

こういう患者さんをどうやって見つけてどんな治療をしていくか、どんな治療が良いのかを考えていくことが課題。

リキッドバイオプシーによって体への負担を少なく検査をし適切な治療を選択することが重要。

 

2年に1回、再発乳がんに関する国際会議(リスボン)が行われている。40人くらいでディスカッションする。特色は乳がんサバイバーが5人ほど参加していること。一緒にディスカッションしガイドラインを作成する。

 

欧州の患者会の取り組み…EUROPA DONNA(ヨーロッパ ドンナ):大きな枠組みの患者会。患者会はこれひとつ。47カ国合同の患者会。

欧州の乳癌学会を共催している。

(アジアでは難しいかも…)

 

チーム医療は医師・看護師・薬剤師などの医療スタッフの他に様々な多くの人が関わっている。

チーム医療のゴールは患者さん満足

患者さんの満足のために多くの医療者、場合によっては行政も加わって医療を行っていく時代がくるだろう。

 

乳腺外科医の年齢別男女比

現在、50代以上の9割が男性医師。(10年後には退職)

30~40代:女性医師が大半。

女性の乳腺外科医の仕事と家庭の両立が難しくなる時代が来る。

→取り組みが行われている。

 

ピンクリボン活動について

ざまざまながん種によってリボンがある。乳がんはピンクリボン

10月1日、日本中の施設(東京タワーやスカイツリー、清水寺、姫路城など)がピンクにライトアップされる。

ピンクリボン活動は、乳がんの早期発見が全てではなく社会に乳がん

のことを知ってもらう、社会に伝えていく活動である。

50人に1人が乳がん体験者なのだから。

 

新しい治療が生まれるためには臨床研究や臨床試験が重要で研究費が必要だが、日本は国の研究費だけに委ねていてとても足りない。

海外では、研究費を患者会やサポート施設が寄付を集め明日のために支援をしている。日本でもそのようなサポートが進めばよいと考える。

 

希望とは辛いこと、苦しいことに打ち勝つ力なのです

                               瀬戸内寂聴

 

 

今後、医療者、社会、体験者の方々と

ともに明日の乳がん医療を作っていくことを願っている。

 

 

 

(感想)

以前は乳がんと診断されたら一律に同じ治療を受けるような時代から、患者それぞれの乳がんの性質を遺伝子レベルで見極め、個々に合った治療を受ける時代になっていく。だけど検査や手術は身体への負担をできるだけ軽減する方向へ。患者に優しい乳がん医療が進んでいくのは良いことだなぁと感じましたニコ

だた、手術に関しては「取らなくてもよい」がんであったとしても患者側からすると「本当に置いておいて大丈夫?」という不安な思いが燻りそうだなぁと真顔主治医を信頼できないと難しいかもねー

検査の精度とそれを評価・判断する医師や医療者のスキルの高さにかかっているような気もしますにやり