脊椎動物の先祖の教え<゜)))彡ー前適応という考え方ー | dm-coaching

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苫米地式コーチング認定コーチ 松村 大輔 のブログ

先日、愛媛県美術館で開催中の特別展‘生命大躍進 脊椎動物のたどった道’に行ってきました。(本日4月3日まで開催)

40億年という生命誕生から人類出現に至るまでの進化のプロセス。この悠久のプロセスの中には大躍進と呼べるような大きな転換点がいくつかあります。生命大躍進の重要ポイントを様々な展示パネルや映像、貴重な実物化石、精巧なレプリカで辿ることができる興味深い企画展でした。

酸素を発生したストロマトライトの化石やカンブリア紀(約5億年前)のアノマロカリスの化石、恐竜繁栄の影に生きた小動物の展示や胎盤獲得の仮説を紹介する映像、奇跡の霊長類化石「イーダ」(ほぼ完全な霊長類の全身骨格化石の複製標本)など見所満載でした。

個人的に強い関心をもってみたのはユーステノプテロンの展示です。約3億8500万年前の北アメリカおよびヨーロッパ相当地域の水域に棲息していた魚類の一種。硬骨魚類、肉鰭類、オステオレビス類に属し、胸鰭の構造などに両生類への進化の過程を見ることができる20世紀を通じてもっとも詳細に研究された化石種の一つです。企画展でも解説パネルや実物、レプリカで詳細を確認できました。

ユーステノプテロン


ユーステノプテロンなどの肉鰭類の胸鰭と腹鰭にはすでに腕や脚の骨ができはじめていて、まもなく四肢ができそうな骨格をしている、とのことでした。

―水の中に生きる魚類でありながら既に陸上生活に適応する四足動物的特徴をもっている―。「生きもの上陸大作戦 絶滅と進化の5億年」(中村桂子・板橋涼子著、PHPサイエンス・ワールド新書)を参照したところ、これは前適応という進化の考え方で説明できるとのことでした。

コトバンク、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によると、「生物にとっての環境条件が変化した際,それに適応するような変異があらかじめ生じていたとき,その生物は前適応していたといわれる。・・・」とあります。

海からの上陸を初めて成し遂げた脊椎動物の祖先。その魚の「陸を目指そう」を実現する手立てが個体自身の体内に既に備わっていたという記述に、 コーチングの祖、ルータイスの言葉「すべての意味ある永続的な変化は、内側で起こり外側へと広がる。」を私は思い出しました。

海からの上陸のみならず、眼の獲得、胎盤の獲得など生命が成し遂げてきた数々の大躍進。背景に、既にそれらを成し遂げることを可能にする変化が体内にDNAレベルで起こっていたとする説が特別展では紹介されていました。

コーチングには設定するゴールの要件として、want toであること、達成方法がわからないことの2つがあります。現状からみて突拍子もないほどのゴールですから、一度設定してもやっぱり無理かもと諦めてしまうことがあるかもしれません。本人も知らぬ間に目指す先と基準を下げてしまうこともあります。

「陸を目指そう」とした魚の内にその可能性が既に形を備えていたように、私達のこうしたいという途方もない意思にも、それを可能にする形が自身の内に既に存在しています。羽も翼の痕跡もないけれど、空を飛んだり近頃は地球外にも生存圏を広げる足掛かりを得ていたりします。

昆虫や鳥と違って直接的に身ひとつで大躍進を可能にすることはできなくても、アイデアという自身の心(情報空間)に浮かべる形が私達には使えます。臨場感ある心の中のアイデアは論理性を備え物理的な形に落とし込むことができます。そしていわば間接的に私達が新たな大躍進を果たしていくことを可能にしてくれます。

しかも個の枠を超えてアイデアを集団で共有し個の集合のコミュニティーによる協力・協同で物理的に実現する力まで備えています。飛行機やロケットの製造・運用がその一例です。

上陸を果たした脊椎動物の子孫の私達は、自由に像を結べる広大で深淵な情報空間(心)や思考力を具えた脳(前頭前野)をクリエイティブな魚に++αして完備しています。

自分の意志で設定したゴール。簡単に流したり基準を下げたりしないで大事に育んで良いぞよと脊椎動物の先祖が化石の裏付けを通して教えてくれているようです。



追記:特別展や参考図書を通して、①魚類と両生類をつなぐ中間生物にはユーステノプテロンの他にも数種類の生物がいたこと、②脊椎動物の上陸の前に植物や昆虫達の果敢な上陸物語があったことetcを知りました。前適応の意味するところも専門家の間で諸説あることが伺えました。進化の奥深さを再発見したひとときとなりました。^^