春が来た
日差しが暖かくなり、日が伸びてきて
冬のコートも日中は着る必要がなくなってくると
ああ、この季節がまた来たのだなぁと思う
開花宣言がされて
桜のつぼみがほころんでくると
私の心は落ち着かなくなる
あの子に逢いに行こう
大好きなお店のお菓子と飲み物を持って
あの子に逢いに行こう
普段の喧騒にまぎれてごまかしている気持ちをゆっくり感じるために
あの子に逢いに行こう
それは誰も知らない私だけのひそやかな楽しみ
あの子が逝ったその日は驚くほど青い空が広がって
満開の桜が何かを言わんばかりに咲き誇っていた。
それ以来その場所は
悲しくてつらくて苦しいときに癒される心の寄りどころとなりました。
命日、と呼ばれる日は私の中であの子に逢いに行く日になりました。
前を向けない
前を向きたい
でもそれは、あなたを忘れてしまうのではないかという罪悪感に見舞われる
あれだけ傷ついて苦しんだ私を見放して
一人幸せになっていいのだろうかという気がしてしまう
夜桜の妖艶さは妖しくて
そこがまるで別の世界に行ったかのように思える
もしかしたらあれは夢だったのではないだろうか
もしかしたら今が夢で目覚めたら、触れられるのではないだろうか
そんな気持ちにさせられる
妹が４月から幼稚園に行くことになったよ
手作りで頑張ってかばんやスモックを作ったの。
あなたが生きていれば小学生
きっとランドセルやらいろいろ準備が大変だったでしょう
そうやって年を重ねるたびに
また生まれ変わって会いに来てね。
そう思っていたけれど
気づいてしまった
生まれ変わりなんてないって
生まれ変わっていたとしても
あなたはあなたで赤ちゃんは赤ちゃんで別なのだと。
うれしいんだかかなしいんだか
とても複雑な気持ちになってしまった
この妖かしのような
みまごうばかりの桜の雲海はやがて散っていくでしょう
そしてこれからも生きていく
あなたのいない毎日を
だから、今日だけ泣かせてください
最愛のあなたへ