北欧の神秘 西新宿に棲むトロルたち | 今夜、ホールの片隅で

今夜、ホールの片隅で

東京在住クラシックファンのコンサート備忘録です。

 

東響定期で聴いたミステリアスな北欧音楽の印象がまだ鮮やかな中、「北欧の神秘 ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」と題された企画展を観にSOMPO美術館へ。ここを訪れるのはかなり久しぶりだが、しばらく来ない間に入口も館内のレイアウトもすっかり変わっていた。

 

北欧の絵画にフォーカスした本格的な展覧会は本邦初とのことで、「序章 神秘の源泉―北欧美術の形成」「1章 自然の力」「2章 魔力の宿る森―北欧美術における英雄と妖精」「3章 都市―現実世界を描く」というテーマ別に、3か国約50人の作家による70点ほどの作品が並ぶ。エドヴァルド・ムンクを除けば、初めて知る名前ばかりである。

 

まず何と言っても、奥深い自然を描いた風景画が美しい。北欧の知られざる森、湖、山、滝、海などの景色が展示室いっぱいに広がり、新宿に居ながらにして旅情を味わえる。止まらない円安で海外旅行という気分でもないこのゴールデンウィークに、これは随分安上がりな北欧ツアーだ。そういえばこの美術館、以前から渋い風景画の企画展が巧い。

 

そして北欧神話や「カレワラ」など、独自の物語の登場人物たちが華を添える。今回最も印象に残ったのが、ノルウェーの国民的画家というテオドール・キッテルセンの作品。メインビジュアルにも採用されている「トロルのシラミ取りをする姫」がやはり見もので、本来目に見えない怪物/妖精的存在のトロルが絶妙の切り口で可視化されている。

 

これも含め3点の油彩画のほかに、モノクロのスケッチをデジタル・コンテンツ化した映像が上映されており、こちらも素晴らしい。トロルのほかにも、擬人化された黒死病(ペスト)など、ダークで幻想的な世界観。ちょっとジブリキャラを彷彿させるが、キッテルセンの発想がファンタジー系のクリエイターたちに影響を与えているのは間違いない。

 

北欧と言えば、私の好きな画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの作品が見当たらない…と思っていたら、彼はデンマーク出身なのだった。ひっそりとした室内の絵を数多く描いたハンマースホイだが、そこに漂う謎めいた気配は、少し前までトロル的な何かが棲んでいた名残りなのかもしれない。