ヴァシリー・ペトレンコ&RLPO 破綻なきショスタコーヴィチ5番 | 今夜、ホールの片隅で

今夜、ホールの片隅で

東京在住クラシックファンのコンサート備忘録です。

■ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団(5/14サントリーホール)


[指揮]ヴァシリー・ペトレンコ

[ヴァイオリン]三浦文彰*

[ピアノ]辻井伸行**


ウォルトン/ヨハネスバーグ祝典序曲

ヴォーン・ウィリアムズ/あげひばり*

グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調**

(アンコール)シベリウス/もみの木**

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ニ短調

(アンコール)ラフマニノフ/ここは美しい場所


2015年1月に聴いて以来、約3年ぶりのRLPO来日公演。ペトレンコと言えば、前回はヴァシリーの方が知名度が高かった気がするけれど、この3年の間にキリルの株が急上昇した感がある。ちなみに前回聴いたプログラムでも辻井伸行さんがコンチェルトを弾き、メインはショスタコの交響曲で、1曲目の「祝典序曲」まで同じフォーマットなのは、楽団側の意向か、それとも事務所の思惑か。事情はさておき、1、2曲目のイギリス音楽の選曲が個人的にはとても魅力的。


1曲目のウォルトンは今回初めて聴く作品だが、南アフリカの都市・ヨハネスブルグの誕生70周年(1956年)を記念して委嘱された作品とのこと。マラカスなど多彩なパーカッションや充実のブラス・セクションなど大編成を駆使して、ウォルトンならではのすばしっこくて機知に富んだ楽想がぎゅっと凝縮されている。RLPOがイギリス初演した楽団ゆかりの作品ということもあるのだろう、ペトレンコのドライブにオケも気持ちいいほど感度よく応え、実に痛快なこの日一番の聴きものだった。


2曲目の「あげひばり」は、愛聴の一曲だが演奏機会は少なく、ましてや外来オケのプログラムに組まれるのは極めて稀なケースだろう。華麗なる1曲目から一転、朧げに霞んだRVWの世界が瞬時に広がり、独奏ヴァイオリンが静かにゆっくりと舞い始める。わざわざソリストを立てるには短い曲ながら、微妙に変化し続ける曲想を飽きることなく聴かせ、なおかつそこにソリストの個性を出すのはなかなか難しそうだな…と改めて実感。三浦さんのソロは最後まで張りのある美音だったが、欲を言えばもう少しわびさびの趣き漂う儚いエンディングが好み。


次のグリーグは、辻井さんのソロも含め、各パートが分離よく聞こえるさっぱりした演奏。解き易いようにわざと緩めに結んだ結び目のようでもあり、決定的な「緊密さ」をどこかで回避しているようなもの足りなさが残った。ソリストに遠慮しているのだろうか、オケのサウンドにもっと厚みや奥行きや、コクのあるブレンド感が欲しいところだが…。辻井さんのアンコールは、最近どこかで聴いた曲だと思ったら、2月の東フィル定期で同じくグリーグのコンチェルトを弾いた牛田君のアンコールと同じシベリウス「もみの木」だった。


後半は、ペトレンコ十八番のショスタコーヴィチ5番。前回聴いたタコ10の感想を改めて読み返してみたのだが、 実は今回もほぼ同じようなことを感じながら聴いたので、くり返すのはやめておこう。今やこの曲は在京オケの定期でも何ら遜色のない充実した演奏が聴けると思う。終演は21時30分近くと、長いコンサートになったのも前回同様だった。