■NHK交響楽団 第1884回定期公演(4/25サントリーホール)
[指揮]ヘルベルト・ブロムシュテット
ベートーヴェン/交響曲第8番 ヘ長調
ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調
ここ3シーズンに渡って続いたブロムシュテットによる何度目かのベートーヴェン交響曲全曲サイクルの最終回に当たる公演(私が聴けたのは1・2・3・4・7・8番)。19時開演で20時30分には終演していた、時間的にも内容的にも潔いプログラムである。
前半の第8番は、音圧が勢いよく弾ける冒頭の第1音から、堂々たるサウンドが響き渡る。先日聴いた第4番がややピリオド寄りに聞こえたのに比べ、この日はより重厚感のあるしっとりとしたアンサンブルに聞こえたのは、曲想の違いか、編成(前回は数え忘れたが、この日は弦14型か)の違いか、ホールの音響の違いによるものか。ブロムシュテットは拍ごとではなく、1小節をひと振りで振るので、その行間を埋めるニュアンスはオケの自発性に負う部分が大きく、そんなところにも両者の信頼関係が表れる。第1楽章と第2楽章はほぼアタッカで続けた。
後半の第7番も、第1楽章と第2楽章、第3楽章と第4楽章をアタッカでつなぎ、全てのくり返しが実行された。第2楽章終盤にトゥッティで奏される「タータタ・ターター」のアーティキュレーションが絶妙にコントロールされていた点、そして第3楽章で2回挿入されるトリオが超快速テンポで、主部に戻る直前のひっそりとした部分で大胆にリタルダンドを効かせていた点が特に印象に残ったが、それを除けば至極まっとうな、純正な成分のみで出来たベートーヴェンらしいベートーヴェン。第4楽章コーダのクライマックスで、ヴァイオリン隊がザッ、ザッ、ザッ、ザッと刻むダウンボウのリズムの、何と清々しいことか。
誤解を恐れずに言えば、これは決して「面白い」ベートーヴェンではない。指揮者の恣意的な解釈というものがほとんど介在していないように思える、至ってオーソドックスな演奏である。そしてこういう演奏を聴いていると、自分の耳が無意識のうちに、耳慣れた曲の新奇なアイデアや刺激、その指揮者の「らしさ」や「ならでは」を探そうとしていることに気付かされる。そういった浅ましさを改め、もう一度初心を取り戻させてくれるような、90歳のマエストロの健全なベートーヴェンだった。