今日は近所の商店街にある文房具屋にいたところ、
80歳になるお爺さんとお話する機会がありました。
太いペンを探されているようでしたが、
小さい文字が見えずに困っていましたので、
一緒に探してあげることにしたのです。
人と話すのがとてもお好きなようです。
元気ハツラツで80歳には見えませんでした。
無事希望のペンが見つかってお爺さんも感謝してくれて、
その後も僕に色々なことをお話していただきました。
そのお爺さんは、ならまちに75年以上住んでいるようです。
お話を伺っていると若い頃から絵を描いたり、
着物の模様を作ったり、どうやら芸術家さんでした。
お爺さんの父親は、画家だったそうです。
店を出てから本屋に立ち寄り、僕に冊子を買ってくださいました。
「やまと百景」という冊子で、その新春号に、
お爺さんの父親の絵が特集されていたのです。
「高潔の画家」と書かれていました。
表紙には躍動感に溢れた馬の絵、冊子をめくると、
魚、鳥、花、食物、四季などが描かれていました。
どの絵も素敵です。
絵に魂が吹き込まれ、生きているようでした。
その道では有名な方だったようですね。
お爺さんと帰りをご一緒させていただいたのですが、
僕の住んでいる家からすぐ近くにお住まいのようです。
帰り際に、展示場やお店などのガラス越しから、
お爺さんの描いたアートが展示されていました。
親子揃って凄い人なんだと思いました。
芸術家として才能があるのですね。
通り掛かりの人から挨拶をされたり、
お店の人達とも仲が良さそうでした。
戦争時代のことも少しだけ伺ったのですが、
B29が大阪を空襲した時の赤く染まった空のことや、
奈良の若草山の奥に戦闘機が墜落したことなど、
興味深いことを淡々とお話していただきました。
戦闘機が墜落した時、アメリカ人だと思って、
仲間達が刀や武器を持って現場に到着してみると、
なんと、日本の戦闘機だったそうです。
お爺さんがさらっと何気なく話す一言一言は、
僕にとってはとても新鮮なことでした。
僕がお爺さんと文房具屋から家に帰るまでの間、
ご一緒させていただいた中で気づいたことがありました。
絵やアートが上手だったことも素晴らしいですし、
お話も大変興味深かったのですが、それだけではありません。
お爺さんのお人柄がとても素晴らしかったのです。
僕は、お爺さんの描いた芸術もそうですが、
お爺さんの人間性の方が美しく見えました。
僕よりも何十年も人生経験が豊富なのに、
とても謙虚な方だったのです。
普通のお友達のように接してくれました。
笑顔も素敵で優しくて生き生きとしていました。
何を話して、何をしてきたか以上に、
人としてのあり方に惹かれたのです。
あたたかい人間味を感じられました。
お爺さんと少しの間過ごしただけで、本で学ぶ以上に、
大切なことを学ばせていただいたように思います。
何を言い、何をしてきたかよりも、今どうあるかの方が
大切なことなんだと改めて感じられました。
あり方というのは、かたちだけではないのですね。
お爺さんと直接触れ合って感じられたものは、
文字から理解するものでは得られないものです。
僕の祖父も祖母も亡くなってしまいましたので、
もっと一緒にいる時間を持てばよかったと、
少し後悔する思いも出てきてしまいました。
ご年配の人に限られたことではありませんが、
人の世界観に触れられることは尊いことですね。












