石見川本は小さいながらも地方駅らしさと元気を感じる街。
乗ってきたまだ30代とおぼしき元気な地元女性が、どちらかというとどんよりとした
テツ屋に誰彼となく旅の会話を始め、しきりに三江線をPRしている。
川本から乗ってきた乗客も皆にこやかで、絵に書いたようなローカル線の良さを感じ
させてくれる。
小さなこどもの手を引いたお母さんが、「電車は、ガタン、ゴトンって、走るんだよ」と
語るように言い聞かせているが、この子の記憶の中に、三江線は残るのであろうか、
と考えると、少し寂しい気持ちがする。
鹿賀、石見川越、田津、川戸と、江の川の表情もすっかり川下の雰囲気になり、
あたりの町、村もすっかり明るくなって、眩しいばかりの夏の日差しと緑の中を進ん
でゆく。
千金をでると遠くに河口が見えてくる。川幅もすっかり広がり、日本海はもう目の前だ。
三江線は、先に書いたように、江津から三次方が下りになるが、この線に乗るなら、
ぜひとも三次からの上り列車をおすすめしたい。
野を越え、山を越え、なんどとなく川をわたり(実際には全線で7回)、深い山あいが
徐々に開けて日本海が広がる風景は感動的でもある。
全線35駅、多くの駅が一日平均乗降客が片手に満たない駅であろうと、列車は
ひとつひとつの駅に、本当に丁寧に止まりながら淡々と走る。
幾度となく自然災害に見舞われながらも、都度復旧し、人々の生活をつないできた
三江戦ではあるが、地元の活動、応援団の努力も虚しく、残念ながらこの鉄路の
廃線は現実のものとして、カウントダウンに入ってしまった。
時の流れの中にやむを得ないことではあるが、また一つ、古き良き国鉄の遺産が
来てゆくのは本当に寂しい限りである。
(了)



