第3章 偽選挙人と「上院議長戦略」

はじめに

1月6日の朝、トランプ大統領は、エリプス庭園での彼の演説で、集まった数千人の支持者に連邦議事堂まで行進するよう強く勧め、「我々は、連邦議会が正しいことをすること、そして合法的に選挙人名簿に登載された、合法的に登載された(訳注:繰り返し)選挙人だけを集計することを要求するためにやってきた」と説明した。それは、即興での発言ではなかった。何週間もかかって準備され、慎重に計画されたプランが頂点に達したものであった。大統領の主張は、真実を逆転させていた。アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ニューメキシコ、ペンシルバニアそしてウイスコンシンという激戦州から選挙人の合法的な名簿は一つしかなかったが、トランプはそれらを拒否したかった。このプランには、ケネス・チェスブローとルディー・ジュリアーニのような弁護士とマーク・メドウズが関与していた。また、重要な時点で共和党全国委員会委員長(Chairwoman)のロナ・マクダニエル、連邦議会議員、7つの州の共和党幹部による支援が行われた。彼らの一部は、彼らが何を行うことになるのかを正確に理解してはいなかった。トランプ大統領自身がこのプランを監督した。

トランプ大統領と彼の仲間は、トランプ大統領が敗北した7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ニューメキシコ、ペンシルバニアそしてウイスコンシン)における彼ら自身の選挙人団選挙人の偽の名簿を準備した。そして、これらの各州の一般投票で勝利した候補者(ジョー・バイデン)に関する選挙人票を投票するために各州で認証された選挙人が集会をする日である2020年12月14日に、これらの偽選挙人も集会を行い、選挙で敗北した候補者であったトランプ大統領に対する見せ掛けの選挙人票を投じた。トランプ選挙人が、前副大統領が勝利した州において12月14日に集会を行い、投票を行い、偽の選挙人名簿を作成するいかなる合法的な理由もなかった。バイデンが勝利した。そのかわりに、この取り組みは、1月6日の連邦議会の合同会議での上院議長(合衆国憲法に基づき、副大統領が担う役割)を直接狙ったものであった。トランプと彼の顧問たちは、これらの偽の競合する選挙人名簿を支持し、バイデン前副大統領に対する真の選挙人団選挙人の票をペンス副大統領が無視することを望んだ。

しかしながら、本物の競合する選挙人名簿は決して存在しなかった。偽のトランプ選挙人が12月14日に集会を行った時間までに、7州それぞれの適切な政府当局者は、バイデン前副大統領に関する彼らの州の公式な選挙結果を既に認証していた。いかなる裁判所もこれらの結果を逆転させ、疑問視する判決を出してはおらず、ほとんどの選挙に関する訴訟は終わっていた。そして、第2章で詳細に記述されているように、トランプ大統領とその仲間の違法な取り組みにもかかわらず、異なる選挙人を任命することで選挙結果を逆転させるというトランプ大統領による要求に対して、いかなる州議会も同意をしなかった。

これらすべてを考慮したとき、自らを大統領選挙人であると呼んだこれらのトランプ支持者グループは決して実際には選挙人ではなく、彼らが12月14日に投票したという票は有効ではなかった。彼らは偽者であった。彼らにはいかなる法的地位もなく、彼らの偽の票は、有権者によって選ばれた真の選挙人名簿をペンス副大統領が無視するために利用されることはあり得なかった。

1月6日までに、トランプ大統領は、彼の周囲にいたトップ法律家たちによってこのプランをやり抜くことを放棄するよう勧められていた。トランプ選挙対策本部の上席弁護士たちは懸念しており、連邦議会の合同会議の数日前に、司法長官代行と副司法長官は、「ジョージアとその他のいくつかの州」を含む選挙人の「競合する名簿」があることを示唆した書簡の送付を阻止した。しかしながら、彼らの論理的思考は、トランプ大統領の言辞とプランを変更させるために役立たたなかった。トランプ大統領は、大統領として留任する機会を1月6日に作り出すために「競合する」あるいは「2重の」選挙人名簿があると主張し続けた。

これらの法律家たちは正しかった。トランプ大統領のこのプランは違法であった。デービッド・カーター連邦地区裁判所判事は、この「(訳注:バイデン前副大統領選挙人に)代替するトランプ大統領選挙人を認証する」という構想は、「1月6日プランの重要な目的」を構成していたと、2022年6月7日の意見書の中で書いた。これは、「このプランの違法性は明白であった」、そして「民主主義国家においては、指導者は任命されるのではなくて、選挙で選ばれるということをアメリカ大統領はもとよりすべてのアメリカ国民は知っている」として、3月に出されていたカーター判事の先の判断に続くものであった。この「大胆な」プランで、トランプ大統領は、故意にこの基本的な原則を破壊しようとした。証拠に基づき、同法廷は、トランプ大統領が2021年1月6日の合同会議を妨害しようとした可能性が高いと判断した。

偽選挙人の取り組みは違法であり、前例がなく、数世代にわたり米国がその大統領を選ぶために利用してきた選挙人団のプロセスからの破壊的な逸脱であった。それは、1月6日に発生した暴力を直接招いた。その取り組みが原因で生じたダメージに対応するには、それがどのように起こったのかを理解することが重要である。

3.1 偽選挙人プランに関する下準備を行う

偽選挙人プランは、トランプ選挙対策本部の一人の外部法律顧問ケネス・チェスブローが書いた一連の法的覚書から生れた。ジョン・イーストマンは、1月6日の直前の数日間においてトランプ大統領にした、より顕著な役割を果たしたものと思われるが、チェスブロー(ボランティア法律顧問としてトランプ選挙対策本部を手助けするためにリクルートされたボストンとニューヨークに本拠を置いた弁護士)がこのプランの作成の中心人物であった。11月18日、12月9日そして12月13日にチェスブローが書いた覚書は、以下に論じられるように同プランの土台となった。

チェスブローの11月18日の最初の覚書は、ウイスコンシン州の選挙人団の共和党選挙人の候補者が不測事態に備えて代用の選挙人団票を投票するために12月4日に集会を行う限りにおいて、トランプ選挙対策本部がウイスコンシンの選挙結果に異議を申し立てる訴訟に関してさらに数週間を得ることができると示唆した。この覚書は、トランプ・ペンスに対して誓約した選挙人は、その時点において、票集計で後れを取っており、トランプ・ペンスに有利ないかなる選挙証書も発行されていないにもかかわらず、12月4日に集会を行い彼らの票を投票することは、奇妙に思われるかもしれないことを認めていた。しかしながら、チェスブローは、不測事態に備えたベースでそのような代りの選挙人が選挙人票を投ずるために集会を行った場合、このことによって、トランプ選挙対策本部は選択肢を維持することができ、「トランプ・ペンス選挙人に有利な12月14日以降に行われる裁判所の判決(あるいは、おそらくは、州議会の決定)はタイムリーなものになるはずだ」と主張した。

12月9日、チェスブローは2つ目の覚書を書き、同覚書は、1月6日における偽選挙人団票に関するもう一つの目標を示唆した。同覚書は、これらの州における権限を有していないトランプ選挙人は「裁判所、州議会あるいは連邦議会で」遡って認識されることとなる可能性がある」と述べた。この説によれば、選挙が過誤で決定されたと裁判所が判決する必要はない。そうではなくて、連邦議会それ自体が争っている選挙人票のリストの中から選ぶことができ、そうすることによって、合衆国憲法は州を経由して選挙人団に対してその権限を付与したものの、連邦議会が大統領選挙を決定することができることになるという。

チェスブローが行った同じ時期のコミュニケーションは、その目標が連邦議会を偽選挙人票に基づき行動させることであったことを明らかにしている。チェスブローは、ネバダの偽選挙人のまとめ役に対して、「連邦議会に選挙人票を送る目的は、連邦議会において選挙違反を議論する機会を提供し、票をトランプのために覆す可能性を維持するためである」と、Eメールを送った。そして、アリゾナ共和党に対するある法律顧問は、チェスブローによって、彼が選挙人と称する人々は、連邦議会における「誰か」が票集計を開始したときに異議を申し立てることができ、「偽の」票が集計されるべきであると主張を始めることができるよう、「偽の」選挙人票をペンスに送ることになるだろうと、この頃告げられたことが報道されていた。

トランプチームによって争われた多くの州には、選挙人が彼らの票を有効に投票し、(連邦議会に)移送することに関する要件を規定した法律を有していた。そして、2020年12月9日の覚書は、これらの基準は偽選挙人が満たすことが不可能とまではいわないまでも、困難であることを認めた。(後述されているように、その多くは満たされることはなかった。)例えば、ネバダ州法は、大統領選挙人が集会をするときに州務長官が議長を務めることを義務付けていた。そして、ネバダ州務長官であった共和党員のバーバラ・セガブスケは、正統な勝利した選挙人目候補者名簿としてバイデン・ハリス選挙人たちを確定する証書にすでに署名していた。いくつかの州はまた、選挙人たちに州議事堂建物において彼らの票を投票することを義務付ける規則、あるいは11月の投票で提案された元々の選挙人たちが出席できない場合にその代替となる選挙人を承認する手続きを定める規則を有していた。その結果、チェスブローの2020年12月9日覚書は、可能な場合は、そのような規則を遵守することをトランプ選挙対策本部に助言したが、また、これらの偽の選挙人名簿は「ミシガンでは若干問題含みとなり、ジョージアとペンシルバニアでは幾分あやふやであり、ネバダでは極めて問題含みである」と認識していた。

12月13日、偽選挙人スキームは、チェスブローによってジュリアーニに送付されたEメールの中でさらに明確になった。チェスブローのメッセージは、「上院議長戦略に関する簡単なメモ」というタイトルであった。同メモは、その次ぐ日の12月14日の偽選挙人の集会が1月6日の連邦議会の両院合同会議中に上院議長(合衆国憲法が合衆国副大統領付与する役割)によっていかに利用されるかについて取り組んでいた。チェスブローは、上院議長は1月6日においては、彼がそして彼だけがたんに開票を行うだけでなく、相反する票があった場合にどうするかという判断を行うことを始めとして票を集計する憲法上の責任を負っているという立場を厳然ととることができると主張した。

チェスブローの覚書は、上院議長(合衆国憲法に基づき、副大統領が務める)が、単純に「二組の票があることを理由にして」トランプ選挙対策本部が偽選挙人を編成したいかなる州に関しても実際に勝利したバイデン副大統領の選挙人票を破棄することが可能であることを示唆した。もちろん、実際には二組の選挙人名簿による票はなかった。したがって、この前提それ自体が基本的に間違っていた。しかし、チェスブローは、偽選挙人による票が州法に基づき決してさかのぼって認証されなかった場合であってさえも、それらを単純に連邦議会に提出するだけで、上院議長たるペンス副大統領が有効なバイデン前大統領に関する票を十分に無効化することができることになると主張していた。チェスブローは、これはトランプ大統領の二期目を結果的にもたらすことになるかもしれない、あるいは少なくとも、それが選挙不正と称されるものに関する論争を強いることになるだろうということを示唆した。しかし、そのいずれも、偽選挙人を組織し、招集する合法的かつ正当な理由ではなかった。

以下と第5章において論じられているように、ジョン・イーストマンは1月6日が近づくに当たりチェスブローと協力し、合同会議中に偽選挙人票を利用するプランを踏まえ、かつ拡大した2件の追加の覚書を書いた。

(「3.2トランプ大統領と選挙対策本部が偽選挙人スキームを採用」に続く)