4.5 ローゼンとドノヒューは持ちこたえた
バーは、自分が司法省を2名の信頼する部下の手に委ねて辞任しつつあると感じた。しかし、トランプ大統領は、バーに対して圧力をかけたように、すぐにローゼンとドノヒューに対して圧力を行使した。
バーが辞任した日である2020年12月14日、大統領特別補佐官で大統領執務室調整官(Oval Office Coordinator)であったモーリー・ミッシェルが、司法長官代行ジェフリー・ローゼンにEメールを送付した。そのEメールには2件の文書が添付されており、その両方ともに「合衆国大統領より(From POTUS)」というラベルが付けられていた。最初の添付文書は、ミシガン州アントリム郡における不正投票の嘘の主張に焦点を絞った一連のトーキング・ポイント(論点)であった。もう一つの添付文書は、大統領がバーに既に与えたものと同じドミニオン社投票機に関する「アライド・セキュリティ・オペレションズ・グループ(ASOG)」の報告書であった。
その翌日の12月15日、トランプ大統領は、ローゼン司法長官代行、ドノヒュー副司法長官代行、シポローネ大統領法律顧問、メドウズ大統領首席補佐官、ケン・クシネリ国土安全保障副長官代行そしてチャド・ミゼーレ国土安全保障省法律顧問代行との会議をホワイトハウスで開催した。バーは、司法省を翌週まで去る予定ではなかったものの、参加しなかった。この前日に選挙人団が会合を開き、バイデン副大統領を大統領に指名する票を投票していたことから、この会議のタイミングは、注目に値するものであった。
特別委員会での証言中、ドノヒューは、12月15日の会議は、ASOGの報告書にほとんど焦点を当てていたと説明した。ドノヒューによれば、トランプ大統領は、「ASOG報告書が正確であるに違いがなく、同報告書が選挙に欠陥があったことを証明しており、実際には彼が勝利し、司法省は同報告書を使って基本的に選挙結果が信頼できるものではなかったということをアメリカ国民に告げるべきである」とむきになって主張し続けた。トランプ大統領は、ジョージアとペンシルバニアにおける不正選挙という誤った主張を始めとする、「その他の説」についても主張したが、12月15日の会話のほとんどは、ミシガン州アントリム郡に焦点を当てていた。トランプ大統領は、なぜ司法省が「この件をもっと捜査しないのか」、そして司法省は「その仕事をするつもりがあるのか」と問い正した。
司法省は、その仕事を行っていた。実際に、バー司法長官は、不正投票に関する多くのさまざまな主張に対する前代未聞の捜査を行った。大統領は、でっち上げた主張のいずれも真実ではなかったことを司法省が明らかにしたという真実を単純に聞きたくなかったのだ。第1章で説明したように、アントリム郡における当初にあった票集計はそれ以降是正されたヒューマンエラーの結果であり、ドミニオン社の投票機あるいはソフトウエアのいかなる問題の結果によるものではなかった。不正の証拠はなかった。
4.6 トランプ大統領、ジェフリー・クラークを紹介される
2020年12月21日、11名の共和党下院議員が、1月19日の選挙人団票の認証を拒否するという彼らのプランを話し合うためにホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。会談後、大統領首席補佐官マーク・メドウズがツイートを行った。「数名の下院議員が、増加する不正選挙の証拠に対して対抗することに備えている@realDonaldTrump(訳注:トランプ大統領のこと)との大統領執務室での会合を終えた。こうご期待。」これらの参加者の中の一人は、ペンシルバニア選出の共和党下院議員スコット・ペリーであった。
翌日までに、ペリー下院議員は、あまり知られていなかったジェフリー・クラークという名の司法省職員をトランプ大統領に紹介した。その時点で、クラークは、司法省民事局の局長代理兼環境・天然資源局長であった。クラークは、選挙不正の主張に対する捜査に関するいかなる経験あるいは責任も持っていなかった。
トランプ大統領は、12月23日と1月3日の間「事実上毎日」、ローゼン司法長官代行に電話をした。大統領は、常に彼の司法省に対する「不満」について論じ、選挙不正の捜査が不十分であると主張した。クリスマスイブに、トランプはジェフリー・クラークの名前を持ち出した。ローゼンはそれを奇妙に感じ、特別委員会に告げた。「大統領がクラーク氏をなぜ知っているのかと不思議に思った。」
ローゼンはその後、12月26日にクラークと直接話をした。クラークは、彼がトランプ大統領と大統領執務室で数日前に会ったことを明らかにした。クラークは、トランプ大統領が司法省の指導部を変えるなら、その後司法省は選挙がトランプ大統領から盗まれたという大統領の主張を支持するためにもっと多くのことをすることができるだろうと大統領に告げていた。
クラークは、ローゼン司法長官代行との話し合いの中で、「自己防衛的であり、申し訳なさそうであり」、トランプ大統領との会談は「不注意であり、そのようなことは二度と起こらない。もし誰かが彼にそのような会合に行くように依頼した場合には、ドノヒューと私(ローゼン)に知らせる」と主張したとのことであった。もちろん、クラークは自己防衛的になるには十分な理由があった。12月22日のクラークのトランプ大統領とペリー下院議員との会談は、司法省方針の明白な違反であった。同省の方針は、ホワイトハウスと司法省スタッフの接触を制限している。司法省の法律顧問室担当次官補ステイーブン・エンゲルが特別委員会に説明したように、「司法省がいかなる政治介入の現実あるいは外見がない形でその犯罪調査を実行することは、極めて重要である。」その理由から、司法省は、「クラーク氏のように、慎重さに欠け、これらの方針の持つ含意を理解していない者たちがこれらの接触方針に違反しないように、これらのコミュニケーションを可能な限り頻度を少なくし、高いレベルに抑えるという長期的な方針を保持している。
ローゼンは、司法長官または副司法長官だけが「ホワイトハウスとの間で刑事事件に関しては会話できるか」、あるいは彼らが司法省内の誰かにそうする「権限を付与することができる」と、付け加えた。
ペリー下院議員は、クラークに代わって主張し続けた。同下院議員は、12月26日にメドウズ大統領首席補佐官にテキストメッセージを送付し、「マーク、時間が引き続きカウントダウンし続けているので、チェックインして欲しい。1月6日まで11日、次期大統領就任まで25日だ。もう離陸しなければならない。」ペリー下院議員は、フォローアップを行った。
「マーク、君はジェフに電話すべきだ。私はたった今彼との電話を切ったところだ。そして、特に司法省との間での主要な副長官(のポスト)がなぜ機能していないのかを説明してくれた。彼らは、行う必要があることを強制する権限がないとみている。」メドウズは、「了解した。理解したと思う。副長官ポジションについては私が何とかする。」と回答した。その後、ペリー下院議員は、追加のテキストメッセージを送った。「オーケー。「シグナル」(訳注:メッセージアプリ)であるものを送ります。」「今新しいファイルを送った。」そして「ジェフ・クラークに電話をしたか。」と尋ねた。
4.7 12月27日の電話
2020年12月27日、トランプ大統領は、再び司法長官代行のローゼンに電話をした。長電話の間のある時点で、ローゼンは、司法副長官代行のドノヒューを会議に参加させることを要求した。ドノヒューが同時並行でとっていたメモによれば、トランプ大統領は、3名の共和党政治家に言及した。その全員がトランプ大統領の選挙に関する嘘と「盗みを止めろ(Stop the Steal )」キャンペーンを支持していた。一人は、スコット・ペリー下院議員であり、もう一人は、1月6日の議事堂襲撃事件中に連邦議事堂に居たことが分かったペンシルバニア州議会上院議員のダグ・マストリアーノであった。トランプ大統領は。オハイオ選出のジム・ジョーダン下院議員についても言及し、彼を「戦士」と称賛した。ペリー下院議員とジョーダン下院議員は、時に選挙に関する嘘を拡散するためにチームを組んだ。二人は、11月選挙の数日後、ハリスバーグにあるペンシルバニア州議会議事堂の前の「盗みを止めろ」キャンペーンで話をした。また、二人は、友好的なメディアでのインタビューにおいて彼らの陰謀論を推進した。
トランプ大統領は、12月27日の電話中に「次々と根拠ない主張」を行った。彼のメモに反映されているように、ドノヒューは、大統領が「我々が我々の仕事をしていない」ということをますます頑固に主張していることで、電話を「以前の会話のエスカレーション」である判断した。トランプ大統領は、他の関係者から聞いた「陰謀論」を売り物にしたが、ドノヒューは、「大統領に対してそれらの主張は単純に真実ではないことを明らかにしよう」とした。ドノヒューは、大統領がある陰謀論から次の陰謀論へと話題を変えるに合わせて次々とトランプ大統領を「正そう」と務めた。
大統領は、前司法長官のバーがまったくのナンセンスだとはねつけ、信用を落としているASOG報告書に立ち返った。「アライド・セキュリティ・オペレションズ・グループ(ASOG)」は、根拠に基づくことなく、ミシガン州アントリム郡のドミニオン投票機は68%の誤差率という問題があった主張した。上記と第1章で指摘されているように、その主張は真実からは程遠いものであった。
アントリム郡の共和党員と民主党員の双方によって構成されている選挙当局は、2020年12月17日にすべて機械処理された票の手作業による再集計を完了したが、それによってドミニオン投票機に関する嘘は終わったはずであった。機械集計と手作業による再集計の間の差異は、総票数15,718に対してわずか12票でしかなかった。機械は、バイデン副大統領に関して手作業による合計票よりもわずか1票多く集計していた。ドノヒューは、トランプ大統領に対して、ASOGの主張は「単純に真実ではないことから、それに頼ることはできない」と告げた。これは、大統領のエリプス庭園での1月6日の演説中を含み、何度も嘘であることが暴露された主張を後に大統領が繰り返すことを止めさせることにならなかった。
ドノヒュー司法副長官代行は、12月27日の電話中にトランプ大統領が主張したその他の一連の陰謀論の誤りも指摘した。ある話は、「ニューヨークからペンシルバニアまでトラクタートレーラー一杯に積んだ投票用紙を運んだと主張した」トラック運転手に関するものであった。FBI がトラックの輸送ルートの前端と後端で証人に面談し、積み荷目録を調べ、そのトラック運転手に尋問を行い、そのトラックには投票用紙はなかったと結論付けた。
その後、トランプ大統領は、デトロイトでの投票に関する陰謀論に話題を変えた。真夜中に多数の違法な票が廃棄されたという主張は、バー前司法長官がその誤りを既に指摘していたが、トランプ大統領は、その主張を決して放棄していなかった。トランプ大統領は、誰かが投票立会人を「外に退出させた」、「違法な外人の投票を調べる必要もない。必要ない。非常に明白だ」と主張した。大統領は、「連邦捜査局は、常に何もなかったという。」なぜなら、それは、SP(特別捜査官)たちは彼を支持しているが、局指導部は彼を支持していないと思われるからだと不満を述べた。これは、ドノヒューの見解とは合致していなかった。しかし、トランプ大統領は、彼がFBIの指導部に関して一定の好ましくない判断を行ったと不満を述べた。
トランプ大統領はまた、ジョージアと「ステート・ファーム・アリーナ」に関して多く語ることを望んでおり、「不正は明らかだ」と主張した。トランプ大統領は、単純に彼女の仕事をしていたジョージアの選挙係員ルビー・フリーマンを「ペテン師」で「選挙詐欺師」と中傷した。トランプ大統領は、「ネットワーク(テレビネットワークの意味)がテープを拡大し、彼らが票を繰り返し集計している様子を写した」と述べた。大統領は、「民主党員が投票所を閉鎖し、その後テーブルの下にあった票を持って戻ってきた」という嘘を繰り返した。彼は、ローゼンとドノヒューに対して、フルトン郡に行き、署名の確認を行うべきである、二人はそれがいかに違法であるかを理解することになり、違法な票を数万票見つけることになるだろう、と示唆した。
トランプ大統領は、ビデオの中のスーツケースと称されていたものに固執し続けた。しかし、司法副長官代行のドノヒューは、大統領の妄想の誤りを指摘した。「スースケースはありません」と、ドノヒューははっきりさせた。ドノヒューは、司法省がビデオを調べ、複数の証人と面談を行ったと説明をした。「スーツケースは、真正な票が詰められていた正式な鍵のかかった箱であった。そして、選挙係員は単純にバイデン副大統領の票を複数回スキャンしてはいなかった。これらのすべては、セキュリティカメラで記録されていた。
会話中にトランプ大統領が述べていたことへの対応で、ローゼンとドノヒューは、大統領が行った主張は証拠によって裏付けられていないことを明白にしようとした。「君たちは、私が行っているようにインターネットをフォローしていないに違いない。」と、大統領は発言した。しかし、トランプ大統領は、野蛮な陰謀論を拡散することをやめなかった。
大統領は、ペンシルバニアでは州の有権者数よりも投票数が20万5000票多かったという主張を行った。「ペンシルバニアで登録されている有権者数よりも多い票があったのかどうかについては我々が調べます。」ドノヒューによれば、ローゼン司法長官代行が応じた。「すぐにそれをチェックできるはずです。」しかし、ローゼンはトランプに対して、「司法省がその指をぱちんと鳴らして選挙結果を変えることはできない。司法省はそのような形では動かないこと」を理解することを求めた。
「君たちがそうすることを期待はしていない。選挙が不正だったとだけ言ってくれ、そして後は私と共和党員議員たちに任せてほしい。」トランプ大統領は、反応した。ドノヒューは、これは「大統領の発言の正確な引用です」と説明した。
我々には、違法で不正な選挙があったということを国民に知らせる義務がある」と、トランプ大統領は、電話中の他の時点に司法省チームに告げた。トランプ大統領は、ローゼンとドノヒューが彼に対して選挙を覆す十分な不正の証拠はなかったと告げ続けているにもかかわらず、これが司法省の「義務」であると固執した。ドノヒューは、「我々は我々の仕事を行っています」、「あなたが得ている情報の多くは嘘です」と、大統領に告げた。
12月27日の電話は、さらなる理由で議論を呼ぶものであった。
トランプ大統領は、司法省が彼の選挙対策の支援部隊ではないということを受け入れたがらなかった。彼は司法省が州に対する彼の選挙対策本部の民事訴訟を支援しないという理由を知りたがった。単純な答えがあった。すなわち、選挙対策本部の不正の主張にはそれを裏付けるいかなる証拠もなかったからだ。ドノヒューとローゼンはまた、「この機会とその他のいくつかの機会に、司法省には、これらの選挙において極めて重要で具体的であるが、極めて限定的な役割しかないことを大統領に説明しようとした。」
州は「彼らの選挙を行い」、司法省は「州のクオリティコントロールを行わない。」司法省は、「連邦選挙に関連する犯罪行為と関連する公民権に関連した責任に関連する使命」を有している。しかし、司法省は、選挙結果を変えるため、あるいは民事訴訟を支援するために単純に干渉することはできない。12月27日に、トランプ大統領がこれらの要求を行ったとき、司法省がシステム的な不正のいかなる証拠も見つけていなかったことは既に極めて明白であった。司法省が、2020年大統領選挙が「違法で不正な選挙であった」と主張するいかなる理由もなかった。
「人々が、ジェフ・クラークは素晴らしい、そして彼を政権に参加させるべきだと私に言っている。みんなが、私は司法省の指導部を交代させるべきと言っている」と、トランプ大統領は、電話で話をした。ドノヒューは、これに次のように応じた。「大統領閣下、それは結構なことです。あなたは、ご自分がお望みの指導部を持つべきです。しかし、司法省の指導部を変えることで何かを変えることにはなりません。」
大統領は、司法省によってどのような事実が明らかになるかということについて実際には気に留めてはいなかった。トランプ大統領は、彼と共和党員議員たちが1月6日を始めとして今後の数日間でその発言をうまく利用することができるように、選挙が不正であったと司法省に述べてほしかっただけであった。そして、ローゼンとドノヒューが大統領の懇願を拒否したとき、大統領は、大統領の指示を実行する誰かにローゼンを代えることを公然とつぶやいた。
(「4.8スコット・ペリー下院議員がドノヒューに電話をする」に続く)