4.10 12月29日の会議

 

その翌日の12月29日、ローゼン、ドノヒューそしてエンゲルは、大統領首席補佐官室でマーク・メドウズ、パット・シポローネ、シポローネの側近のパット・フィルビンと会議を行った。会議は主として政権移行を話題にするものであったが、グループは、「テキサス対ペンシルバニア」事件をモデルにした、トランプ大統領が司法省に対して大統領選挙の結果に対する異議申し立てを提起する、暫定的に「合衆国対ペンシルバニア」事件と称した民事上の訴状の草案を議論した。ローゼン、ドノヒュー、エンゲルらの司法省高官は、彼らには提案されている訴訟について徹底的に検討する十分な時間がなかったと述べたが、訴状は問題があるように思われ、司法省が訴訟を提起することに耐えうるようには見えないということを当初に示唆した。メドウズは、司法省側に対して、提案されている訴訟を担当していたトランプ選挙対策本部の2名の弁護士であるウイリアム・オルソンとカート・オルセンに会うことを示唆した。そして、イーストマンとマーク・マーチンという名前のノースカロライナの退職した2名の判事がその訴訟に関する見解を持っていると追加した。

 

この会議において、メドウズはまた、イタリアの企業が大統領選挙において票を変えることに関与したという選挙不正に関する新しくかつ怪しげな主張を行った。メドウズによれば、その後にそれがイタリアの囚人であったとドノヒューが知った、ある男がおり、その男がその主張を裏付ける情報と、ローマに駐在していたCIA職員が選挙に干渉する企てを知っていたか、その企てに参加したという情報を持っていると主張したというものであった。ドノヒューは、メドウズがその主張の具体的な事実に関していかに明確ではなかったということを説明したが、いずれにしてもそれらを捜査するように司法省に伝達した。会議の後、ドノヒューは、連邦捜査局(FBI)にその情報を提供したが、FBIはすぐにその主張に信頼性がないと判定した。しかしながら、メドウズとトランプ政権の一部の高官は、司法省に対して、それらの主張がいかに馬鹿げているか疑わしいものであっても、すべての不正に関する疑惑を捜査すべきだと圧力を加えた。

 

12月29日のメドウズとの会議の数日後、司法省高官側は、提案されていた「合衆国対ペンシルバニア」訴訟をさらに綿密に検討を行い、司法省はその訴訟を提起できないと決定した。エンゲルが訴訟の真実性(the veracity of the suit)を主として検討する任務を与えられ、彼は、彼の分析を彼が12月31日にドノヒューに提供した一連のトーキングポイント(論点)において要点をまとめていた。エンゲルは、いくつかの理由で、提案されていた訴訟が訴訟で争う事実関係を意味する本案(merit)を欠いていると結論付けた。第一に、合衆国政府は、州が運営するその選挙に異議を申し立てる当事者適格を有していなかった。そのような異議申し立ては候補者としてのトランプ大統領と彼の選挙対策本部、あるいはおそらくは権利を侵害されたと主張する選挙人団選挙人だけが提起することができる。第二に、最高裁判所がそのような訴訟が合衆国政府によって提起されることが可能であることを確定したことを確認する前例がない。第三に、12月の遅い時期までに、州は既に彼らの選挙の結果を認証し、選挙人団が集会を終わっていることから、この時点で州を訴えることは選挙の結果を変えることにはならなかった。最後に、ある州が他の州を訴えた「テキサス対ペンシルバニア」事件とは異なり、この訴訟は、自動的に最高裁判所によって審理されることはないので、選挙の結果に影響を与えるためには、数か月前に連邦地方裁判所に提起されていなければならなかった。

 

エンゲルは、特別委員会との彼の面談の中で質問されたとき、「合衆国対ペンシルバニア」訴訟案を「本案に欠けた訴訟」であり、「司法省がその訴訟を提起するかどうかに関しては決して問題とはならなかった」と述べた。ローゼン、ドノヒューという司法省高官が11月12月にトランプ大統領に何度も説明したように、司法省が選挙関連で講じることのできる措置は厳格に制限されていた。司法省は、州が州の選挙を管理する中での州の行動を監督することはできず、トランプ選挙対策本部によって提起された訴訟を支持することはできなかった。それにもかかわらず、トランプ大統領は、その後の日々において同省がこの訴訟を提起し、基本的に彼の政治キャンペーンの武器として同省が行動するよう、圧力をかけ続けた。

 

4.11 ローゼンの12月30日のトランプ大統領との電話

 

12月29日の会議の後でさえも、トランプ大統領と彼のために動いている連中は、なお司法省指導部が「合衆国対ペンシルバニア」訴訟を提訴することを望んでいた。12月30日、ローゼン司法長官代行は、その訴訟に関する議論を含む電話をトランプ大統領から受けた。その電話中、ローゼンは、司法省が訴訟を提起できなかったことをトランプ大統領に明確に説明した。ローゼンは、「これはうまくいきませ。この訴訟案にはいくつかの問題があります。そして、司法省はそれを行うことはできません」と、ローゼンは述べた。

ローゼンによれば、トランプ大統領は議論抜きでそれを受け入れた。とはいえ、トランプ大統領と彼の仲間は、司法省に訴訟を提起するよう圧力を行使し続けた。

 

4.12 12月31日の会議

 

2020年12月31日、トランプ大統領は、クリスマスを祝っていたフロリダから突然ワシントンDCに戻った。「エアフォースワン」が着陸した直後、ローゼンとドノヒューは、再び大統領執務室に呼び出された。二人はその日の午後、大統領に会った。ドノヒューによれば、トランプ大統領は、「15日の会議の時よりも若干さらにいらだっていた。」大統領は、「選挙が盗まれた、彼が勝利した、アメリカ国民は不正によって被害を被っている、司法省がそれに関して何かをすべきだとむきになっていた。」

 

大統領は、クラークを司法長官代行に任命する可能性について再び指摘した。ドノヒューとローゼンは、既にトランプ大統領に告げたこと、すなわち、大統領は彼が望む指導部を持つべきであるが、それは実際には何も変えることにはならない」ということを繰り返した。

 

トランプ大統領は、選挙が不正であったと主張し、司法省が不服申し立てを最高裁判所に提起することができない理由を再び質問した。ローゼンとドノヒューは、再び、司法省には原告適格がないことを説明した。司法省は、アメリカ国民ではなく連邦政府を代表すると。トランプ大統領は、懐疑的であり、非常に「生き生きとなった。」大統領は、同じ質問を繰り返し続けた。「それはどうすればできるのか。どのようにすればできるのか。」

 

トランプ大統領はまた、特別検察官を任命する可能性やその候補者として国土安全保障省のケン・クシネリを示唆した。「これは、特別検察官の任命を必要とする類の問題のように思える。」ドノヒューは、大統領がそのように述べたことを思い起こした。大統領は特別検察官を任命することを司法省に命じなかったが、あきらかに依然としてそれについて考えていたことは明らかであった。ドノヒューとローゼンはこれに対して多くを発言しなかったが、彼が行った多くの個々の発言を裏付けるいかなる証拠もないこと、したがって特別検察官の任命を必要とするいかなる証拠もないということを単純に指摘した。

 

トランプ大統領は、再びミシガン州アントリム郡に関する疑惑を主張した。上記したように、アントリム郡の共和党員と民主党員の双方によって構成されている選挙当局は、12月17日にすべての票の手作業による集計を完了した。これで問題はすべて一挙に解決されたはずであった。単純にドミニオン社の投票機が選挙結果を操作したことのいかなる証拠もなかった。しかし、トランプ大統領はこの現実を受け入れようとはしなかった。

 

12月31日の会議中、大統領はまた、投票機を押収する可能性を提案した。「君たちが投票機を押収してはどうか」と、大統領は尋ねた。「証拠があると思うので、君たちが投票機を押収すべきだ」と、大統領が述べたことをドノヒューは記憶している。ローゼンは、司法省が州から投票機を押収するいかなる根拠も持っていないと述べて、押し返した。彼らは捜索令状を必要としたが、それを正当化するいかなる証拠もなかった。ローゼンは、トランプ大統領に対して、州が選挙を実施することから、司法省には監督する責任がないことを再び説明した。連邦政府機関が関与する場合があるとすれば、それは、「ソフトウエアの選択と品質管理を確保する」国土安全保障省になると付け加えた。その時点で、大統領は、ケン・クシネリに電話をした。ドノヒューは、大統領が「ケン、司法長官代行が投票機を押収するのは君の仕事だと私に言っているぞ」というようなことを述べていたのを記憶している。ローゼンは、そのような発言はしていなかったが、クシネリは、大統領の尋ねたことをすぐに否定し、国土安全保障省にはそのような権限はないことを明確にした。大統領法律顧問のパット・シポローネも出席していたが、会議中ずっと司法省幹部の発言を支持した

 

ローゼンが12月31日か1月1日にクラークと話をした時、クラークは、それ以前に彼らに自分がホワイトハウスからこれ以上接触があった場合には彼らに知らせると約束をしていたにもかかわらず、大統領と再び話をしたことを明らかにした。クラークは、トランプ大統領が彼に司法長官代行のポジションを提案し、1月4日月曜日までに返事をするように依頼されたとローゼンに伝えた。しかしながら、クラークは、彼が大統領の提案を受け入れるかどうかを決定する前に、選挙不正の主張に関して何らかの「デュー・デリジェンス(詳細な調査・分析)」を行う必要があると述べた。

 

4.13 2021年1月2日:ローゼンとドノヒュー、再びクラークと対決

 

1月2日土曜日、ローゼンとドノヒューは、クラークに身を退くよう説得しようと再び試みた。二人は、クラークに対し、大統領と会うことを止めるべきであると繰り返した。ドノヒューは、クラークを叱責し、自分が彼の上司であること、そしてクラークが継続している大統領との接触は司法省のホワイトハウスとの接触方針違反であるということを強調した。クラークは、彼が要求したように、国家情報長官室(ODNI)によるブリーフィングを受けたこと、そして「彼がそれ以前に疑っていた外国による干渉を裏付けるものはそのブリーフィングの中には何もなかった」ことを認めた。それにもかかわらず、クラークは、彼の書簡をジョージアとの他の不正選挙の主張が争われていた州に送ることを望んでいた。

 

その会話の中で、クラークは、トランプ大統領が司法長官代行のポストを彼に提案したことを確認した。クラークは、ローゼンとドノヒューがジョージア州当局者に対する彼の正直ではない書簡に署名をするなら、大統領からの提案を彼は断るだろうとローゼンに告げた。ローゼンとドノヒューの二人は、再びその提案を拒否し、「我々がその書簡に署名すること可能性はない」ことを明確にした。ローゼンは、1月2日の夜にEメールの中で彼の決定を繰り返し、「私はそのような書簡に署名する用意はないことを今日再び確認した」と書いた。

 

同じ日、トランプ大統領は、ジョージア州のブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官に同州の選挙結果を盗む上で十分な票をでっち上げることを強要しようと試みた。その電話に関しては本報告書の第2章で論じられている。しかしながら、その一部はここで再び言及する価値がある。同じ電話の中で、トランプ大統領は、彼がジョージア州北部地区連邦検事に任命したビージェイ・パクを話題にした。トランプ大統領は、パクを「その地域を担当している君たちのネバー・トランパー(訳注:共和党院内の反トランプ主義者あるいは反MAGA主義者を意味する。)であると述べた。それが暗示していたのは、パクがトランプ大統領の嘘の不正選挙という主張を正当なものであると十分に確認することを行っていなかったということであった。トランプ大統領のパクについての言及は結果的に不吉な前兆であった。

 

(「4.14 2021年1月3日:クラーク、トランプ大統領の提案を受け入れることを司法省指導部に告知」に続く。)