4.14 202113日:クラーク、トランプ大統領の提案を受け入れることを司法省指導部に告知

13日、クラークは、「彼が司法長官代行を務める」という大統領の提案を受け入れることを決めたとローゼンに伝えた。クラークは、ローゼンに彼の補佐役の立場を提案した。ローゼンは、クラークの提案を「言語道断」であり、「ナンセンス」であると考えた。ローゼンは、特別委員会に対して、「私が留まってなすべきことをなし、私がなすべきことと考えていることとは反対のことを行おうとしている者を私が支持する場はなくなった」と特別委員会に対して告げた。ドノヒューは、それは決定されたことであり、クラークが司法省のトップになるとだろうと信じた。しかし、大統領法律顧問のパット・シポローネは、「それは決定事項ではなく、我々はホワイトハウスにおいてこれに対して闘い抜くべきだ」とローゼンに伝えた。

13日のホワイトハウスの通話記録は、トランプ大統領とクラークが午前659分から始めてその日4回通話をしたことを示している。その日の3回の通話、すなわち朝の2回と午後の速い時間の1回の通話は、大統領が「ジェフリー・クラーク氏」と話をしたことを示している。午後419分から422分までの間の二人の最後の通話は、トランプ大統領が「司法長官代行ジェフリー・クラーク」と話をしたことを示しており、クラークが実際に大統領の提案を受け入れたことを示唆していた。

ローゼン司法長官代行は、特別委員会に対して、ドノヒューあるいはエンゲルが彼の後任になることに関しては安心できるだろうと感じたが、「司法省が真実と矛盾していること、司法省自身の適切な役割と矛盾していることあるいは合衆国憲法と矛盾していることを行うような態勢に置かれることは望まなかった」と特別委員会に語った。

その結果として、ローゼンは、クラークが司法長官に昇格することを防ごうとした4つの緊急措置を講じた。最初に、ローゼンは首席補佐官のメドウズに電話をかけ、その日の夕刻にトランプ大統領との会議を設定することを依頼した。第二に、ローゼンはシポローネと話をした。シポローネは、クラークの任命は回避できないものではないということ、さらに彼もローゼンとドノヒューを支援するためにその日の夕刻の会議にも参加するとローゼンに告げた。第三に、ローゼンはエンゲルに電話をかけ、ホワイトハウスの会議に彼も参加することができるように司法省本部に来るようにと告げた。
最後に、ローゼンは、ドノヒューとパトリック・ホバキミアンという名のもう一人の司法省の弁護士に対して、司法省のそれ以外の幹部の会議を招集し、現在の状況を彼らに説明し、彼らがクラークの任命にどのように対応するかを聞き取るよう依頼した。

ホバキミアンは電話会議を設定した。数名の司法次官補はその電話会議に参加できなかったものの、参加した全員は、ローゼンが解任された場合には辞任するということに同意した。パット・ホバキミアンは、次のような辞表の草案を作成した。

「司法省の法執行権限を不適切な目的のために利用するとの大統領の直接の命令をジェフ・ローゼン司法長官代行が先週中にわたり繰り返し拒否した後、今晩、大統領がジェフを司法省から解任した。リッチ・ドノヒュー副司法長官代行と私は、即時発効で司法省を辞任する」

ホバキミアンは、この大量辞任の脅しによって大統領がローゼンを交代させることを思いとどまらせたことから、この書簡を送ることはなかった。とは言え、この書簡は明らかな真実を述べていた。トランプ大統領は、司法省を彼自身の「不適切な目的」のために利用しようとしたのだ。

202113日:大統領執務室での会議

ローゼンの要求を受けて、大統領首席補佐官マーク・メドウズは、その日の夕刻午後615分に大統領との会議を設定した。

我々は、ここで会議のタイミングと目的について考えるために立ち止まるべきである。連邦議会が72時間足らずのうちに上下両院の合同会議のために開始される予定になっていた。各州は、既に彼らの選挙人を認証していた。ジョー・バイデン前副大統領は、2020年大統領選挙の勝者として認証されようとしていた。バイデンの勝利に関してはいかなる重大な争いもなかった。トランプと彼の弁護陣は、重大な選挙不正のいかなる証拠も提示していなかった。その代わりに、彼らは次から次へとナンセンスな陰謀論を展開した。司法省と連邦捜査局はこれらの主張の嘘を暴くことを強いられた。そして、実際に嘘を暴いた。

これらのいずれも、司法省に不当な圧力を行使しようとしたトランプ大統領の取り組みを止めさせることにならなかった。まったくその反対であった。トランプ大統領は、あきらかに16日の選挙人団票の連邦議会による認証に干渉しようと試み、ジェフ・クラークを司法長官代行に任命する計画を推し進めた。ローゼンが緊急会議を要請したのはこの理由によるものであった。

大統領執務室に向かう前、ローゼンとドノヒューは、シポローネとパット・フィイルビンと共に、
あり得る司法省指導部の交代について話し合った。「二人は完全にそれに対して反対であった」と、ドノヒューは説明した。実際に、大統領執務室の会議に参加した者は、ジェフ・クラーク以外の誰もが指導部の交代を支持しなかった。ドノヒューは、当初は会議に参加しなかったが、大統領がすぐに彼を呼び入れた。

会議中、クラークは、彼を司法長官代行にするための最後の瞬間の動きを固めようと試みた。クラークは、「彼の考える広範な選挙不正を明らかにする現実的な捜査を実施することになる」と述べた。クラークは、これは「この欠陥のある選挙を正す最後の機会となり」、彼は「大統領が最も適切であると考える方法でこれらの事柄を追求するための知性と意思と願望」を持っていると述べた。他の全員がすぐに異議を唱えた。

トランプ大統領は、ドノヒューとエンゲルに彼らがどうするつもりかと尋ねたが、二人は辞任するだろうと答えた。ドノヒューは、彼ら二人だけが辞任するだけではないと付け加えた。「大統領は、司法省の指導部全員が辞任するということを理解すべきです」と述べたことを記憶している。これにはすべての司法次官補が含まれていた。「大統領閣下、これらの指導部は、前政権から残っていた官僚ではありません。あなたが選んだ幹部です。これは、あなたの指導部のチームです。あなたが彼らの一人ひとりを上院での承認を求め、上院に送った幹部です」と、ドノヒューは続けた。ドノヒューは、大統領は大量辞任があると体裁が悪くなると主張した。「我々全員が一度に辞任した場合に、あなたについてどんなことが言われるのでしょうか。」ドノヒューは、大統領にそう尋ねたことを記憶している。「そして、あなたの行動を理由にして数百名があなたの政権の司法省から48時間内に辞任した場合、何が起こるのでしょうか。人々は、あなたの指導力についてどう言うでしょうか。」エンゲルは、ドノヒューのポイントを強調し、クラークは「墓地」につながっていると述べた。

大統領法律顧問のパット・シポローネも辞任すると脅し、クラークの書簡を「無理心中契約(murder-suicide pact)」と述べた。シポローネは、同書簡は「それに触れたすべての人々に打撃を与えるものであり」、だれも関与することを避けるべきだと警告した。

会議参加者の中の誰かが、クラークは司法長官の職に就くにはふさわしくない人物であると主張した。クラークは、彼にその資質があることを示そうとして、自分が複雑な民事訴訟と環境訴訟に関与してきたと主張した。「そのとおりだ。君は、環境法弁護士だ。君の事務所に戻ったらどうか。石油の流失事故があったときには、君に電話をする」と、ドノヒューは、反撃した。

会議は約3時間続いた。会議の終わる頃になって、やっとトランプ大統領はクラークを司法長官代行にするという彼の前からの決定を覆すことを決めた。ドノヒューは、大統領がクラークに対して次のような趣旨の話をしたことを思い起こした。

「君がそれを行おうとしたことに感謝する。君が嫌がらせを受けようとしていることに感謝する。しかし、現実には何も起きないだろう。この連中は、間もなく辞任することになっている。全員が辞任する。破局が来るだろう。官僚機構が君を食い物にするだろう。
向こう数週間以内に君が何を行おうとしても、それは不可能だろう。壊れてしまう価値はない。」

クラークは、大統領の気持ちを変えようと試み、「歴史がこれを我々の機会だと要求しています。私たちはこれを実行することができます」と述べた。しかし、大統領は、一斉の大量辞任のおそれによって明白に平静さを失っており、変化は起こらないと繰り返した。そして、トランプ大統領は、クラークに何が起こるのか、ドノヒューが彼を解雇するのかと疑問に思った。ドノヒューは、大統領だけがその権限を持っていると説明した。それで一件落着であった。「そして、我々は大統領執務室を退出した」と、ドノヒューは思い起こした。

しかし、ある一人の司法省職員にとって、問題は全く解決していなかった。13日の大統領執務室内での会議中、トランプ大統領は、ジョージア州北部地区連邦検察官であるビージェィ・パクについて激しい不満を述べた。バーは、202012月始めにパクに「ステート・ファーム・アリーナ」のビデオについての捜査を行うように指示した。FBIとジョージア州当局者同様に、パクは格別問題であることは起こらなかったという結論であった。大統領は、不満であった。

「アトランタで何も発見できなかったのは不思議ではない。なぜなら、あそこの連邦検察官はネバー・トランパーだからだ」と、大統領が述べたのをドノヒューは記憶している。

ドノヒューは、反論して、「パクは彼の仕事を行いました」と述べた。しかし、大統領は固執し、パクが彼を数年前に批判したことを指摘した。「この男は、ネバー・トランパーだ。彼は、そもそも私の政権に居てはいけない。どのようにして彼は私の政権内に潜りこんだのか」と、大統領は繰り返した。トランプ大統領は、パクを解雇すると脅した。パクは既にその翌日の月曜日に辞任すると計画しているとドノヒューが指摘したが、トランプ大統領は、それがパクの最後の仕事の日となるべきだと主張した。パクは、その後、彼が翌日辞任することをドノヒューに確認している。

トランプ大統領が、大統領執務室での会議参加者に対して、ジョージア州南部地区連邦検察官であったボビー・クリスティンを知っているかどうかを尋ねた。パクにはパクの辞任した後にパクに次ぐ序列が最初になる立場の検察官がいたが、トランプ大統領は、クリスティンがその役割を担うことを望んだ。クリスティンは、パクの後任となったが、彼もまた、不正のいかなる証拠も見つけ出せなかった。ドノヒューは、クリスティンが「選挙に関する捜査は適切に処理されたと結論付けた」という印象を持った。

13日の夕刻の遅い時間に、トランプ大統領は、もう一つの陰謀論を伝えるためにドノヒューに電話をした。トランプ大統領は、アトランタの外にある移民税関捜査局(ICE)のある局員がシュレッダーで裁断された投票用紙を満載したトラックを確保したと聞いた。ドノヒューは、移民税関捜査局が国土安全保障省の一部であり、その案件は同省の管轄権に属すると説明した。その話は、他のすべての話と同様に、司法省捜査官がその主張を評価したときに、作り話であることが判明した。トラックはシュレッダーにかけられた投票用紙を運んでいたが、それらは前回の選挙時の投票用紙であった。その古い投票用紙は、2020年選挙の投票用紙を保管するスペースを確保するためにシュレッダーにかけられたものであった。

4.15 司法省を悪用しようとしたトランプ大統領の前代未聞の試み

トランプ政権末期における司法省の最高幹部は、トランプ大統領がアメリカの法執行機関を主導している司法省を彼自身の腐敗した目的に引き入れることを止めさせた。バー司法長官が「現政権が選挙に不正があったという、具体的な証拠に裏付けられていないその見解に基づいて権力に留まっている世界に住むことはできない」と、コメントしたことを思い起こしてほしい。

リチャード・ドノヒューは、ジェフリー・クラークの書簡は「十分に我が国を憲法上の危機に直面させていた可能性があった」と結論付けた。

ジェフリー・ローゼンは、司法長官代行としての彼の短かった期間について次のように要約した。
「私の任期中、我々は、いかなる特別検察官も任命しなかった。選挙結果に異議を申し立てるいかなる書簡も州当局あるいは州議会議員に送付しなかった。選挙が不正であったので、選挙結果が覆されるべきであるといういかなる声明も発表しなかった。我々は、最高裁でのいかなる訴訟にも着手しなかったし、選挙と選挙機関の正当性を疑問視するその他のどのような訴訟も提起したり、あるいは訴訟に加わったりはしていなかった。トランプ大統領は、これらのそれぞれを司法省に行わせようしたのだった。」

(第5章「ある法理論を求めたクーデター」に続く。)