2021年1月4日:トランプ大統領はジョージアにおける集会の演説で副大統領に公然と圧力をかける

トランプ大統領も同様にその気持ちを静めることはなかった。トランプ大統領に対するペンス副大統領の権限に関する限界に関する一貫したメッセージにもかかわらず、トランプ大統領の本能は、ペンス副大統領に対する公然たるプレッシャーを増大させることであった。その日の夕刻、ジョージア州ダルトンでの上院選挙の集会中、トランプ大統領は、大統領選挙はまだ決着が着いてついていないかの如くふるまい、彼の政敵に対する錯乱した野心を見せた。トランプ大統領は、「彼らが我々に対して行っているような選挙 のあからさまな盗みを含め、過激な民主党員は必死に切望している権力を得ることはできないだろう」と主張した。

「我々は、それを起こさせない」と、トランプ大統領は述べ、次のように付け加えた。「マイク・ペンスが我々のために成し遂げることを私は望んでいる。私はそうあなたに伝えなくてはならない。」トランプ大統領は、ペンス副大統領を「偉大な副大統領」、「偉大な男性」、そして「素晴らしく」、かつ「賢い男」と呼んだ。しかし、トランプ大統領は、副大統領の役割についてほのめかし、「彼はそれに関してたくさん発言することがあるだろう」と述べ、不吉な調子で次のように付け加えた。「もちろん、彼がそれを実行できなかった場合、私は全く彼を好きにならないだろう。」

2021年1月5日:イーストマンは、トランプ大統領がツイートしている間にペンスのスタッフに内輪の会議でプレッシャーをかけた

「イーストマンは前日に大統領執務室での会議が終わった時点での立場を覆し、ペンスが選挙人を無条件に拒否するように主張した。」イーストマンは、ジェーコブとショートに翌日再び会った。大統領執務室内での会議中、副大統領は一方的に選挙人を拒否するつもりがないことを明らかにした。そして、イーストマンは、副大統領が選挙人票を州に送り返すことを推奨することに方針を変えたことで、イーストマンは、これを認識したようであった。しかし、翌日の朝、イーストマンはより攻撃的な路線の提唱に復帰した。

ジェーコブは、2021年1月5日のイーストマンの要求を手書きのメモ『副大統領に対する拒否要求』に記録した

ジェーコブは、後になってイーストマンの発言を次のように取りまとめた。「私はここにあなたが選挙人を拒否することを要請します。」この一夜での方針転換はジェーコブを驚かせた。なぜなら、イーストマンが前日の大統領執務室の会議で放棄したと思われていたより攻撃的な立場に復帰しつつあったからだ。トランプ大統領のその日の朝のツイートがイーストマンの方針転換を説明するかもしれない。イーストマンは副大統領のスタッフと会っていたものの、イーストマンの顧客であったトランプ大統領は、その主張を公然と推し進めていた。

1月5日の午前中の11時06分、トランプ大統領はツイートした。「副大統領は、違法に選ばれた選挙人を拒否する権限がある。」このツイートが明らかにしているように、トランプ大統領は道理あるいは法によって説得されるつもりはなかった。大統領は、1日前の本人同士の会議中を含むペンス副大統領の明確で一貫したこの理論の拒否にもかかわらず、この公的な発言を行った。同じ会議の間、イーストマンは、選挙人を拒否するという「アグレッシブな」路線は賢明ではないことを認めた。

ハーシュマンは、1月5日の会議に短時間だけ参加し、その会議を「まさに[イーストマン]をきつく非難する機会」であると判断した。ハーシュマンは、既に副大統領に関するイーストマンの理論を容赦なく押し返していた。この会話の中で、ハーシュマンは、選挙不正という怪しげな主張のファクトチェックをする必要があることを強調した。ハーシュマンは、連邦議会の議員たちが翌日の1月6日の両院合同会議で選挙人票の認証に反対する前に、イーストマンが連邦議会議員たちに対して提供した主張が正確であることを誰かが確かめるべきであるとイーストマンに告げた。「独立して検証されてはおらず、信頼できないことを誰かが発言するようなことがないようにすべきだ。」


朝の会議の終了時、イーストマンは、彼の理論は歴史的裏付けを持っていないことをペンスの法律顧問に認めた

ジェーコブは、その後、イーストマンと彼の立場の法的メリットをめぐる彼自身の「ソクラテス的」議論を展開した。ジェーコブによれば、イーストマンは、その議論の終わり時には多くの見解に関して譲歩した。イーストマンは、「彼のプランが上手くいかなかったということを認める以外になかった。」

例えば、イーストマンは、ジョン・アダムズとトーマス・ジェファーソンの二人が副大統領であった時に選挙人票の集計を取り仕切った行動に歴史的根拠があったと先に主張していた。しかし、それは事実ではなかった。ジェーコブは、イーストマンがジェファーソンとアダムズの事例は両方のケースで両院合同会議中にいかなる紛争も生じていなかったので、イーストマンが紛争を解決する権限が副大統領にあるという主張の根拠にしようとしていた提案の例としては役に立たないということを二人の間での議論では認めていたと、特別委員会に証言した。

イーストマンは、彼とトランプ大統領がペンス副大統領に果たすべきであると要求していた役割に関しての歴史的な裏付けはないということを認めていた。「選挙人集計法」の成立の前後において、いかなる副大統領もそのような権限を行使してはいなかった。これには、1960年大統領選挙後の当時副大統領であったリチャード・ニクソン副大統領の選挙人票の取り扱いを含んでいる。イーストマンとトランプの弁護士たちは、副大統領が集計するために一方的に選挙人を選ぶことができるという理論を正当化する例としてこのハワイの例を利用したものの、イーストマンは、ニクソン副大統領が実際にはペンス副大統領に提案していたことを行ってはいなかったことをジェーコブに対して認めた。

イーストマンはまた、ペンス副大統領に提唱した拡大された権限を他の副大統領に付与するつもりがないことも認めていた。イーストマンは、カラマ・ハリス副大統領が2025年にそのような権限を持つべきであるとは考えなかったし、アル・ゴア副大統領が2001年にそのような権限を持つべきであったとは考えなかった。また、彼の理論が最高裁判所において9対0で敗北することになるだろうということも認めていた。

ジェーコブによれば、イーストマンは、「そもそも、いかなる合理的な人も合衆国憲法修正第12条([正副大統領の選出方法の改正])の条項をそのように解釈したいと実際には思わないだろう。なぜなら、副大統領がそのような権限を有していることを意味した場合には、それ以降決して政党間での政権交代が生じることはないだろうからだ」ということを認めたということであった。政治家がイーストマンの助言に従った場合、「実際に、副大統領が各州の勝利者を宣言する権限を有していたなら、まさに同じ政党が継続的に勝利するという事態になっていただろう。」

副大統領のオフィスは、イーストマンのもっともらしい理由付けによって動かされることはなかった。イーストマンは、マーク・ショートのオフィスを去るに当たって、彼のクライアント(トランプ大統領)の反応について考えていた。「彼らは、私があなた方を説得できなかったことに本当に失望することだろう」と、述べた。


行政、立法そして司法業務経験のある元共和党員高官たちはすべて、合同会議における限定された役割に関するペンス副大統領の結論に同意した
トランプ大統領のプレッシャー・キャンペーンが強くなるにしたがって、ペンス副大統領の外部弁護士のリチャード・キューレンは、合衆国第四巡回区控訴裁判所の保守派の元判事であるジョン・マイケル・ルティグの支援を求めた。イーストマンは、非の打ちどころのない保守派の実績を有しているルティグの助手をかつて20年以上務めた。

ルティグは、歯に衣を着せずに副大統領の役割に関するイーストマンのいわゆる法的分析を拒絶した。1月5日午前9時53分に投稿された一連のツイートの中で、ルティグは、彼の法的結論を明確にした。
「合衆国憲法に基づく副大統領の唯一の責任と権限は、選挙人票が投票されたとおりに忠実に選挙人票を集計することである」と、ルティグ判事は書いた。「合衆国憲法は、副大統領に対して投票された票をその一部を拒絶するかその他の何らかの方法で変更する権限を与えてはいない。」

副大統領がこの問題に関して立脚した立場に関するメディアの混乱は、前下院議長ポール・ライアンに、副大統領には一方的な権限はないとする彼の信念を共有しようとして副大統領に接触することを促すことになった。ショートもまたライアン前下院議長と話をした。そして、ショートは、特別委員会に証言をした。「私は、彼に、『ライアン議長、あなたはマイク(・ペンス)をよくご存じです。彼はそのことを十分に認識しています。私たちは、それに関してある意味では笑っています』と述べた。そして、ライアン議長は、『了解した』と言った。」
副大統領はまた、前副大統領ダン・クェールにも相談をしたが、クェールはペンス副大統領の彼の役割に関する一貫した理解が正しいと強調し、再確認した。
トランプは、ホワイトハウスでの一対一での会談とイーストマンと共に行った再度の電話で再びペンス副大統領に対してプレッシャーをかけた

トランプ大統領は同じ日に再びペンス副大統領に会うことを要求した。ペンス副大統領は、彼がなぜ大統領のプレッシャーに屈しようとはしないのかに関して公に説明するために1月6日に発表しよう計画していた声明に関しての作業を行うつもりであったことから、トランプ大統領との計画されていたランチをキャンセルしていた。

二人は、スタッフの陪席なしに二人だけで会った。我々は、トランプ大統領とペンス副大統領の1対1の会談中に何が話われたかに関する直接の証拠を持っていないが、そのことは、合同会議中における副大統領の権限の限界に関する両者間の基本的な意見の不一致を変えてはいなかった。ジェーコブは、副大統領が「決然として」会談から去ったと述べた。ペンス副大統領は、会談中に何が起こったのかについて確かにマーク・ショートに話をしているが、ショートは語られたことを特別委員会に告げることを拒否した。ショートは、ペンス副大統領の態度は「ゆるぎないものであった」と述べている。以下のボブ・ウッドワーズとロバート・コスタの著書「Peril(危機)」(日本経済新聞社刊)からの抜粋はセンセーショナルではあるが、全般的に二人の間の話し合いについてのショートの理解と一致していると、ショートは証言した。:
「 あの連中はきみにはその権限があると言っている。やりたくないのか?」トランプが聞いた。
「誰であろうともその権限を持つのはよくないと思います」ペンスはいった。「だがその権限を持つのはかなり凄くないか?」トランプがきいた。
「いいえ」ペンスはいった。「いいですか、私はこれを読みましたし、それをやる方法は見当たりません。
私たちはあらゆるオプションを使い果たしました。できる方法はすべてやり、これを避ける方法を見つけようとしました。絶対に不可能です。私の解釈は、ノーです。」
「やめろ、やめろ、やめろ!」トランプはどなった。「きみにはわかっていない。マイク、きみはこれをやれる。これをやらないのなら、もうきみの友人ではいたくない」

その日の遅い時間に、ジェーコブとショートは、ともにトランプ大統領とペンス副大統領の電話に立ち会った。イーストマンと少なくとももう一人のそれ以外の弁護士も同様にトランプ大統領の電話に立ち会った。

イーストマンは、ペンス副大統領が選挙人をあからさまに拒絶することに関して彼の考えを変えようとしていないことを認識したが、なおペンス副大統領が選挙人票を州に送り返すことを考慮するつもりがあるかどうかを尋ねた。「私は、そう思わない。しかし、私の法律顧問はイーストマン氏の言わんとすることを最後まで聞くだろう」とペンス副大統領は回答した。

ジェーコブは、1月5日にイーストマンからそれ以外の電話をもらった。ジョーコブは、特別委員会に対して、イーストマンの提案が「選挙人集計法」に違反する点に関して詳細な議論をイーストマンと行ったと証言した。イーストマンは、彼らのその時の状況をアブラハム・リンカーン大統領が南北戦争中に直面した危機に類似しているという馬鹿げた主張を頼りにした。リンカーン大統領の人身保護令状の一時停止の例をイーストマンは、引用した。イーストマンはまた、「我々は、」副大統領が州に選挙人票を送り返すことに州議会議員たちが関心を持っていることを示す州議会議員たちからの何らかの書簡を入手するように働きかけているので、「乞う、ご期待だ(stay tuned)」とジェーコブに述べた。

(「2021年1月5日:副大統領に関するニューヨークタイムズ紙の正確な記事に対して、トランプ大統領が虚偽の声明で反応した」に続く。)