トランプ前大統領は、現在、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件に関連して、連邦レベルではジャック・スミス特

別検察官が主導した捜査の結果、6月8日に米国に対する詐欺の共謀1件、公務執行妨害の共謀1件、公務執行妨害1

件、権利剥奪の共謀1件という罪状により、重罪4件で起訴されています。最終的に有罪となった場合には、詐欺

共謀が5年、司法妨害関連がそれぞれ20年、権利剥奪の共謀が10年、合わせて50年以上の禁錮刑が科される可

能性があると言われています。

 

また、ジョージア州では、フルトン郡のファニ・ウィリス地区検事の主導する捜査の結果、同州の2020年大統領

選挙において選挙結果を覆そうとして、公務員への圧力と虚偽発言をした罪を含む13件の罪状を認定され、組織

犯罪を取り締まる同州の「RICO(威力脅迫・腐敗)法」を適用されています。トランプ前大統領のジョージア州法

に基づく罪状は、RICO法に基づく恐喝(1件、最高で禁錮20年)、公職者の宣誓違反教唆(3件、同3年)、公職者

なりすましの共謀(1件、同2年6月)、第1級偽造の共謀(2件、同7年6月)、虚偽の陳述および記述(2件、同5

年)、虚偽の陳述および記述の共謀(2件、同2年6月)、虚偽文書の提出(1件、同10年)、虚偽文書提出の共謀

(1件、同5年)で、合わせて禁錮70年以上を言い渡される可能性があるとされています。(トランプ4度目の起訴、量刑は最高で禁錮700年以上に | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

連邦およびジョージア州での起訴されている罪状で有罪が確定した場合は、トランプ大統領は120年以上の禁固刑

に服さなければならないということになります。

 

そのトランプ大統領は、2024年大統領選挙においても共和党の大統領候補者として立候補すべく、現在共和党の

予備選挙に名乗りを上げており、各種の世論調査において主要な共和党予備選挙候補者の間で圧倒的な支持率を

得ております。9月6日現在の共和党予備選挙候補者のMorning Consultによる支持率は、トランプ60%、デサン

ティス氏15%、ラマスワミ―氏8%、ペンス氏6%、ヘイリー氏5%、クリスティ―氏3%、スコット氏2%となっ

ています。

 

現時点では、トランプ前大統領が2024年大統領選挙で共和党大統領候補者となる可能性が極めて大きいと言えま

す。また、バイデン氏とトランプ氏が最終的なそれぞれの党の候補者となった場合の支持率としては、9月7日付

のCNNによる調査では、バイデン氏46%対トランプ氏47%となっています。

 

そのような状況の中で、合衆国憲法修正第14条3項を適用して、トランプ前大統領の大統領選挙出馬資格をはく奪

しようとする動きが、州レベルで発生しています。2つのグループがこの動きを推進しています。「Free Speech

for People (FSFP)」と「Mi Familia Vota Education Fund」です。

 

2023年4月10、両者は、ネバダ州のフランシスコ・V・アグイラー(Francisco V. Aguilar)州務長官あてに、

「2021年1月6日の合衆国連邦議事堂襲撃に至るまでの数か月間、そして彼の支持者が連邦議事堂を襲撃してい

る間、ドナルド・J・トランプ前大統領は合衆国に対する反乱を扇動し、促進した。トランプ氏は、2024年の大統

領選挙に再び彼が立候補することを宣言した。しかしながら、トランプ氏は、合衆国憲法修正第14条に基づき、

彼が合衆国に対する反乱に関与したことを理由として、いかなる連邦の公職に関する将来の選挙に関しても立候

補する憲法上の適格性を欠いている。したがって、貴職がトランプ氏の立候補を排除する貴職の権限の行使と職

務の遂行を要請する目的で、我々は、本書簡を貴職に送るものです」と書いた書簡を送付しています。

 

また、同時に、カリフォルニア州務長官シャーリー・ウエーバー、コロラド州務長官ジェナ・グリスウォルド、

ジョージア州務長官ブラド・ラッフェンスパーガー、マサチューセッツ州務長官ウイリアム・フランシス・ガル

ビン、ミシガン州務長官ジョセリン・ベンソン、ニューヨーク州選挙委員会共同委員長ピーター・コシニスキー

とダグラス・ケルナー、オレゴン州務長官ラヴォンネ・グリフィン=バラデ、ペンシルバニア州務長官アル・シ

ュミットそしてノースカロライナ州選挙委員会の委員あてに7月12日付で同様の要請文を送付しています。

 

本ブログは、今回、ネバダ州の州務長官あてに送付された要請状の内容をご紹介します。これによって、この動

きを推進している側の背景にある考え方の理解に資することができれば幸いです。

 

〇同要請状は、上記の導入部にひき続き、「Ⅰ.合衆国に対する暴動・反乱者に対する資格はく奪条項は、トラ

ンプが大統領職に就く資格をはく奪する」として、次のように趣旨を展開しています。

 

「反乱者・暴徒の資格はく奪条項として知られている合衆国憲法修正第14条3項は次のとおり規定している。

『連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会の議員、または州の執行部もしくは司法部の官職にある者として、

合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしながら、その後合衆国に対する反乱または暴動に加わり、または合衆国の敵

に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院および下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、

武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない。ただし、連邦議会は、各々の院の3 分の2 の投票

によって、かかる資格障害を除去することができる。』―中略―この条項は、ドナルド・トランプに適用され

る。合衆国の官吏として合衆国憲法を擁護することを宣誓し、その後、法と判例によってその用語が定義されて

いる1月6日の反乱・暴動に「関与」したことで、トランプは、連邦議会の両院における3分の2によりその資格は

く奪から解除されない限り、大統領職を含む合衆国のいかなる官職を保有する資格を保有していない。」

 

〇同要請状は次に、「Ⅱ 州務長官は同条第3項を執行することが可能である」としている。

 

「州は、いかなる新たなまたは特別の連邦法の必要はなく、第3項を執行することが可能である。『Free Speech

For People』とインディアナ大学ロースクールのジェラルド・マグリオッカ教授による報告書で詳細に説明され

ているように、州はいかなる新たな法律の必要もなく、州がその他の憲法条項や憲法修正第14条のその他の条項

を常時執行するように、同条第3項を執行することができる。州は、同報告書が説明しているように、合衆国憲法

を執行するために連邦議会の許可を必要としてはいない。その文言、オリジナルな公的意味、第3項を執行した南

部再建時代の歴史のいずれも、合衆国憲法のこの部分を州が執行するために連邦議会からの許可が必要であると

いうことを示唆していない。逆に、南部再建時代の歴史は、連邦議会、州裁判所そして南部連合支持の反乱者で

さえもすべてが連邦の特別の執行法なしに第3項が執行されると理解していた。実際に、州は、繰り返しまさにか

かる状況において第3項を執行した。

 

実際に、2022年には、異なる2州(ジョージアとニュージャージー)が、2021年1月6日の反乱への関与者に対して

第3項による異議申し立てについて審理した。これらの異議申し立てはある政治家の公職に対する憲法上の資格

に異議を申し立てる標準的な州法上の手続きに依拠していたことから、いかなる特別な連邦法も必要とはしてい

なかった。

 

さらに、大統領選挙候補者に対して、候補者たちがこれらの資格要件を満たしていることを証明することを

州は義務付けることができ、彼らがこれらの資格要件を満たしていることを証明できない場合、彼らを排除する

ことができる。ゴーサッチ判事が2012年に連邦控訴裁判所で「明示的に確認したように」、政治手続きに関する

完全性と実際的な機能の保護に対する州の合法的な利益により、公職に就くことから憲法上禁止されている候補

者を大統領選挙から排除することは認められている。

候補者が生まれついての合衆国国民ではない場合、あるいは年齢要件を満たしていない場合、州がこれらの候補

者を大統領選挙の候補者となることから当然排除することができるように、州は、合衆国憲法の擁護を誓約した

が、反乱に関与した候補者を大統領選挙への立候補者となることを排除すべきである。

このケースは、裁判所が合衆国憲法に定められているもの以外の立候補の制限を追加しようとした州の取り組み

を拒否した他のケースとは同様ではない。このケースでは、候補者たる適格基準は合衆国憲法それ自体によって

課されているものである。合衆国憲法修正第14条3項は、1787年に最初に課されていた大統領資格制限を超えた追

加的な資格制限を加えたものである。

 

言い換えるなら、1868年以降、大統領となる資格には、出生による市民権保持者であること、年齢(35歳以上)

さらに国内在留期間(14年)という要件に加えて、合衆国憲法を擁護することを宣誓した後に合衆国に対する反

乱に関与していないことを要件に含んだということになる。そして、トランプは、その資格要件を満たしていな

い。」

 

〇次に、同要請状は「Ⅲ.州務長官として、貴職はネバダで第3項を執行する」として、以下のように指摘してい

ます。

「貴職は、州の立候補資格判定手続きの一部として、公職に対するある候補者が過去に合衆国憲法を擁護する宣誓を行い、その後、次に合衆国に対する反乱あるいは謀反に従事したことから、ネバダ州での大統領選挙候補者なる資格があるかどうかを判定する権限と責任を有している。一般論として、大統領選挙の投票用紙からその不適格候補者を除外する権限は、大統領選挙プロセスにおける連邦議会と各州との間の相互作用に基づき付与されているものである。州務長官等の官吏を含む州当局は、そのプロセスの中で極めて重要な役割を果たすが、合衆国憲法に違反して行動することはできない。

ネバダ州において、大統領予備選挙に適用される法律(2年前に制定された)は、『州務長官は、各郡書記官にその氏名が大統領予備選挙の投票用紙に記載されなければならない大統領選挙の適格な候補者それぞれついての氏名、帰属政党および郵送先住所を送付するものとする』と規定している。そして、『適格候補者』は、『合衆国憲法と合衆国の法律および主要な政党の規則に従い合衆国大統領のある政党の候補者となる資格を有している者』を意味する。こうして、合衆国憲法に基づきその資格をはく奪された個人は、ネバダ州法に基づく『適格候補者』ではなく、投票用紙上にその氏名を列記されるべきではない。

さらに、ネバダ法は、貴職を中立的立場に置くことを行っていない。ある大統領予備選挙候補者が『適格候補者』であるか否かの最初の判定を行う権限は、法律によって他のネバダ州官吏に付与されてはいない。適格候補者名簿にトランプの氏名を書いて郡書記官に送付することは、トランプが『適格候補者である』ということと彼の『氏名が投票用紙に記載されなければならない』ということを公式に主張していることとなるであろう。そして、貴職の就任宣誓に基づき、貴職は、反乱者が公職を得ようとする試みを 手助けすることとなる何らかの措置を講じるために貴職の公的権限を行使することはできない。

合衆国憲法は、合衆国の最高法であり、貴職は、合衆国憲法第6章2項・3項を擁護する誓約を行っている。反乱者として知られている者の氏名が投票用紙上に記載されることを許すことは、合衆国憲法を擁護する貴職の責務と宣誓と矛盾している。」

〇同要請状は、さらに「Ⅳ.第3項は、だれか他の者がこの問題を最初に裁定することを貴職が待つことを要件にしてはいない」として、第3項を州務長官が直接執行することが可能であることを指摘しています。

「第3項は、貴職がトランプの立候補資格を判断する前に連邦議会、裁判所あるいはその他の誰かがトランプの立候補資格の問題に対する判断を下すことを必要とはしていない。憲法修正第14条3項は、反乱に関与した官吏をいかなる具体的な判定者がその判定を行うことを必要とすることなく、公職に就く資格をはく奪するものであり、憲法の諸規定は、他の法令を待たずに施行されるとみなされている。

さらに、憲法修正第14条3項は、前もって刑事上の有罪判決を要件にしていない。それとは反対に、第3項に基づき資格をはく奪された者を含む多くの元南部連合支持者の多くは、決していかなる犯罪でも起訴されてはいなかった。‐中略‐2022年、ジョージア州裁判所は、有罪判決が資格はく奪条項の発動に必要であるとは考えられていないことを確認した。

実際に、州法が貴職に対してトランプ氏の氏名を列記することを義務付けていると主張している場合でも、合衆国憲法は、貴職に反乱者を正当な連邦公職に候補者として承認するか認定することを表向き義務付けているいかなる州法にも優越している。州議会あるいは州憲法を含むいかなる州の権威も合衆国憲法を無視することを州公務員に強制することはできない。州法の「いかなる相反する義務」も、相反がある場合には、連邦法に譲歩しなければならない。貴職に対して憲法上の資格に欠けている反乱者が公職に就こうとすることを支援するために貴職の公式権限を誤用するよう義務付けているとするいかなる州法も、憲法修正第14条に対して譲歩しなければならない。

 

さらに、上院が彼の弾劾裁判においてトランプを有罪にできなかったという事実は、関係がない。57名の上院議員がトランプを反乱の扇動で有罪とするために投票をした。無罪に投票した43名の上院議員のうち22名が彼らの票を上院が元公務員(辞任したトランプ大統領を意味する)を裁く権限を欠いている彼らの信念に基づいて票を投じ、トランプ氏を批判するか、その本案に関するいかなる見解も述べることはなかった。したがって、ほぼ確実に少なくとも67名以上の上院議員がトランプは反乱の扇動で有罪であるということに同意していると言える。

しかし、たとえそうではないとしても、憲法修正第14条3項におけるいかなる記述も、合衆国上院議員の3分の2が最初に予備的な判断を行わなければならないとは述べていない。それとは反対に、第3項は、資格はく奪を排除するためには上院議員の3分の2の票が必要であると定めている。

最後に、貴職の判定が、トランプから法の適正な手続きを奪うことにはならない。彼は裁判所で不利な判定に異議を申し立てることができる。公職者の資格をはく奪するための民事訴訟に対する前提条件として有罪判決を要件とするのではなく、連邦議会はその反対を行い、資格はく奪条項を無視した者に対する刑事罰を課している。」

〇 同要請状は、「Ⅴ.結論」として、以下のポイントを指摘しています。

「合衆国憲法を擁護するという貴職の宣誓と州務長官としてネバダ州有権者によって貴職に信託された重責は、貴職が大統領予備選挙において「適格候補者」の名簿からトランプの名前を排除することを強制するものである。

しかし、トランプが候補者宣言を提出するまで待つよりは、予備選挙が近づきつつあるという緊急性があることから、我々は、貴職がこの重要な問題に対して、直ちに取り組むことを要請する。盗まれた選挙という「大きな嘘」を奨励し、反乱を奨励し、扇動し、彼が暴徒に対して中止するために介入すべきという緊急の要請を拒否することで反乱を促進し、包囲された議事堂警察を州兵が支援することを積極的に阻止した彼の部下を監督したトランプの行動は、彼を大統領を含むいかなる連邦公職にふさわしくない者にしている。」

 

〇 以上は、ネバダ州の州務長官あてに提出されたトランプ氏の大統領選挙の立候補資格を排除することを要請する書簡の内容の一部を紹介しました。実際に同州の州務長官がどのような対応をしたのかについては、現時点では不明です。また、9月6日の時点で、コロラド州の州務長官に対して、6名の共和党員と無党派層の有権者から修正憲法第14条3項を根拠にトランプ氏の氏名を同州が実施する大統領選挙の投票用紙から排除することを求める訴訟が提起されています。同州務長官は、早速、同訴訟に対して州裁判所が行う判決を待つとの判断を示しています。この動きに何らかの顕著な動きが出てきた時点でさらに続報をお送りできればと思います。