2021年1月5日:副大統領に関するニューヨークタイムズ紙の正確な記事に対して、トランプ大統領が虚偽の声明で反応した
1月5日の夜、「ザ・ニューヨークタイムズ」紙が、「ペンスは、トランプに対して自分には選挙結果を変える権限はないと述べた」という見出しの記事を掲載した。同紙は、ホワイトハウス内で生じている緊張に関して報道し、前日に大統領執務室内で発生したトランプ大統領とペンス副大統領との間での会話に関しての概要を伝えられた人々の発言を引用した。「ペンス副大統領は、火曜日(1月4日)に、ペンスにはジョー・バイデン副大統領の大統領選挙の勝利の連邦議会による認証を阻止する権限があるというトランプ大統領の根拠ない主張が行われたにもかかわらず、自分にはその権限があるとは信じていないとトランプ大統領に伝えた」と、同紙は報じた。
同紙の記事は、その日の夕刻およそ7時36分ごろ公表された。ジェーソン・ミラーは、トランプ大統領がその記事を読んだことを確認するために彼に電話をした。トランプ大統領は、ミラーと少なくとも二回話をした。一度目は8時18分であり、二度目は9時22分だった。トランプ大統領は、ジェーソン・ミラーとの二目の電話を終わった直後、ペンス副大統領と話をすることを要求した。トランプ大統領とペンス副大統領は、午後9時33分から9時41分まで話をした。トランプ大統領はまた、特にスティーブ・バノンとイーストマンとも話をした。
1月5日の午後9時58分、トランプ大統領は、タイムズ紙の記事に反論を行うジェーソン・ミラーに口述させた声明を発表した。トランプ大統領は、彼の短い声明の中で繰り返し嘘をついた。トランプ大統領は、その記事が「フェークニュースだった」と主張した。それは、フェークニュースではなかった。トランプ大統領は、彼とペンス副大統領が「副大統領には行動する権限があることに全面的に合意した」と主張した。二人は合意していなかった。トランプ大統領は、大統領選挙が「違法であった」と主張した。そうではなかった。トランプ大統領は、その後、翌日に関するペンス副大統領の選択肢を明らかにし、イーストマンの理論を要約した。:
「我々の副大統領には、合衆国憲法に基づくいくつかの選択肢がある。彼は選挙結果の認証を行わないか、あるいは変更と認証を求めてそれらを州に送り返すことができる。副大統領はまた、違法で不正な結果の認証を行わず1州1票の集計を行うためにそれらを下院に送り返すことができる。」
これは、世論が副大統領の固い決心を何らかの形で揺さぶることになることを頼りにした、副大統領の立場を誤って判断しようとしているあからさまな試みでもあった。トランプ大統領は、その時点で、彼とペンス副大統領が決して「全面的に同意していなかった」ということを十分に承知していた。副大統領の法律顧問のグレッグ・ジェーコブはその声明に衝撃を受けた。「副大統領は、その日彼に要求されていた措置を講じる権限があるという主張に同意していなかった」と、後日、ジェーコブは特別委員会で証言した。マーク・ショートも同様に憤り、「協議なしに副大統領の見解に関して事実を曲げた声明が出された」と、彼の不満を強く表明するためにジェイソン・ミラーに電話をした。
ペンス副大統領は、「実際に自分が発言していないことを発言したとする声明がトランプ大統領から発表されたことに明らかにいらだち」、大統領の声明とは反対に彼自身の声明を発表することを検討した。ペンスとショートは、最終的に、既に深夜であったことでその効果はない、翌日に予定していた「親愛なる同僚へ」と題したペンス副大統領書簡で問題は解決されるだろうという結論に達した。
2021年1月5日:バノン、ペンス副大統領に対するプレッシャーを公然と強化
トランプ大統領が副大統領のイーストマン理論に対する同意に関して事実を曲げた声明を発表した一方で、トランプ大統領の政治アドバイザーを務めたり、やめたりしていた、スティーブ・バノンは、ペンス副大統領に対するトランプ大統領のキャンペーンに応じるよう圧力を加えた。バノンは、いわゆる副大統領の権限について語ることで大統領が広め続けた公然たるプレッシャーを繰り返した。特別委員会は、バノンが1月5日に少なくとも2回トランプ大統領と話をしたことを電話記録から把握している。
2021年1月5日の間に、バノンのポドキャスト「War Room: Pandemic」のエピソード、バノンそして彼のゲストたちは、公然とペンス副大統領を非難した。バノンは、ペンス副大統領に代わり、グラスレー上院議員が選挙人団票の集計を主宰することになると主張する間違った新聞記事を引用した。バノンと共同でホストを務めているラヒーム・カッサムは、ペンス副大統領に対する公然たる圧力を自分の手柄にした。「ここ数週間、ペンスに焦点を当ててきた者がいたことを思い起こして欲しい。いいかな?それは、ラヒーム・カッサムだ。」そして、その後両名は、昨夜のジョージアでのトランプ大統領の演説に関して話し合った。「合衆国大統領は昨晩、君のアドバイスを受け入れた。そこで一本の路線を示した」とバノンは述べた。それに対して、カッサムは応じた。「そして、路線が継続されている。」
多数のツイッターでのフォロー件数を有しているオルタナ・ライト(新しい右翼)のパーソナリテイーであるジャック・ポソビエックは、彼らの視聴者のメンバーが「ペンスはドナルド・トランプを裏切るだろう」と述べているのを引用し、割って入った。これに対して、バノンは、「プレーを開始し、継続しよう」と述べた。
この「プレー」は 、1960年代に「ナショナル・フットボール・リーグ」において展開された有名なプレーの名称を借りた、1月6日の政権移行を妨害するプランのバノン版「グリーン・ベイ・スイープ」であった。スティーブ・バノンのプランの政治バージョンは、2020年大統領選挙の正当な結果を妨害することを意図したものであった。
バノンの「グリーン・ベイ・スイープ」の作戦は、大統領通商担当補佐官であったピーター・ナヴァロから得たものであった。ナヴァロは、特別委員会に対する協力を拒否し、その後、議会侮辱罪で起訴されている。ナヴァロは、彼の著書「In Trump Time: A Journal of America’s Plague Year」でバロンの作戦がどのように展開されるかに関して十分に説明してはいないが、ナヴァロは、ペンス副大統領は(バイデン勝利の)認証を遅らせるために「彼の憲法上の権限を行使することとなる「クオーターバック」として期待されていた、と書いている。ナヴァロは、彼自身の役割は「慎重に不正と多数の選挙違反について立証すること」であったが、バノンの役割は、この情報をどう利用するのか、「レシピ」を見つけ出すことであったと書いた。
ナヴァロの話は、トランプと彼の忠臣たちがペンス副大統領になぜそれほどこだわったかを説明するものであった。彼らは、ペンス副大統領がトランプ大統領を大統領の職に残すための最後の希望であるみなしていたのだった。ナヴァロは、いわゆるペンスの「裏切り」について書いている。明確な文で、ナヴァロはペンス副大統領をローマ時代の政治家でユリウス・カエサルの暗殺者として有名なブルータスに例えている。ナヴァロは、次のように書いている。:
「1月6日はマイク・ペンスの最も素晴らしい日となるか、彼とトランプの政治的生涯の終わりとなる『ブルータスよ、おまえもか』という反逆の日となるだろう」と、この寒い重大な日に私は自問した。
これらのトランプの仲間たちの目標は明白であった。選挙結果の転覆である。この取り組みに対する参加者による発言は、その念頭にいくつかの異なる大詰めに関する戦略があった。一つは、副大統領に最終的にアリゾナ、ジョージア、ペンシルバニアそしてその他の州の選挙人団の票を一方的に拒否させ、その後、トランプが実際に提出された選挙人の過半数を勝利したと単純に宣言させることであった。もう一つの主要な可能性は、これらの州の選挙人団票をペンス副大統領に「拒否」あるいは「返送」させ、選挙人団プロセスに過半数の票の勝利者がいないと宣言させ、これによって合衆国憲法修正第12条の偶発事態による選出を発動させるというものである。これは、下院議員が1人1票をベースにしてではなく、合衆国憲法修正第12条に基づき1州1票をベースにして大統領を選ぶということを意味した。ドナルド・トランプのストラテジストたちは、州別での連邦議会下院の代表構成は、ペンシルバニアの党派別構成が共和党対民主党は9名対9名でカウントされないが、その残りの州の党派構成は共和党が多数を占めている州が27州に対して民主党が多数を占めている州が22州となっていることを強調していた。
[訳注:このシナリオによれば、共和党候補者が27州票、民衆党候補者が22票となり、下院議会でドナルド・トランプが大統領選挙勝利者に選出されることになるはずであった。トランプ大統領とその仲間は、最終的には、両院合同会議で選挙人団票をベースにした一般選挙(有権者による選挙)の結果を無効にするようペンス副大統領に行動を起こさせ、その後、修正第12条による下院での大統領選出という方法でトランプ大統領を再選させることを念頭に置いていたものと思われる。
『合衆国憲法修正第12条』・・・。上院議長は、上院議員および下院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算する。大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない。ただし、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1 票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の3 分の2 の州から1 名または2 名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。・・・・』]
(「5.3トランプ大統領と彼の仲間は1月6日に副大統領に対する圧力を行使し続け、彼の生命と我が国の民主主義を脅かした」に続く。)