『ロバチェフスキーの世界』リワノワ
非ユークリッド幾何学の発見に纏わる数学史。 物事の本質を見極める人の目がそこにある。
数学(他の学問も)はさまざまな時代の人の発見や研究が積み重なり、今に至っている。その中で大きく貢献し名声を得た数学者も居れば、才能に満ちていても世の中に知られぬまま一生を終えた者も……。それを含めて現在の数学がある。そんな想いに包まれる本。作者の視点も秀逸。
『虚数の情緒―中学生からの全方位独学法』吉田武
- 吉田 武
- 虚数の情緒―中学生からの全方位独学法
事典のような分厚い本だ。持って帰るのも一苦労だとわかっていたが、どうしても買いたくなった。ブックフェアで訪れたあるブース。こんなに太い数学の本もあるんだ、と興味本位で手に取ったが、そこには数学だけでなく、物理、音楽、文学……学問のあらゆる分野が内包されていた。専門書のように狭い範囲をテーマにしているのではなく、人生そのものをテーマにした本なのだ。野球のバットスイングについても考察されているし、音の周波数についても興味深い記述が……。ドラえもんの四次元ポケットを覗いているような気分だ。ああ、どこでもドアがあったら、この重い本と自分の身体をまとめて一瞬にして部屋に持ち帰ることができるのに……。空想はどこまでも進む。そんな本。
レジに足を運んだとき、通りすがりの人に「あっ、これ、いい本だよ。君、いい本買うね」と声をかけられた。さすが見ている人は見ているのだ。この本の魅力を知っている。口こみで本の評判が広がってゆく――なんて素晴らしい。レジの担当者も、これはお薦めと太鼓判を押していた。この本に出合えた不思議な偶然……いや必然?を感じた。
『黄金比はすべてを美しくするか?』マリオ・リヴィオ
- マリオ リヴィオ, Mario Livio, 斉藤 隆央
- 黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語
黄金比は興味深いテーマだ。美しい長方形の比率である。もちろんそれ以外にも重要な意味がある。正五角形にも出てくるし、もともとは線分を美しく分ける比率のことだった。数学には美しさと不思議さを兼ね備えた数字がたくさん出てくる。深く理解するのは難しいが、楽しむことはできる。
『枯葉の中の青い炎』辻原登
- 辻原 登
- 枯葉の中の青い炎
- 6篇の短編小説集。スタルヒンの通算300勝をモチーフにした表題作、中島敦が出てくる場面はウマイ!と思ったが、結末の説得力と納得度に関しては満足に至るところまでいかなかった。私の読解力不足かもしれない…。
『素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ, 冨永 星
- マーカス・デュ・ソートイ, 冨永 星
- 素数の音楽
数学は音楽である。そう断言はできないにしても、少なくとも数学にはリズムがある。数字の配列にはリズムがある。1とその数自身しか約数を持たない“素数”は、楽譜に書けない不規則なリズムを有しながらも、人々を魅了して止まない。数字の原子と呼ばれる“素数”が内包する摩訶不思議な魅力をテーマにした本である。主役は“素数”だが、この本は数学全体の美しさを語っているのであり、そこに魅力を感じる人間の存在そのものを歌っているようにも聴こえる。耳を澄ましてみれば……、視覚ではなく聴覚で、数学の世界を楽しもう。