シナリオ【水の星を旅する男】 7 | text of KATARA

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小説、シナリオ、エッセイなど。

ストーリーボード【水の星を旅する男】完結しました。

 


 

●町の遠景

 

日没後のシルエット。海は凪。

 

 

 

 

●船着場

 

ガイズの船の横にジマーの買った船がある。

 

ジマーが船内を整理し、ガイズが手伝っている。一段落してガイズが外へ。

 

ガイズ「(桟橋にいるマナンの背中を見つけて近づき)フィリーは?」

 

マナン「(振り向いてガイズの船を指さし)本を見ながら寝てた」

 

ガイズ「そう」

 

ガイズの船の船室でフィリーが寝てしまっている。インサート。

 

ガイズの声「まぁ、一晩ぐらいいいんじゃないかな」

 

マナン「(うなずいて)起きないだろうし(ため息をつき海を見る)」

 

ガイズ「疲れた?」

 

マナン「ううん」

 

ガイズ「元気ない」

 

マナン「――」

 

ガイズ「夕食まずかった?」

 

マナン「おいしかった。ごちそうさま」

 

ガイズ「いやぁ」

 

マナン「火を使った料理は久しぶりで」

 

ガイズ「ああ、だと思って」

 

マナン「フィリーははじめて」

 

ガイズ「みたいだね」

 

マナン「これでも料理屋の娘だから」

 

ガイズ「うん?」

 

マナン「つくれないわけじゃないの。でも家では火を使えないし」

 

ガイズ「あぁ――」

 

マナン「あんなによろこばれると――別にいいんだけど」

 

ガイズ「贅沢させたかな」

 

マナン「そうね。いろいろ知って、教えてもらって、どうなってくのかちょっと心配」

 

ガイズ「でも、いろいろ知るのは悪くないでしょ」

 

マナン「――」

 

ガイズ「子供は特に、知りたがる。世界のこと、不思議なこと」

 

マナン「余計なことだし」

 

ガイズ「そうかな」

 

マナン「あそこで生きてくこと、それだけで十分。魚や貝や、海のこと、天気のこと」

 

ガイズ「でも世界はあそこだけじゃない」

 

マナン「――」

 

ガイズ「こんな町だってそう遠くない場所にある」

 

マナン「離れて欲しくないの。私たちには娘がすべて」

 

ガイズ「――」

 

マナン「あなたにはわからないでしょうけど」

 

ガイズ「いつかは離れてくじゃない、子供は」

 

マナン「――」

 

ガイズ「そのとき困らないように――いずれはひとりになるんだ。親がずっといられない」

 

マナン「――」

 

ガイズ「教えないで、縛るのいいことかな。何も知らないよりは」

 

マナン「私が何も知らないしね」

 

ガイズ「そんなことは」

 

マナン「フィリーに言われた。『母さんなんにも知らないでしょ』」

 

ガイズ「――そう」

 

マナン「バカにして――されてもしょうがないけど」

 

ガイズ「――」

 

マナン「そうね。縛っちゃダメよね。親の勝手」

 

ガイズ「悪かった、いろいろ」

 

マナン「(首を振る)」

 

ガイズ「あと1日だ。明日送り届けたら、俺は行く」

 

マナン「え?(と見る)」

 

ガイズ「船を買うまでの約束。フィリーは心配ない」

 

マナン「――」

 

ガイズ「じゃ、ゆっくり休んで(自分の船に行く)」

 

マナン「――」

 

 

 

 

●ガイズの船

 

船室で寝ているフィリー。乗船したガイズが腰を下ろし、フィリーの寝顔を見つめる。F.O.

 

 

 

 

●船着場(早朝)

 

子猫が1匹いる。一方に気づく。

 

ガイズの船から伸びをして出てきた寝起きのフィリー。猫を見つけてアッとなる。

 

逃げていく子猫。追うフィリー。

 

 

 

 

●町中

 

住居の隙間を猫が行く。フィリーが追う。

 

狭いスペースに来ると子猫の兄弟たちが母猫の元に集まっている。その母猫にエサをやっている少女は昨日フィリーと目が合った娘、ウィラ。

 

フィリー「あ」

 

ウィラ「(驚くが)おはよう」

 

フィリー「ネコ!」

 

ウィラ「そう、たくさん生まれて」

 

フィリー「かわいい」

 

ウィラ「さわったら?」

 

フィリー「うん(そばにしゃがんで恐る恐る手を伸ばす)はじめて」

 

ウィラ「そうなの?」

 

フィリー「あったかい」

 

ウィラ「持ってっていいよ」

 

フィリー「え?」

 

ウィラ「どれでもあげる」

 

フィリー「いいの!」

 

ウィラの兄グルー「誰としゃべってんだ。仕事手伝えよ(とそばの家から出てきて)わぁ(とフィリーに驚く)」

 

ウィラ「(グルーに)いいよねあげてもネコ」

 

グルー「あ、ああ、全然」

 

フィリー「えー、どれにしよ(1匹を持ったりする)でもダメだ。ひとりにするのかわいそう」

 

ウィラ「ひとりって(笑い)1匹でしょ」

 

フィリー「え?」

 

グルー「また来ればいい」

 

ウィラ「そうね。いつでも来なよ」

 

フィリー「うん――うん!」

 

 

 

 

●船着場

 

ガイズの船とジマーの船が出る。

 

フィリーの声「おじさんネコ見たよ。ネコ。かわいいねぇ。フワフワしててあったかくて」

 

 

 

 

●ガイズの船

 

ガイズ「(操船しつつ)どこで見た?」

 

フィリー「あっちのね(と町を振り向き)あ(と気づいて手をあげる)」

 

ガイズ「(その方を見る)」

 

船着場を来るウィラとグルー。仕事の隙を見て来たところで作業着姿。手を振る。

 

フィリー「(手を振り返す)」

 

ガイズ「ともだち?」

 

フィリー「ともだちって?」

 

ガイズ「仲よくなった?」

 

フィリー「うん、ネコ見せてもらった。また来なって(手を振り続ける)」

 

ガイズ「そう――」

 

 

 

 

●ジマーの船

 

帆船。ジマーが操船しマナンが手伝う。

 

ガイズの声「お母さんと喧嘩した?」

 

 

 

 

●ガイズの船

 

フィリー「(表情くもり)なんで? なんかおじさんに言った? 母さん」

 

ガイズ「いやぁ、見ててなんとなく」

 

フィリー「そう――」

 

ガイズ「俺は母親知らなくて」

 

フィリー「そうなの?」

 

ガイズ「一緒に住んだことない。だからいいもんか悪いもんかも」

 

フィリー「うん――」

 

ガイズ「母親にもよるんだろうが」

 

フィリー「つまんないことうるさいんだ。理由もなしにああしろこうしろ」

 

ガイズ「うん――」

 

フィリー「なんにも知らないのに」

 

ガイズ「そんなこと言うもんじゃない」

 

フィリー「――ずっと家にいて働いてばっかで、何が楽しいんだろ」

 

ガイズ「――」

 

フィリー「私はおじさんみたいになりたいな。船で世界中を旅して、いろんなものを見て、楽しそう」

 

ガイズ「そればっかりじゃないが」

 

フィリー「そお?」

 

ガイズ「ずっとひとりだ。寂しくもなる」

 

フィリー「ふーん」

 

ガイズ「ひどい目にも」

 

フィリー「でもやめないのは、いいことあるからでしょ?」

 

ガイズ「まぁ」

 

フィリー「寂しいなら一緒に行こうよ、私と一緒に。連れてって」

 

ガイズ「――」

 

フィリー「ね、それがいいよ。いい考えでしょ?」

 

ガイズ「お母さんとお父さんはどうする」

 

フィリー「どうって――たまには帰ってくればいいし」

 

ガイズ「俺は今日でお別れだ」

 

フィリー「え?」

 

ガイズ「フィリーの家に着いたら、もう行く」

 

フィリー「――どこ?」

 

ガイズ「どこかな。とにかく遠く。また来るかはわからない」

 

フィリー「――」

 

ガイズ「だからフィリーは連れてけない」

 

フィリー「そんなすぐに――もう少しいればいいじゃない」

 

ガイズ「――」

 

フィリー「着いたら夕方でしょ。何も今日とか――遺跡にはまだいろいろあるかもしれないよ」

 

ガイズ「見つけるのはお父さんだ。潜水服を買った。フィリーが手伝うんだ」

 

フィリー「――」

 

ガイズ「あとはもう自分たちで」

 

フィリー「――」

 

 

 

 


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