シナリオ【逃避行】 完結 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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ビデオコンテの第二回は7月29日に配信しました。

 

 


 

●森の中

 

走る馬上でノアが横に気づき、サクに知らせて指をさす。

 

サクが見ると樹々の隙間からむこうの山。急激にズームインし、追手たちが隠れ家に向かっている。

 

サク「遠すぎる(馬を引き返させる)」

 

 

 

 

●隠れ家

 

カイを先頭に重装備の山賊たちが馬にまたがって森に走る。見送る人々のなかにキナ。

 

 

 

 

●森の中

 

山道を進む追手たち。

 

 

 

 

●そばの山中

 

サクたちが来る。追手たちを見ていて馬をとめる。追手たちは風上にいる。周囲の地形を見まわし、

 

サク「これ以上は近づけない。追い込まれる」

 

ノア「(荷物からサクにもらった手鏡を出す)」

 

 

 

 

●森の中

 

進む追手たちのそばをチラつく反射の光。追手たちが気づいて「なんだなんだ」と探す。そばの森の中で光るもの。サクとノアがいる。

 

追手たち「いたぞ!」「娘と男だ!」「追え追え!」

 

逃げるサクとノア。追う追手たち。合図の笛を鳴らす。案内役にされた厩舎の主人はビビッて馬を飛び降り引き返す。

 

 

 

 

●別の森

 

先頭のカイが手で合図し一団の馬をとめる。遠くで聞こえる笛。その方向を見て再び走りだす。

 

 

 

 

●山道

 

サクが走りながらノアを鞍の前方に移動させる。

 

追いついてくる追手たち。矢を射る。

 

サクたちをかすめる矢。サクは山を駆け降り草地へ。

 

別方向からも迫る追手たち。槍を構えて来る。

 

しかし突然馬が転び、奥から来る山賊の一団。追手たちに向けて矢を放つ。

 

それに気づくサクとノア。

 

散り散りになる追手たち。走る馬上での戦闘。斃れていく追手。そして山賊。

 

サクは隙を見て森に逃げ込む。疾走し追手と山賊を引き離す。

 

その目の前に突然薮から出てくるカイ。

 

サクが馬をとめるが勢い余ってノア共々前に投げ出される。

 

カイ「(太刀を抜いて倒れたふたりに向け)どこに行くつもりで?」

 

 

 

 

●森の中

 

馬で来る追手ふたり。とまって振り返り、

 

追手A「あとの者は」

 

追手B「やられました」

 

追手A「クソ」

 

追手B「あれを(と指さす)」

 

その方向に馬にまたがったサクとノアが来る。ふたりも追手に気づき逃げる。

 

追手A「逃がすな」

 

追う2頭。そのあいだに割り込むカイの馬。カイは後ろの追手Bに矢を構える。追手Bは慌てて森の中に逸れる。

 

追手A「(背後で山賊の笛の音が響き振り向く。仲間がいないことに気づき)クソ(馬に鞭を打ってスピードアップ)」

 

川辺に来るサクたち。急流。流れに沿って川下へ。

 

追手が追いながら矢を射る。

 

サクたちの馬の尻に当たって馬は転ぶ。前に投げ出されるサクとノア。馬は森に逃げいてく。ふたりは手を取り合い川下に走る。

 

しかし川は途切れて滝。崖。見下ろすと霧の吹き上がる滝壷。

 

追手Aが馬をとめ、馬上で弓矢を構える。

 

それを振り向くサクとノア。

 

追手Aが狙いを定めた時、背後からの矢がかすめる。追手Aは振り向き背後に構える。

 

カイが次の矢を構えつつ馬をとめる。カイと追手Aの睨み合い。それを注視するサクとノア。後ろは断崖。

 

カイが馬の脇腹を蹴る。走りだした瞬間矢を射る。

 

矢は追手Aをかすめ、その先のサクとノアもかすめてふたりは悲鳴を上げ滝に落下。

 

追手Aが一瞬振り向き、すぐカイに向き直って矢を射る。

 

カイは馬と共に森の中へ。

 

川沿いを追手Bが馬に乗ってくる。それを追って山賊たちの馬2頭が来るが、追手Aが弓矢を構えるとひるんで引き返す。

 

それを見送りつつ追手BがAのそばに馬を寄せ、

 

追手B「娘は」

 

追手A「(弓矢の構えをやめ馬を降りる。崖に向かう)」

 

追手B「(馬を降りて続く)」

 

追手A「(崖上から見下ろす)」

 

追手B「(横に来て覗き)ここに?」

 

追手A「真っ逆さまだ。この目で見た」

 

白く泡立つ滝壷。霧の奥に水面が見える。しかしサクやノアの姿はない。

 

追手B「じゃあ今度こそ」

 

追手A「あれを持って行こう(と指さす)」

 

水中にノアの上着が漂い川下に流れる。

 

追手A「それで引き揚げだ(と馬に戻る)」

 

追手B「(続きつつ)面倒かけやがる」

 

崖の上の追手AとBが馬にまたがり、川に下りるための場所を探して森に行く。

 

 

 

 

●隠れ家(夜)

 

広場の火の前で命を落とした仲間の弔い。死者の妻子や母が泣いている。

 

離れて見ているカイ。

 

その後ろにキナ。

 

カイの声「どうした。なぜあけない」

 

 

 

 

●記憶・ノアの部屋

 

カイ「(通路のキナを振り向き)姫は。どういうことだ」

 

キナ「(目を伏せたまま)出ていきました」

 

カイ「どこに」

 

キナ「サク様と共に」

 

カイ「――いつ」

 

キナ「今朝です」

 

カイ「(部屋を出て通路を急ぐ)」

 

キナ「待って下さい(と腕をつかみ引きとめ)今はまだ待って」

 

カイ「今は? どういう意味だ」

 

キナ「――(目をそらす)」

 

カイ「何を隠してる」

 

 

 

 

●現実・隠れ家

 

カイが弔いを見ている。

 

カイの声「どこに行くつもりで?」

 

 

 

 

●記憶・森の中

 

カイ「(地面に投げ出されたサクとノアに太刀を向けたまま)追手を惹きつけて逃げると聞いたが――逃げられると? ここまで逃げても見つかったのに」

 

ノア「死んだように見せかける」

 

カイ「どうやって」

 

ノア「――力を貸して」

 

カイ「そのあと戻ってくれますか」

 

ノア「――」

 

カイ「戻ると約束を(と太刀の刃を突きつける)」

 

ノア「――」

 

サク「――」

 

カイ「なぜ――仇を討とうとしない」

 

 

 

 

●現実・隠れ家

 

弔い。見ているカイ。

 

ノアの声「生きて」

 

 

 

 

●記憶・森の中

 

ノア「生きて」

 

カイ「死んだ者を忘れて? 忘れられると?」

 

ノア「命をつないで」

 

カイ「命など惜しくない!」

 

ノア「語り継いで」

 

カイ「――」

 

ノア「死なずにずっと――みんながそれを望んでるはず」

 

カイ「(背を向け涙を拭く)」

 

サク「――」

 

カイ「(一方を指さし)この先に川がある。流れの先に滝があります」

 

 

 

 

●モンタージュ

 

崖の上に追いつめられるノアとサク。見下ろすと霧の吹き上がる滝壷。

 

カイの声「落ちれば死んだとだませるかもしれない」

 

追手Aが弓矢で狙いを定めた時、背後からの矢がかすめる。追手Aは振り向いて背後に構える。

 

カイが次の矢を構えつつ馬をとめる。カイと追手Aの睨み合い。それを注視するサクとノア。振り向いて滝壷を見おろす。

 

ふたりが顔を見合わせ、一緒にカイを見る。

 

カイが馬の脇腹を蹴る。走りだして矢を射る。

 

身をかがめる追手A。矢はサクとノアをかすめ、サクはノアを抱き寄せて滝壷へ。

 

悲鳴。着水。

 

滝壷の泡のなかで手が離れてしまうふたり。水流に揉まれながら必死に泳ぎ手を伸ばし合う。しかし届かない。

 

サクが力尽きて泡を吐く。沈む。ノアが上着を脱いで流れの抵抗を減らし潜るが息が続かない。

 

カイの声「滝の裏には洞穴があって、当座の備えがあります」

 

 

 

 

●記憶・森の中

 

カイ「(背を向けたまま)我々が滝まで、奴らを追い込みます」

 

ノア「ありがとう」

 

カイ「気をつけて。滝壷にはまれば命はない」

 

 

 

 

●滝の裏

 

ノアが水面に出て大きく息を吸う。すぐ潜る。

 

沈んでいくサク。ノアが必死に潜り手を伸ばし指をつかみ手首をつかみ引き上げる。

 

滝の裏に再浮上するノア。サクをかかえて岸へ。滝の裏にある洞穴に上げる。

 

倒れたまま意識のないサクの胸に耳をあて、人工呼吸を始める。胸を押し、それでも足りず唇を合わせ息を吹き込む。何度も。

 

サクが水を吐き出して咳込み、息を吹き返す。それを横向きにしてノアが背中をさすり、サクを抱きしめる。

 

洞穴の奥にわずかに見える衣服や食料。

 

 

 

 

●現実・隠れ家

 

カイ「(弔いを見ている)」

 

キナ「(後ろに来ていて)ご無事ですよね、姫は」

 

カイ「――祈ろう」

 

 

 

 

●草原(午後)

 

遠くに歩く人影が2つ。ノアとサク。

 

草原のあと森を抜け、川を渡り、海辺の砂浜を歩く。旅を続けるふたりがF.O.して、

 

 

 

 

●黒い画面に白い文字が出る

 

これは長い時のなかで忘れ去られた物語。

 

 

 

 

●エンドロール

 

 

 


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