シナリオ【友情結婚】 6 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●プレジール・厨房(昼前)

 

開店前の朝礼。シェフやウェイター、ウェイトレスなどのスタッフを前に、

 

渚「開店前に私事でごめんなさい。実は私、今度結婚することになりまして」

 

驚くスタッフたち。ウェイトレスたちの悲鳴。

 

渚「(笑顔で)それで披露宴を5月の下旬、勿論お店が休みの日ですけど、する予定です。もしよければ皆さんにはお越しいただければと思います」

 

スタッフたち(特に女性陣)が浮足立ってあまり話を聞かずワイワイし、その中でひとり丸山の表情が暗い。

 

 

 

 

●英司の会社・オフィス

 

英司が上司に結婚を報告したところ。

 

上司「(笑顔で)そうなの。突然じゃない。びっくりさせないでよ」

 

英司「すみません」

 

上司「言わなかったじゃんそんなお相手いるって。もしや杉浦君はホモなんじゃってさ」

 

英司「え」

 

上司「みんなで言ってたんだよ。触れないように、腫れもの扱い?」

 

英司「あ、そうだったンスか(笑顔が引きつる)」

 

上司「いやよかったよかった。おめでとう」

 

 

 

 

●プレジール・個室

 

渚の母が来ている。ウェディングドレスの資料をテーブルに広げていて、

 

母「お金のことばっか言わないの。一生に一度のことでしょ。お金は稼いでるじゃない」

 

渚「(前に座っていて目を伏せ)うん」

 

母「英司さんが言ってたの? もっと節約しろって?」

 

渚「違うよ。私がもっとね、新生活の方にお金かけたくて」

 

母「多少オーバーしてもいい式にして。絶対後悔する。ビデオ撮って子供に見せたり、こんなだったあんなだったって楽しいよ」

 

渚「うん――」

 

 

 

 

●社員食堂

 

英司を囲んで同僚たちがランチ。

 

同僚男性A「え、シェフなんですか?」

 

英司「いや、ソムリエの資格持ってて」

 

同僚女性A「カッコイイ」

 

同僚女性B「そのお店に行って知り合ったんですか?」

 

英司「いや、友達の結婚式の、二次会で」

 

同僚女性A「あぁ、あるんだやっぱそういうの」

 

同僚男性B「新婚旅行は行った方がいいって」

 

英司「まぁ落ちついたら、夏休みとかに行ってもいいし」

 

同僚男性A「でも行けばすぐスよ、子供(腹ぼての仕草し)あっという間。簡単なもんス。気ぃつけて下さい」

 

同僚女性B「サイテー」

 

同僚男性B「そらおまえんとこだけだって」

 

同僚男性A「そうスか?」

 

英司「(つき合いで苦笑)」

 

 

 

 

●走る電車内

 

英司が乗っている。真顔。世間の反応に屈辱、怒り、やはりこうするしかなかったという諦め。

 

渚の声「(先行して)ちょっと聞いてる?」

 

 

 

 

●ホテル・レストラン(後日・昼前)

 

英司「(我に返って)あ、ああ」

 

渚「(英司と共に披露宴の打ち合わせに来ていてため息。笑顔なし)」

 

係の女性「少し休憩しましょうか。コーヒーいれ直して来ます(と微笑で立つ)」

 

渚「すみません(係員を見送って英司を見ないまま)身が入らないのわかるけど」

 

英司「ん?」

 

渚「自分のことなんだからちゃんとして」

 

英司「ああ、ごめん」

 

 

 

 

●ホテル・ロビー

 

エスカレーターで下りてくる英司と渚。下方に気づく。明と睦美が来ていて笑顔で小さく手をあげる。

 

 

 

 

●あるマンション

 

4人が不動産店の男に案内され、空き物件を見ている。

 

明「(キッチンで)いいね。調理台がこのくらいの高さって楽」

 

英司「うん」

 

睦美「(洗面所で)これだけスペースあれば部屋干し余裕ね」

 

渚「うん」

 

不動産店の男「(4人の様子に)えーと、ご夫婦でそれぞれ住まれるんですよね」

 

明「そりゃそうよ」

 

睦美「こことここ、こことここね(と組み合わせを示す)」

 

 

 

 

●ファミリーレストラン

 

4人が遅めのランチ。食事は終わりがけ。

 

明「5階と7階ってのがな」

 

睦美「そうそう、私も気になる」

 

明「管理人とかに『あれ、あいつ5階なのにいっつも7階行くな』とか」

 

睦美「そういうちっちゃなとこでね、目ぇつけられたり」

 

明「同じ階がいいよ、どうせなら」

 

睦美「うん。じゃなきゃいっそ別マンションとか」

 

明「ちょっとおかわり(とドリンクのグラスを持って立つ)」

 

睦美「私も(とグラスを持って立つ)」

 

渚「(ふたりを見送って微笑し)なんかほっとする」

 

英司「(ふたりの方を見て)うん」

 

渚「なんかあった? 疲れてる」

 

英司「あぁ、いろいろ、決めなきゃいけないことたくさんで、バタバタ押されて」

 

渚「うん――」

 

英司「渚さんの方がもっとだね。式の細かいこと任せっきりで」

 

渚「でも、これを乗り越えたら楽になる」

 

英司「うん――」

 

渚「結婚式ってたぶん、みんな同じだろうけど、人生で飛びきり大きな出来事で」

 

英司「うん」

 

渚「この経験がためにならないはずないって、せいぜい楽しもうって」

 

英司「そうだね」

 

 

 

 

●家具店

 

4人が来ている。主に英司と明の新居用のソファーなどを選んでいるが、渚や睦美も口を出す。

 

 

 

 

●プレジールの最寄駅・駅前(後日・昼前)

 

睦美とその両親がいる。そこに遅れて明とその両親が来る。

 

明と睦美が紹介し初対面の挨拶。

 

 

 

 

●プレジール・店内

 

渚「(迎えて)いらっしゃいませ」

 

睦美「(先頭で入ってきて)どうも(両親たちを振り向き)彼女がルームメイトの水谷さん」

 

渚「はじめまして、水谷と申します」

 

睦美の母「あぁ、はじめまして。睦美の母でございます」

 

睦美の父「父です。大変お世話になってまして」

 

渚「いいえ、こちらこそ」

 

睦美「(明の両親に)彼女も今度結婚するんです。そしてあちらが婚約者の、杉浦さん」

 

英司「(渚の後ろに控えていたところから来て)杉浦と言います。はじめまして」

 

両親たち「はじめまして」

 

睦美「明さんを紹介してくれたのも、杉浦さん」

 

明「ふたりの紹介で、僕らは知り合って」

 

明の母「そうですか」

 

明の父「明の両親です。お世話になりました」

 

英司「いいえ」

 

睦美の父「仲人さんか」

 

英司「そんなたいしたものじゃありませんが」

 

睦美の母「キューピッド」

 

睦美の父「バカ」

 

英司「一度ぜひ、ご挨拶したいと思ってました」

 

渚「ええ」

 

英司「この度は、おめでとうございます」

 

両親たち「ありがとうございます」

 

渚「(英司と一緒にお辞儀し)お席ご用意してますので、どうぞ」

 

 

 

 

●個室

 

明と睦美の家族が食事を始めている。

 

 

 

 

●厨房

 

調理を一段落させた丸山が廊下の方を見る。

 

英司「マンションの手続きしてきます(と廊下を通過)」

 

渚「よろしくお願いします(と追って通過)」

 

 

 

 

●プレジール出入口

 

英司「(振り向いてとまり)じゃ、またあとで」

 

渚「ええ」

 

英司「(個室の方を見て)ご挨拶できて、よかった」

 

渚「うん――」

 

英司「いってきます(と外へ)」

 

 

 

 

●プレジール前の道

 

英司が出てきて駅に向かう。

 

従業員用の出入口から丸山が急いで出てくるが、英司はもう遠く追わずに見送る。

 

明の声「(先行して)今月中には決めるよ。もうだいぶ絞ってるし」

 

 

 

 

●プレジール・個室

 

明の父「マンション?」

 

明「ああ、賃貸」

 

明の母「決めてから呼んでくれりゃいいのに。そう何度も来るわけいかんでしょ、遠いんだから」

 

明「うん」

 

睦美の母「あと披露宴なんだけど、やっぱりやるつもりない?」

 

明「あぁ――」

 

睦美「やるとなったら間とって、ここら東京とかになるでしょ。母さんや親戚たちは勿論、地元の友達がわざわざ来るのは大変だし、東京自体にはそんな知り合いいないし」

 

睦美の母「2回やればいいじゃない、静岡とそちらの茨城と。ねぇ(と明の両親に笑いかける)」

 

睦美「そんなお金ないよ」

 

明「貯まったら。ね」

 

睦美「その時もし気が向いたら、考える」

 

睦美の父「子供できたらますます貯まんないぞ」

 

睦美の母「やだ父さん子供って――え、そうなの?」

 

睦美「まさか。一言も言ってないじゃない」

 

睦美の母「あぁ、びっくりした」

 

睦美「やめてよ」

 

明の父「うれしくて鳥肌たっちゃった」

 

「ハハハ」と笑う両親たち。苦笑する睦美と明。

 

 

 

 

●桜の花

 

満開。風に揺れる。

 

 

 

 

●マンション・通路

 

二組の新居があるマンション。6階の通路。運送屋の運んでくる荷物を睦美がチェックし、「これはこっち」「これはあっち」と指示している。エレベーターに近い場所が渚と睦美の家。2軒置いたところにあるのが英司と明の家。

 

渚の声「一応新婚なわけだし、ゴールデンウィークに来いとまでは言わないと思う」

 

 

 

 

●英司と明の家

 

先に引越しを済ませだいぶ片づいている。キッチンの物の配置を相談している英司と明のところに、渚が荷物を持ってくる。同居しているように見せるためのダミーの荷物。明が「あぁそっちに」と指さしつつ向かう。

 

睦美の声「このまえ私らは会ったし。てかたまにでいい。なんのために結婚したかわかんない」

 

英司の声「じゃ、それぞれ別行動で」

 

 

 

 

●マンション・通路

 

英司たちの家から渚が出てくる。そのあとを明が荷物を持って続く。

 

明の声「俺は房総あたりがいいな。海岸線をぐるっとドライブ」

 

 

 

 

●渚と睦美の家

 

睦美が片づけているところに渚と明が来て、渚が荷物を置く部屋を指示。明が持ってきたのはやはり同居してる風に見せるダミー。

 

睦美の声「私は山がいい。ひなびた温泉とか」

 

明の声「ゴールデンウィークに温泉?」

 

 

 

 

●住宅地の夜景

 

睦美の声「いいじゃない、一緒に行くわけじゃなし」

 

明の声「ま、いいけど」

 

 

 

 

●英司と明の家

 

4人が集まって引越し祝いをしている。夕飯と缶ビールやワインなど。

 

明「でも待って。そのあとふたりは式ひかえてるじゃん。どこ行ったか聞かれない?」

 

英司「あぁ」

 

渚「確かに」

 

明「写真見せろとかさ。一緒に写ってないとまずいじゃん」

 

睦美「えー、じゃあなに、また一緒?」

 

渚「私は別にいいけど」

 

睦美「私だっていいけど。山!」

 

明「海!」

 

睦美「山! 温泉!」

 

明「海! ドライブ!」

 

明と睦美が「フー」と猫の喧嘩のように見合う。英司と渚が笑って「やめやめ」「よしなさい」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・リビング

 

明かりが点いて渚と睦美が帰ってくる。ソファーにだらけて座り「はぁ」とひと息。笑い合って部屋を見まわしくつろぐ。

 

 

 

 

●英司と明の家

 

英司がキッチンで洗いものをしている。明が来て後ろから英司を抱く。軽快な音楽が始まり、

 

 

 

 

●朝陽

 

以下、新生活のモンタージュ。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

英司がワイシャツ姿で急ぎ朝食。コーンフレークとヨーグルトとコーヒーの簡単な食事。遅れて起きた明がパジャマ姿で来る。大あくび。

 

 

 

 

●マンション・通路

 

英司がひとりドアから出てくる。エレベーターへ。渚と睦美の家の前を通過する。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・廊下

 

睦美が洗面所から出てきてトイレに入る。渚が寝室から来てトイレに入ろうとしたのに先に入られ、洗面所に行く。いつものことなのでオーバーな反応はない。

 

 

 

 

●マンション・通路

 

明がドアをあけ出てくる。出勤姿。まだ寝ぼけた顔。寝癖が少し。

 

渚と睦美の家の前を通過するとドアがあき、睦美がゴミ袋を持って顔を出す。「あ、おはよう」と明を呼びとめ、「おはよう」と振り向いた明に「これ、ついでによろしく」とゴミ袋を渡す。明は寝ぼけているので「ああ」と無抵抗に受け取る。睦美が明の寝癖をちょっと直す。

 

 

 

 

●走る電車内

 

明が吊革につかまり揺られている。

 

 

 

 

●英司の会社・オフィス

 

英司が働いている。

 

 

 

 

●プレジール

 

渚が笑顔で客を迎え、席に案内する。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ベランダ

 

睦美が洗濯物を干している。仕事は3月で辞めている。

 

 

 

 

●スーパー

 

英司が会社帰りに買い物。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・キッチン

 

睦美が夕飯をつくっている。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

英司と明が夕飯。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・玄関

 

渚が帰ってくる。睦美が迎える。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

テーブルで書かれる婚姻届。

 

4人が集まっている。2枚の婚姻届をまわして記入し、書き終えて微笑し合うが微妙な寂しさがよぎる。音楽終了。

 

 

 

 

●伊豆の海岸線(昼前)

 

快晴。ゴールデンウィークの人出。たくさんの車。

 

英司の声「いやなんにも。新婚旅行の代わりって言ったら」

 

 

 

 

●走る英司の車・車内

 

4人が乗っている。

 

英司「(運転していて直結で)納得したみたいで、帰ってこいとは」

 

睦美「(後部座席で)いいな」

 

明「(助手席で)言われた?」

 

睦美「父親に。遊びに行けば金かかるだろって。貯めろって」

 

明「そう」

 

睦美「式やる気あんのか。ないよ。なんで同じ静岡の伊豆なんだとか、だったら清水まで来いとか、それじゃ楽しめないっつーの」

 

渚「(後部座席の隣りで)かわいそ」

 

睦美「でしょう?」

 

渚「(睦美の頭を撫で)楽しもう」

 

 

 

 

●伊豆の観光スポット

 

シャボテン公園、下田界隈、石廊崎など。

 

それらを背景に英司と渚、明と睦美、それぞれのツーショット写真が重なる。

 

 

 

 

●温泉街・情景(夕方)

 

 

 

 

●客室露天風呂

 

英司と明、渚と睦美がそれぞれ入っている。

 

 

 

 

●客室

 

座卓に並べられる料理。並べ終えた和服の係が「お済みになりましたらそちらのボタンでお知らせ下さい。片づけに参ります」とお辞儀し退室。

 

渚「ありがとうございます」

 

英司「(スマートフォンを見ていて)むこうもOKって」

 

渚「わかった」

 

 

 

 

●宿泊階の廊下

 

渚が部屋から出てくる。廊下にいる客室係が別の部屋に入るのを見計らって横をすり抜ける。

 

その行く先の一室から明が出てくる。向かってくる。

 

渚と明、すれ違う時お互いに手を出して軽くタッチ。そしてパートナーの待つ部屋の前に来てドアをノック。

 

 

 

 

●ホテル外観(後日・昼)

 

 

 

 

●チャペル

 

英司と渚の挙式。親族のみが列席。

 

渚と父が入場。バージンロードを歩く。泣きそうな父。

 

指輪の交換。誓いのキス。ふたりは自然に努める。

 

 

 

 


このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


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