シナリオ【遥か彼方へ】 6 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●首都アクノス・眺望(午後)

 

 

 

 

●アクノスのスケッチ

 

人々の活気。アーケードの商店。街には徒歩の郵便配達夫がいる。馬車と自転車は見えるが車はない。

 

街角に貼られたサッカー大会のポスター。見ている子供たち。

 

 

 

 

●新聞紙面がいくつか

 

サッカー大会、アロガン首相、飛行船、ドロス艦長の写真など。

 

男の声「(先行して)いつ戻った?」

 

 

 

 

●バー

 

イルグ(48)とテイルがいる。ほかには誰もいない。

 

テイル「3日前」

 

イルグ「似合ってるよ(とテイルの髭を見る)無事で何より」

 

テイル「無事じゃなかった。左肩を撃たれた」

 

イルグ「具合は?」

 

テイル「計画も失敗した」

 

イルグ「残念だった」

 

テイル「組織に影響は?」

 

イルグ「ない。睨まれてもない」

 

テイル「そう」

 

イルグ「でも世間にも、ほぼ影響なかった」

 

テイル「うん――」

 

イルグ「未遂じゃこんなものかもしれないが、なぜ息子が狙われたか、深掘りはされないまま。あんたの古巣も同じ。スキャンダルは微塵も出なかった」

 

テイル「未遂のせいかな」

 

イルグ「いいや、お得意の圧力もあったろう。当然。捜査のため、人命に関わると建前を言われちゃ逆らえない。今の報道機関は腰抜けだ」

 

テイル「――」

 

イルグ「まぁしょせんは商売だしな。今はサッカーの国際大会に夢中。政府の望み通り盛り上げ役を買って出て、大会の陰でやばい法案が強行採決されようと騒がない。政府の目くらましに手を貸し大衆は楽しけりゃよく、選手は利用されても出場できれば満足。これじゃ落ちるとこまで落ちるな。でも連帯責任だ。新聞だけのせいじゃない。みんなが選んだ結果だよ」

 

テイル「――」

 

イルグ「しかし前はこうじゃなかった。頭が腐ればすぐこうなる」

 

テイル「だったら変えればいい、まともな頭に」

 

イルグ「――」

 

テイル「できる機会は? きっとあるはずだ」

 

イルグ「(ニヤリと笑い)考えよう。よく戻ってくれた」

 

 

 

 

●マルース・セグーレの家・表

 

セグーレの母(44)が庭の一角で干物の加工をしている。

 

セグーレの声「母ちゃん、母ちゃん」

 

セグーレの母「(うるさそうに)なに」

 

セグーレ「(来て)ここかよ。返事すりゃいいじゃない」

 

セグーレの母「(作業やめず)帰ってくれば母ちゃん母ちゃんて、子供みたいに」

 

セグーレ「用事だろ。用事で呼んでんの!」

 

セグーレの母「なに」

 

セグーレ「明日漁のあと島行くから、何か持ってくもんねぇかって」

 

セグーレの母「また行くの?」

 

セグーレ「婆ちゃんになんか渡す物とか」

 

セグーレの母「おととい行ったでしょ。サーナに会いにかい」

 

セグーレ「いや用事だよ。学校かよって勉強するのにノートいるだろって。売ってないだろ島には。それ届けんの!」

 

セグーレの母「あの子ほしいって?」

 

セグーレ「え?」

 

セグーレの母「ノートほしいって言ってた?」

 

セグーレ「いや言ってないよ。言ってないけど」

 

セグーレの母「だろうね。物ねだる子じゃない」

 

セグーレ「でもあった方がいいだろ」

 

セグーレの母「プレゼントかい」

 

セグーレ「プレゼントっちゃプレゼントだけど(ブツブツ)」

 

セグーレの母「母ちゃんは特にないよ。よろしく言っといて」

 

セグーレ「うん――服とかないのもう」

 

セグーレの母「おととい持ってったでしょ」

 

セグーレ「うん」

 

セグーレの母「あんまりおさがり押っつけんのも嫌がられるだろうし」

 

セグーレ「そんなことねぇよ。よろこんでたじゃないサーナ」

 

セグーレの母「しつこくして嫌われないようにね」

 

セグーレ「し、しつこくって俺は」

 

セグーレの母「母ちゃんのこと。いろいろあげたいけど服なんて好みあるでしょ」

 

セグーレ「あ、ああ」

 

セグーレの母「さっさと帰ってくんだよ。気になるからってグズグズいないの」

 

セグーレ「お、俺はね、あの子を預かってんだよ。責任あんだ。気になるったって心配で、そんなじゃねぇよ」

 

セグーレの母「ハイハイ」

 

セグーレ「なんだよババァ(と屋内へ)」

 

セグーレの母「なんつった? 今なんつったコラ!」

 

 

 

 

●島・祖母の畑(朝)

 

サーナが水桶2つに井戸の水を入れている。天秤棒で運び畑に撒いてると、

 

セグーレの祖母の声「サーナ、サーナ」

 

サーナ「(遠くを見て)はーい」

 

祖母「(家の方にて)終われー。学校行けー」

 

サーナ「はーい(残りの水を撒く)」

 

 

 

 

●島・坂道

 

サーナが坂をおりる。登校する子供たちが「おはよう」と挨拶し、サーナも「おはよう」と返す。

 

 

 

 

●マルース・港

 

セグーレが水揚げ作業をしている。

 

 

 

 

●島・学校

 

教師(中年女性)が黒板で字を教えている。

 

6人ほどの生徒がいて、一番後ろの席にサーナがいる。みな個人用の小さな黒板で教わった字を書いている。

 

 

 

 

●海

 

セグーレの船が島に向かう。

 

 

 

 

●セグーレの船・操舵室

 

セグーレが操船している。鼻歌。

 

 

 

 

●島・学校

 

放課後。校庭で子供たちが遊んでいる。サーナも女児たちと縄跳びしてる。

 

男児が道から来るセグーレに気づいて駆け寄り「また来たの?」「サーナ好きなの?」

 

セグーレ「ば、馬鹿なこと言うな」

 

男児「赤くなってるー」

 

セグーレ「コラ(追いかけ)そんなことおまえサーナに言ったら」

 

男児「(ケラケラ笑って逃げ回る)」

 

女児「(気づいて)あ、あのお兄ちゃん」

 

サーナ「(見る)」

 

セグーレ「(男児に追いつけず派手に転ぶ。男児たちに笑われる)」

 

サーナ「(笑う)」

 

女児「ほんと男って大きくなってもガキ(軽蔑)」

 

セグーレ「(サーナに気づく)」

 

サーナ「(笑顔で手を振る)」

 

セグーレ「(見とれて手を振り返す)」

 

ガン、と銃声が先行し、

 

 

 

 

●山奥

 

こだまする銃声。射撃練習場がある。見事に中心を撃ち抜かれた的。

 

テイルがスコープ付きのライフルから薬きょうを出す。横に若い男、ルージ(24)が立っている。右手に包帯を巻いている。

 

ルージ「(双眼鏡を顔から下ろし)いいじゃない」

 

テイル「まだ安定してない」

 

ルージ「練習すれば行けるよ」

 

テイル「だといいが」

 

ルージ「今度は動くもの、山の鳥か動物でも練習しよう」

 

 

 

 

●回想・山中

 

先導するサーナが足をとめ、後ろのテイルを制して熊に銃を構える。

 

 

 

 

●現実・射撃場

 

テイル「――」

 

ルージ「聞いたけどあんた、首相の息子の、あの――」

 

テイル「ああ」

 

ルージ「すげーな。なんだったのきっかけは。今度の計画にしても」

 

テイル「聞いてない?」

 

ルージ「ああ、俺みたいな下っ端には、詳しい話はね」

 

テイル「そう」

 

ルージ「ただ銃を教えるよう言われただけ」

 

テイル「いつ治るの、それ(右手を見る)」

 

ルージ「計画には間に合わない」

 

テイル「そう」

 

ルージ「聞かせてよ。いや尊敬してるんだ。前の時は単独だったんだろ?」

 

テイル「うん――あとでな(銃を構える)」

 

ルージ「――」

 

テイルが発砲し銃声が響く。

 

 

 

 

●島・坂道

 

セグーレとサーナが登っている。

 

セグーレ「勉強はどう? 大変?」

 

サーナ「うん、難しい」

 

セグーレ「そう」

 

サーナ「でもみんなより、言葉は知ってるでしょ? 覚えは早いって先生は」

 

セグーレ「へぇ。すごいじゃない」

 

サーナ「ううん、読むのはよくても、書くのがね、まだ。繰り返し練習しないと」

 

セグーレ「あ、そう思ってこれ(紙袋を渡し)欲しいんじゃって」

 

サーナ「なに?(袋を受け取って覗く)」

 

セグーレ「ノートに鉛筆に、削るナイフと」

 

サーナ「(手にして)わぁ、いいのにこんな」

 

セグーレ「でも、あった方がいいよ、うん」

 

サーナ「ありがと(笑顔)大事にする」

 

セグーレ「うん(嬉しい)あとなんかない? 困ったこと。婆ちゃんにはこき使われてない?」

 

サーナ「ううん、やさしい」

 

セグーレ「あの人ずっと動いてるでしょ。なんかしら動いてて。あれに合わしてたら疲れちゃうから」

 

サーナ「フフフ、元気よね。すごい」

 

セグーレ「テキトーにサボるといいよ」

 

サーナ「うん」

 

セグーレ「(話の種が尽き)じゃあ、俺帰るから(立ち止まる)」

 

サーナ「え(立ち止まる)」

 

セグーレ「それ渡そうと来ただけで」

 

サーナ「お婆さんには?」

 

セグーレ「いいのいいの」

 

サーナ「挨拶も?」

 

セグーレ「あ、挨拶ぐらいした方がいいかね?」

 

サーナ「もうすぐお昼だし、疲れたでしょここまで。漁のあとでしょ?」

 

セグーレ「いや、疲れてはないけど、すぐ帰る気だったし」

 

サーナ「用事? 忙しい?」

 

セグーレ「ううん、用事も忙しくも、全然ないんだけど」

 

サーナ「だったらちょっと。すぐそこだし」

 

セグーレ「うん――」

 

サーナ「聞きたいことあったし」

 

セグーレ「なに?」

 

サーナ「お昼つくる。私が当番なの(坂を登っていく)」

 

セグーレ「いや、さっさと帰るつもりだったんだよなぁ(と続く)」

 

 

 

 

●山奥・射撃練習場近くのベースキャンプ

 

人けはない。

 

 

 

 

●キャンプ内

 

テイルとルージが昼食中。

 

ルージ「いいじゃない。そんな言いづらいこと?」

 

テイル「(食べている)」

 

ルージ「なのかもしれないけど――俺たちチームじゃない」

 

テイル「(ルージを見る)」

 

ルージ「わけぐらい知りたいさ」

 

テイル「――あれは2月の末、アクノスには雪が降ってた」

 

 

 

 

●アクノス・眺望(昼前)

 

雪がチラついている。ここからテイルの記憶。

 

 

 

 

●アクノスのスケッチ

 

街中の活気。人々のざわめきの中からタイプライターの音が聞こえてきて、

 

テイルの声「(先行し)なんかいいネタありました?」

 

 

 

 

●新聞社・オフィス

 

タイプライターを打つ人々。少し離れた一角に新聞記者のテイルとクエント(31)がいる。テイルがコーヒーの入ったカップを2つ持ってきてクエントのデスクに置いたところ。クエントはテレタイプが吐きだした紙テープを辿り解読していて、

 

クエント「マルースで海難事故があったらしい」

 

テイル「マルース? 知らないな」

 

クエント「オルドン近くの港町。魚がうまい」

 

テイル「あぁ、オルドン。保養地」

 

クエント「カミサンとまえ行った」

 

テイル「へぇ。またノロケですか」

 

クエント「あんな時間はもうないね、静かで穏やかで」

 

テイル「フィーランまだ泣きます?」

 

クエント「決まってるだろ。やっと1歳だぞ」

 

テイル「(うなずく。よく知らない。コーヒーを飲む)」

 

クエント「あの辺りの海は夏荒れるんだ。季節風で波が立って。でも冬は穏やか。漁師の親子が行方不明。船は沈没。水上警察は船の破損と断定。なんか引っかかるな」

 

テイル「行きましょうか、取材で2~3日」

 

クエント「うん――」

 

テイル「たまにはよく寝たいでしょ。魚うまいんでしょ?」

 

クエント「おまえね(呆れて苦笑)」

 

 

 

 

●トンネルの闇

 

汽車の走行音と汽笛。小さな光の出口が迫り、抜けると青い空と海が広がる。雪の首都とは別世界。沿岸を走る。

 

 

 

 

●駅

 

汽車が停車している。乗り降りする人は少ない。

 

 

 

 

●駅前

 

テイルとクエントが駅舎から出てくる。あたたかで上着を手に持ち、もう片方の手には着替えの入ったバッグ。

 

テイル「(とまって背伸びし)まず腹ごしらえかな」

 

クエント「仕事だよ(と追い抜いて一方へ)」

 

 

 

 

●水上警察の窓口

 

署員の中年男にクエントとテイルが取材している。海図を広げていて、

 

クエント「なぜこの海域と言えるんです?」

 

署員「家族に言って向かったのがその漁場だ」

 

クエント「しかし遺体は勿論、船の破片1つ見つかってないんですよね」

 

署員「まぁ、そう」

 

クエント「潜ってもない?」

 

署員「ここらは深いんだ。海図で見るよりずっと広い。探しようがない」

 

クエント「なぜそれで船の破損と断定できるんです?」

 

署員「ほかに考えられないからさ」

 

クエント「そんな」

 

テイル「(メモを取っていて顔を上げ)事故から1週間で結論というのは、早すぎないですか」

 

署員「十分探したよ。我々だけじゃない。仲間の漁師たちが手分けしても見つからなかった」

 

テイル「息子の方は別として、父親は漁師歴20年以上ですよね。破損とか故障には事前に気づきそうだけど」

 

署員「ベテランだから余計操船ミスとは思えん。残るは船の不具合。他にあるか?」

 

テイル「何か考えられませんか」

 

署員「考えられんと言っとる。あんたら本当に新聞記者か?」

 

テイル「(クエントと顔を見合わせてから)見えないですか」

 

署員「本物に会ったことないんでね」

 

クエント「本物です」

 

署員「とにかくうちでわかるのは以上(と奥に去る)」

 

 

 

 

●水上警察署・表

 

クエントとテイルが出てくる。

 

クエント「家族の話を聞くか」

 

テイル「宿に行きましょう。荷物を置きに」

 

 

 

 

●遭難者家族宅・庭

 

クエントとテイルが来ている。遺族の中年女性が木陰の石垣のような場所に座り泣いている。話にうなずいているクエント。テイルは控えめにメモを取る。

 

 

 

 

●海

 

陽が沈んで暮れなずむ水平線。凪。

 

 

 

 

●レストラン・テラス席

 

夕食と晩酌をするクエントとテイル。

 

テイル「あぁ、食った食った。夜はさすがに肌寒いですね」

 

クエント「うん――」

 

テイル「まぁ家族は納得できなくて当然だし、謎は残るって方向で記事は書けます。デスクはそれで納得しますよ」

 

クエント「会社なんか気にしてない」

 

テイル「そうなんですか?」

 

クエント「(苦笑し)タフだな」

 

テイル「うまかったです。酒もうまい。景色もいい。飲みましょ。食いましょ」

 

 

 

 

●海(翌朝)

 

美しい凪の海。

 

 

 

 

●港とその周辺

 

クエントとテイルが地元民に聞き込み取材している。一方を指さす漁船の漁師。仕事の手をとめない魚市場の若者。衣料品店の女主人が首を振る。テイルは店の売り物のシャツ(派手なリゾート風)を気にする。

 

 

 

 

●レストラン

 

昼食をとるクエントとテイル。テイルは買ったシャツに着替えている。

 

テイル「午後は休みますか。土産も買わなきゃいけないし」

 

クエント「そのつもりで買ったな(と指さす)」

 

テイル「(シャツをつまみ)いいでしょ(と自慢)先輩も買えばいいのに。ちょっとのんびりして、明日帰りましょ」

 

クエント「うん――(一方に気づく)」

 

テイル「(その方を見る)」

 

聞き込み取材を受けていた魚市場の若者がひとりで食べに来たところ。クエントとテイルに気づき目礼。ふたりも返す。

 

魚市場の若者「(店の奥に行きかけて、気が変わったようにふたりの方に来る)何かわかった?」

 

クエント「いや、特には」

 

テイル「帰るしかないかって、いま話してて」

 

魚市場の若者「そう(そばの席に座る)」

 

テイル「納得したわけじゃないけど、海上じゃ目撃者はいないわけだし、しょうがないかって」

 

魚市場の若者「あんたたち本物の記者?」

 

テイル「(クエントと顔を見合わせてから)見えない?」

 

魚市場の若者「見たことないし」

 

クエント「本物だよ」

 

テイル「名刺出そうか(と上着の内ポケットを探す)」

 

クエント「そんな嘘つくヤツいる?」

 

魚市場の若者「いや――さっきは人がいたから言わなかったけど」

 

テイル「ん?」

 

魚市場の若者「行方不明になった夜、同じように出てた船があって」

 

クエント「沖に?」

 

魚市場の若者「漁は夜明け前だから、夜中に出港するのがだいたいなんだけど」

 

クエント「だってね」

 

魚市場の若者「前日から海に出て、一眠りしてから漁ってのもいて」

 

クエント「遭難した親子もそれって」

 

魚市場の若者「セグーレって漁師がいるんだ。死んだ息子と同い年。親友。やっぱり親子で漁してたけど、去年親父さんが病気で死んで、今はひとりで船に乗ってる」

 

クエント「その人が同じ夜?」

 

魚市場の若者「らしい」

 

テイル「(メモを取り始めていて)何か見た?」

 

魚市場の若者「あんたらに話すとは思えないけど」

 

クエント「どうして?」

 

魚市場の若者「川向こうの町はずれに住んでる。俺に聞いたってのは内緒で(と席を立ち奥へ)」

 

クエントとテイルが顔を見合わせる。

 

 

 

 

●漁師町・町はずれ

 

クエントとテイルが橋を渡ったところで地元民に道を聞いている。

 

 

 

 

●セグーレの家・表

 

セグーレの母が庭の一角で干物の加工をしている。テイルの声が「こんにちは」と聞こえて、その方を見る。

 

テイル「(道から来て)お仕事中ですね」

 

クエント「ちょっと伺っていいですか」

 

セグーレの母「ええ。何か」

 

テイル「我々は新聞記者で、アクノスから来ました」

 

セグーレの母「新聞記者?」

 

クエント「半月前に起きた海難事故の、取材をしてます。こちらセグーレさんのお宅と聞いたんですが」

 

セグーレの母「――まぁ(目を伏せる)」

 

テイル「(その様子で)今いませんよね。いつごろ戻ります?」

 

セグーレの母「なんだって言うんですか(作業に戻る)」

 

クエント「いや、事故の件で何か知ってることはないかと」

 

セグーレの母「ありませんよ。あったってもう話さないと思うけど」

 

クエント「もう?」

 

セグーレの母「(手が止まる。口が滑った、と目が泳ぐ)」

 

クエント「前に誰かに?」

 

セグーレの母「あんたら本当の記者?」

 

テイル「(クエントと顔を見合わせ)ええ、勿論。いま名刺を」

 

クエント「アドラン日報の者です。別の新聞社の記者が、もう来ましたか」

 

セグーレの母「一応聞いてきますけど(と家の中へ)」

 

テイル「あ、名刺(と呼びとめるが渡しそびれ)いるのかよ、こんな時間(名刺をしまう)」

 

クエント「先を越されたかな」

 

テイル「そんな見えないですかね記者に」

 

クエント「おまえのシャツのせいじゃないか」

 

テイル「先輩の顔でしょ」

 

クエント「おい」

 

セグーレの母「(戻ってきて)帰ってくれって」

 

テイル「え」

 

セグーレの母「会わないそうよ。さぁ出てって」

 

 

 

 

●海岸

 

クエントとテイルが座って海を見ている。

 

クエント「何か知ってるのは間違いない。それを誰かにまえ話した。でももう話したくない。何があったんだ?」

 

テイル「さぁ、なんですかね(日焼けしようとシャツを脱いでいる)」

 

クエント「また来よう。明日の今頃か。さっきいたわけだし」

 

テイル「帰んないんですか」

 

クエント「帰るわけないだろ。気になんないのか」

 

テイル「いやなるけど」

 

クエント「でも同じ時間に来ても、あの母親がまたいそうだ。漁師じゃ朝いないだろうし、昼前ぐらいかな」

 

テイル「(大あくびする)」

 

 

 

 


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