趣味で能面打って20年。今はカルチャーセンターで教えています能面パパです。

本当にありがたいことにアクセス数が増えてきました。
そうなるとどの面をご覧いただこうか真面目に選ぶ今日このごろ。

能面パパもえらく協力的になってきたとは以前書きましたが、母までもが宗旨替えしたようで、
『能面といえば小面しか知らない人もいるだろうから地味なのも紹介したほうがいいで』と言い出して、んああああああ~?
ちょっと前は『地味なんばっかり』ゆーとったじゃないか。

ま、母に脅された・・じゃなかった勧められたわけじゃないけど、今回は地味というより滋味ある狂言面をご覧ください。

狂言にも数は多くないものの、面をつける作品があります。

そのひとつ、「鼻引」です。
鼻が横に引っ張られているようなので、この名前があるとか。


どこから見てもおじいさん。
ニッタリな目とすきっ歯のせいか深く刻まれたシワも苦労の象徴ではなく、愛嬌ありますね。

この面、能面パパの作業部屋の壁に飾っているんですが、左右に「大飛出」やら「山姥」やらインパクトでは負けず劣らずの面があるのに、妙に目立っとる。
やっぱりこのクセのつよい表情とすきっ歯のせいだな。
笑うジジイにすきっ歯は必須(笑)。

使われる作品には「浦島」があります。
浦島というおじいさんと孫が浜で釣った亀を助けてあげると、亀の精がお礼に箱を持ってきます。浦島じいさんが箱を開けると、若者に変身したのでした
・・・あら、これって本家本元(?)の裏返し?

昔話の浦島太郎は若者で、玉手箱を開けて白髪のおじいさんになっちゃいましたよね。
狂言のほうは乙姫さまも竜宮城も、もちろん鯛や平目の舞い踊りもなし。

検索してみると番外曲といっていわゆる狂言のスタンダードからは外れた作品のようで、だから上演もあんまりされなかったんでしょうか。
だけど元ネタはめっちゃ有名なんだから、タイトルだけでそれかなと思って見たらえっ?なんて良い意味で裏切られるんじゃないかなあと思うんですけどねえ。

もうひとつ狂言面。


やっぱりすきっ歯。
頬髭とあご髭もある。
鼻引の兄ちゃん?
いやいやこちらは神様です。
「登髭(のぼりひげ)」といいます。
能と能の間に演じられる、合狂言に登場します。
神様ではありますが、厳めしさはありませんね。
「末社の神」なんて表現されてます。
拝観料取るようなおっきい神社で祀られてる神さまじゃなくて、小さい神社の神さまです。

もしかして母の田舎のお宮さんにも住まっているのかも。
立派な拝殿等はなかったけど、毎日祖父はお参りしてたし、宮司さんがお米やお酒をお供えしてましたっけね。
母いわく、お宮さんには八幡さまが祀られてるそうで。

八幡宮といえば大分の宇佐八幡宮を頂点に全国に40000以上あるそうな。
宇佐八幡といえば奈良時代、道鏡vs和気清麻呂の神託事件の発端になったほどの由緒ある神社ですが、でもさ、登髭さんの方が話聞いてくれそう。
『 もう人生しんどいわ。ええことないわ。いややわ』とか愚痴っても、まあそう言いないな、そんな自棄になったもんでもないでとかなだめてくれそうやん。

「鼻引」のおじじどのだと、ありゃりゃ、大変やのう、ワハハーとなり『ジジイ、聞いとるんか』となったりして。

「鼻引」、「登髭」どちらも平成30年に打ちました。

ご覧くださいましてありがとうございました。