肥料を減らせ!!!(前) | あなたも農業コンサルタントになれる

あなたも農業コンサルタントになれる

  わけではない / by 岡本信一

肥料を減らせ!!!(前)

 

私が常に栽培改善の方法の第一に上げるのは、施肥の量の適正化である。

日本の農家は、施肥量を減らすのを非常に嫌がるが世界的にみると例外的だ。どこの国に行っても施肥量を減らすという概念的な話をすると喜んで施肥量を減らそうとする。

ところが日本では施肥量を減らすことに物凄く抵抗があるのである。この話は何度も書いているが今回は実例を挙げる。

私はほとんどの場合、コンサルタントとして企業とともに仕事を行っているので、オープンにできるようなデータがない。唯一、後のためにと二年間データをとったのだが長らく行方不明になっていたが、過去のPCの中に発見したので数字とともに施肥量を減らすとどのような効果があるのか、説明したい。

過去には農業経営者という雑誌の連載でも公表したことがあるが、2007年~2009年に鹿児島県の指宿市で行ったソラマメの施肥試験である。(株)アグリスタイルにご協力をいただいている。

以下、2007年植付け~2008年4月の作を2008年作、2008年植付け~2009年3月までの作を2009年作とする。若干植付け時期が違っていることはご了承願いたい。

2008年にさまざまなデータをとり、翌年にその改善策を施して栽培改善を行うという調査であった。

その結果、2009年はすべての圃場において元肥の量を半分に削減した。

調査した圃場は5つで、それぞれ三ケ所数株の調査場所を設け、合計15ケ所で測定している。

なお、測定したデータは約10日ごとに作物体(硝酸イオン濃度、糖度、カリイオン濃度)、土壌(EC,pH,硝酸イオン濃度、カリイオン濃度、PF、土壌硬度分布)、収量は通常の収穫に合わせて試験区ごとに細かく調査。

まずは、両年の天候状況だが以下の通り、2009年は非常に天候が悪かった(12月から3月までの天候)。

表1

降水量

表2

日照時間

表3

気温

 

2008年は2月は干ばつ気味で非常に寒かった。

2009年度は雨が多く、特に2-3月は平年の2-3倍降っていて、日照時間も相当少ない2009年のソラマメ作は非常に不良だったということがよく分かる気象条件である。

2008年の収穫量の調査データを見てみよう。

表4

 

さて、2008年の収量調査の結果であるが、干ばつ気味で寒かった二月の歩留まりが極端に悪く33%となっている。

こういった時にデータをとっていれば原因が何かを類推できるわけで、データ解析を行った。その結果、PF値が2月にかなり下がっており、干ばつ気味で水が不足したのかと考えられたが直接の関係性は見いだせず、土壌のECが上がっていたのが原因であると特定された。

水分不足というより水分が減少した結果、EC濃度が上がり、作物が給水を阻害されたか、根の機能に異常を来した可能性が高いということである。

一般的にとれなくなる要因というと、雨が多いということが想起されるがマルチ栽培においては干ばつ害がかなり起きており、その要因の大部分は水分不足というよりもECの上昇によることが多い。

ECの濃度障害というと、根焼けのようなことを想像する方が多いのだが、そこまで極端な例は多くはなく浸透圧によって吸収阻害が起こることで障害を起こす場合が圧倒的に多い。しかし、この要因分析というのは以外に難しく、細かなデータをとっていないと特定できないことも多い。

そうなると、○○欠乏だ、○○過剰だ、という細かな話になりやすいのですが、まずはECが高い場合(0.1以上の場合)EC過剰による吸収阻害というのが圧倒的に多い(本当の意味で原因特定できているわけではない。あくまで数字からの推定である)。

 

EC濃度の上昇により、吸収阻害を起こすことを知っている人は意外に少ない。

メカニズム的にいえば要するに根の漬物化である。漬物は塩を振り、重しを乗せておくと塩分が吸収され、水分が出てくる。これと全く同じでEC濃度が高くなると水分が吸収されるというよりも、根からむしろ水分が出てこようとしてしまう。浸透圧の差によって生まれる物理的な現象なので、ごく普通の話です。簡単にいうと水は薄いほうから濃いほうに流れたがる。干ばつ気味で水分が必要であるのに、ECが高くなると水は吸収しにくくなるということになってしまう。

ハウス栽培や、露地栽培でもマルチ栽培であると頻繁に見かける現象であるが、ECの濃度障害を知らないと原因の特定が難しくなる。

では、その解決方法は何かといえば、施肥ないしEC濃度に影響するような施肥なり、堆肥なりの投入を減らすだけで済む。

 

というわけで2008年の結果を見ると、堆肥なり施肥を減らすということになって元肥を半減することになる。減らす量はアドバイスはしたが農家の方にいろいろ説明した上で決めていただいた。

すべてのソラマメ圃場で減らすのは勇気が必要だったと思います。ありがとうございました。

気象データを見ると、2009年は雨+日照不足なわけでどうなるだろうか。

 

<中編に続く>


農業を科学する研究会 土壌硬度の均一性評価(β版)を正会員になると使用できる予定です。

 

Agsoil株式会社 土壌硬度の均一性評価(β版)を提供します。

 

ブログランキングに参加しています。

もしこのブログが役に立った、応援してもいいとお考えでしたら、ポチっとしていただけると更新する励みになります。よろしくお願いいたします。
にほんブログ村 企業ブログ 農業へ
にほんブログ村

 


農林水産業 ブログランキングへ