農産物の保存性は土壌硬度によって決まる | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一

農産物の保存性は土壌硬度によって決まる

 

さて今回は昨年野菜流通カット協議会からAgsoil株式会社が受託した農産物の保存性の調査について報告する。

以下、実際の報告内容の一部である。

必要に応じて注釈を加える。

 

【はじめに】

昨今の異常気象は青果物流通にも大きな影響を与えており、安定供給のためのリスクヘッジとして、産地や作型の分散などに加えて冷蔵保存による不作や不測の事態に対応することの重要性が高まっている。

 

【今回の試験の目的】

栽培条件が保存性に影響することを明確にする。

 

【保存性の問題】

保存性には2つの要素がある。

一つは保存期間で、長くもつかどうかである。

もう一つはばらつきで、簡単に言えばもつものともたないものが混在する状態である。

流通側から見れば生鮮品を保存する場合、実はばらつきの方が問題になる。なぜかと言えば、保存で対応するのは総じてものがない時期であり、保存しているものが使用できなければ代替品の手配に多大な労力と費用を要するからである。別の言い方をすればどれもが同じようにもつことが大前提であり、そうでなければ長くもつことにあまり価値はない。

品質の良い作物は保存性が高く、品質の悪い作物は保存性が低いことはよく知られているが、このことから保存性のばらつきが起こる原因は、品質のばらつきであると想定できる。

 

【栽培要素の仮説】

作物の成長には多くの栽培条件が関係しているが、幸いなことに今回の対象品目であるレタスについては、以前に調査した経緯があったため、「土壌硬度(土壌の硬さ)」と「収穫のタイミング」が保存性に直結する作物の品質を左右するという仮説を立てた。

 

【仮説の実証方法】

実証試験区は耕起工程を変えることで、同じ圃場内に「土壌硬度」の違う試験区を複数作り、各試験区のレタスで保存性がどのように変わるのかを調査した。また、収穫するタイミングを変えることで保存性にどういった変化が出るかについても調査した。

なお、その他の栽培条件(品種・定植日・肥培および防除管理等)については、すべての試験区で同じとした。

 

【結論】

1. 保存性については台風による著しい品質劣化のため、明確な結果が得られなかった。

2. 栽培過程における成長速度が速すぎても遅すぎても保存時の劣化(重量の減少速度)が早い。

3. レタスの成長速度はほぼ70%が土壌硬度(土壌の硬さ)に依存する。残りの30%程度(特に成長後半)は圃場の温度や日照などの環境条件の影響を受けていると考えられる。2.から保存性を左右する栽培条件は土壌硬度と推測できる。

 

【結論1の根拠】

1. 今回、サンプル出荷したレタスは収穫前(10月22日~29日)に台風21・22号による大雨(冠水を伴う)と強風のため、痛みや病気が散見された。(実際に商品規格としては出荷できないレベル)

2. 保存性試験結果(表1)から、冷蔵条件によって重量の減少速度に有意な差がみられるが、使用に耐えうる品質の維持はできなかった。これは前川製作所様で実施した保存性試験も同様であった。(内容は各社の報告書を参照)

3. 1.2.より、冷蔵条件により劣化速度に差はあるが、入庫時の農産物品質が極端に悪い場合は保存性も良くない。

 

表1:冷蔵条件によるサンプル株重量10%減少日数の違い(ナラサキ産業様実施)

 

試験区(2℃、湿度100%)、対象区(2℃、湿度85-90%)、重量10%減少日数は実測値からの推測、順位はAgsoilで追記

 

<岡本注>

現場に携わる人であればわかると思うが、流石に台風により二度の冠水したものでは保存はできない。これまでの経験で言えば、一度の冠水なら条件によってはなんとかなるが二度は厳しい。

厳密に測定したことはないが、恐らく水の引くスピード(冠水している時間)によって決まっていると思われる。一番最悪なのは、冠水している最中に陽が出て、温度が上昇するというような条件になるだろう。つまり冠水している時間とその他の複合要因によって決まると思われる。

次回は、結論2.3について触れる。


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