英国のミステリーチャンネルU&Alibiで7月16日から配信された
全6話のオリジナル・ミステリー・ドラマ”Bookish”。
まだ日本では放送or配信されていませんが、
なんとか一通り鑑賞することが出来ました。
”Bookish”は第二次世界大戦直後のロンドンを舞台に、
古書店主のガブリエル・ブックが、
警察に協力して難事件を解決する時代物ミステリーで、
「SHERLOCK」の製作者・脚本家・シャーロックの兄マイクロフト役で知られる
マーク・ゲイティスが製作・脚本・主演を務めています。
今回は探偵の兄ではなく主役で探偵役!
舞台では「英国万歳!」等で主役を張ったことがあるマークですが、
連続ドラマでは初!
発表されてからなかなか最新情報や露出もなく、
マーク・ゲイティス狂としてかなり鬱々とした日々を過ごしましたが、
夏以降から映画祭の出品や場面写真等の情報が解禁になりました。
放送前に出てきたインタビューもひとつひとつ熟読し、予習はばっちり!
2015年以来2回目に表紙を飾ったRadioTimesも購入しました!
From gripping read to thrilling television – we dive into the best crime drama adaptations, with Mark Gatiss and Matthew Sweet revealing how they collaborated on the new period production, Bookish.
— Radio Times (@RadioTimes) July 8, 2025
Plus:
📖 Mick Herron and Will Smith lift the lid on how the Slough House spooks… pic.twitter.com/xuWegLXF8o
ブックは書店主だけど探偵、という今までありそうであまりなかった設定ですが、
これはマークの実体験が元になっているそうです。
2013年、彼は”55 Days”という清教徒革命を背景にした舞台に
チャールズ一世として出演していました。
チャールズ一世と敵対するオリバー・クロムウェルの肖像画を
演出家に渡すために探していたマークは、
ロンドンのセシルコートにある女主人がいる古書店を訪れ、
「オリヴァー・クロムウェルの絵はありますか?」と訊くと
「シーッツ!!」と制された後、女主人は「5分待って」と言い残し、
店の奥からクロムウェルの絵を持ってきたそう。
この「マインドパレス的体験」「アナログコンピューターとしての書店」のイメージが
今回のドラマの設定のモデルになっているそうです。
(でもマークも出演している「グッド・オーメンズ」の天使アジラフェルも思い出しますよね…)
コロナ禍に小説としてこの物語を書き始めたマークでしたが、
その完成した小説の一章分は、当時の世の中の状況や、戦後という舞台設定もあり、
どうしても暗い雰囲気になってしまったらしく、
もう少し明るい雰囲気を取り込めるよう、脚本として書き直したそうです。
その後、RadioTimesのパーティで制作会社Eagle Eyeの製作者から
「時代もののミステリーの脚本は持ってない?」と
訊かれ、ちょうど待ってるよ!とトントン拍子にドラマ化の話が進んだとか。
そして、マークが執筆したエピソードを元に、第一・二話が作られ、
2005年のドクター・フーの再始動時に知り合って以来、
対談等で共演の機会が多い作家のマシュー・スウィートが共同脚本で参加しています。
(発売された小説版もマシューが改めて執筆しています。)
An offer for #Bookish people - the unfoxable @AmazonKindle edition is now £4.99. https://t.co/wp68lGHo7q pic.twitter.com/CNKKOt2U7W
— Matthew Sweet (@DrMatthewSweet) August 5, 2025
“Bookish”が、よくあるミステリードラマと趣が異なる点は、
主人公のブックが「ラベンダー結婚」をしている点。
これは主に、ゲイとストレートの男女が
性的な関係はなくても婚姻を結んでいることを指します。
当時同性愛は違法であったため、異性との結婚が隠れ蓑となったわけです。
とはいえ、ブックは身を守るだけのために契約上の結婚しているわけではなく、
ポリー・ウォーカー演じる幼馴染で親友のトロッティーと
強い愛情と友情で結ばれ、同居しています。
📚 A new chapter begins! 📚
— U&Alibi (@alibi_channel) April 29, 2024
Mark Gatiss and Polly Walker on set as filming starts in Belgium. #Bookish marries post-war nostalgia with the reckless and life-affirming atmosphere of the times, creating a fast-paced and stylish detective drama.
Coming 2025. pic.twitter.com/sPAGh3MQVR
戦後のゲイの人生については、男性の同性愛合法化50周年で
マークがキュレーターを務めたモノローグドラマ”Queers”のあたりでも詳しく本人が語っていました。
また、オリヴィエ賞を受賞した舞台「ザ・モーティヴ・アンド・ザ・キュー」で
マークが演じた名優ジョン・ギールグッドもブックのキャラクターに影響を与えているそうです。
「”Queers”はイングランドとウェールズにおいて21歳以上の男性間の自宅での性行為が一部合法化されたことを記念するものです」
— マーク・ゲイティスinfo (@MarkGatissJp) June 20, 2021
「LGBTの歴史を網羅するというより、主にゲイの男性の経験、様々な角度から目覚ましい進歩を辿り、1967年の法制定に至るまでの世界とその後の数年を検証したかったのです」
戦後直後の1946年という時代設定も、英国のミステリードラマには珍しく、
戦後福祉国家を目指したアトリー政権下の英国を探求するという目的もあるようです。
(マイケル・シーンが主演した舞台「ナイ」にもアトリー首相が出てきましたね)
マークはアラステア・シム主演のサスペンス「青の恐怖」や
当時の製作者コンビ「パウエル=プレスバーガー」など、
戦後の映画にも影響を受けていることを明かしています。
「青の恐怖」はアマプラでも鑑賞できます。
アラステア・シムの警部がとぼけた雰囲気で可愛いんですよ。
実は、”Bookish”はロンドンが舞台ではありますが、
撮影が行われたのはベルギーだったりします。
Eagle Eyeの子会社がベルギーにあり、税金対策らしいですが、
戦後のロンドンの雰囲気を巧みに再現しています。
(もっともベルギーの人にはどこで撮影してるのかわかっちゃうみたいですが。
「ドクター・フー」を見てると「これロンドンじゃなしにカーディフやん」と思うのと同じですね。)
トロッティーを演じるポリー・ウォーカーや、
ジャック役のコナー・フィンチはマークとは初共演ですが、
脇を固める警部役のエリオット・レヴィは舞台「コリオレイナス」で共演、
ゲスト出演のダニエル・メイズは"FUNLAND"や"Against the Low"等で共演、
謎の人物を演じるティム・マッキナリーは「SHELOLCK 忌まわしき花嫁」に出演と、
これまでのマーク関連作品の常連。
お友達総結集な感じも安心感があります。
アレックス「20年前に初共演した時のことを覚えてるんでしょ?」
— マーク・ゲイティスinfo (@MarkGatissJp) November 12, 2024
ダニエル「BBC Threeの”FUNLAND”ってドラマで共演した。マークはゲイのオランダ人剥製師で白い木靴、金髪の鬘、蛍光ブルーの下着を着てた。そして今年初めに撮影した(マーク脚本の)”Bookish”が7回目の共演」pic.twitter.com/lvQjBeDBh3
ロンドンを舞台にした探偵が活躍する時代物、主人公はゲイで本に精通している愛犬家。
ブックさんはまるでマークの化身のよう。
彼のこれまでの仕事の集大成のようなドラマシリーズがこの”Bookish”なのです。
(マークとブックの違いは、料理が出来るかどうかくらい?)
現時点(2025年9月)ですでに第二シリーズの撮影も開始していて、
(しかもゲストにルパート・グレイヴスやミランダ・リチャードソンなど!)
これからの展開がますます楽しみなのです。
…と、前置きだけて長くなってしまったので、
本編の話題はまた次回…
続きは↓



















