だから、ここに来た!

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⬛︎2025年11月1日⬛︎

 

 

ベネディクト・カンバーバッチオリヴィア・コールマン主演の映画

「ローズ家~崖っぷちの夫婦~」をなんとか観てきました!

なんとか、と言ったのは、公開されたことを失念していて、

公開翌週には一日一回上映になっていたからです。

いつもなら公開前にどこかしらのSNSで広告を目にするはずなんですけどね…

上映館も限られているので、久しぶりに新宿ピカデリーに行ってきました。

(エスカレーターが長くて苦手なんだよな…)

仕事の後に行ったので、大事なオープニング前のシーンをほとんど見逃してしまいましたが…

 

↓でも動画はあった!

 

公開日を失念してはいましたが、映画自体は大変楽しみにしていたのです。

ベネさんとオリヴィアという、現代英国俳優を代表する二人の

その手があったか!という意外となかった共演もさることながら、

「ゴーストバスターズ」等でもちろん知っていたけれど、

「イエスタデイ」のロンドンプレミアで本人を目にして

すっかり好きになってしまったケイト・マッキノンや、

15代目ドクターことンシューティ・ガトワも出てると言うことで、

久々のオールスタームービー!と待ち焦がれてはいたのです。

 

監督は「オースティン・パワーズ」シリーズや

「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズのジェイ・ローチ

脚本は「哀れなるものたち」や「女王陛下のお気に入り」のトニー・マクナマラ

それぞれの作品を見てると、この組み合わせもちょっと意外。

 

1989年に製作されたオリジナルの映画「ローズ家の戦争」は見たことがないのですが、

今回は女性の社会的成功や男性の育児等、

夫婦の役割がより現代的に作り替えられているようです。

 

英国人の夫婦、建築家のテオ(ベネディクト・カンバーバッチ)と

シェフのアイビー(オリヴィア・コールマン)は、

米国西海岸で双子を育てながら仲睦まじく暮らしていたにも関わらず、

新作建築が史上稀に見る大ストームで崩壊しテオは失業、

一方アイビーは同じくストームをきっかけに

自身のレストランが繁盛して事業を拡大することに。

仕事が忙しくなったアイビーの代わりにテオが双子の育児に専念することになったため、

二人の生活環境は完全に逆転。

テオは成功して自分に気を止めない妻に対する嫉妬や疎ましさが募り、

アイビーは忙しさで家族と過ごせず、双子と良好な親子関係を築いていく夫を憎らしく思い、

それぞれの不満が少しずつ溜まっていきます。

怒りを抱えつつお互いを思いやる気持ちを思い出し、

罵っては謝るやりとりを繰り返しながら、

なんとか関係を保っていた二人でしたが、

意外なきっかけでついにテオが別れを切り出し…

 

ここからネタバレ領域。

 

面白いのは、あっという間にカリスマシェフになり支店を拡大していくアイビーは

上司や友人の忠告も聞かずに崩壊するような建築を手がけるテオよりも有能に見えるし、

双子を優秀なアスリートとして育て上げたテオは、

際限なく子供達にスイーツを与えちゃう管理能力のなさそうなアイビーよりよく出来た父親に見える

それぞれ担当する領域では能力を発揮してうまく行ってるのに、

反比例するように夫婦仲がギクシャクしてしまうのが皮肉でした。

 

そもそも、テオはアイビーの成功を応援してたし、

育児に専念してと提案したのはアイビーだし、

どちらも原因はお互いにあったりするんですよね。

それだけに、どちらの言い分もわかるし、どちらの言い訳も自分勝手に思える。

絶妙な同情と共感を感じさせてくれます。

 

見る前までは、始めからバチバチ戦争してるのかと思っていましたが、

実際には二人とも思いやる気持ちは持っていて、

イライラしつつも、我に返って反省するを繰り返していたので、

本当に戦争してたのは最後の最後でしたね。

離婚弁護士のアリソン・ジャネイを含めて無茶苦茶で最高に面白かったです。

 

「10万ドル払って消えて」が面白すぎるわんわん

 

アメリカに住む英国人夫婦、という設定なので、

アメリカ人の友人たちとのカルチャーギャップも見どころ。

射撃場に連れて行かれて拳銃をプレゼントされるのも面白いけど、

テオたちの新築を訪れた友人夫妻が、テオとアイビーの当て擦りを聞いて、

英国流のジョークを真似しようとするのに

ただの卑猥な罵り合いになったりするのが滑稽。

 

テオの友人の弁護士バリー(アンディ・サムバーグ)&エイミー(ケイト・マッキノン)夫妻も

どう考えても険悪なのを取り繕っている二人にしか見えないんだけど、

離婚協議中のテオたちにやり直すよう説得するバリーの言葉や、

エイミーの「それでも最期に看取って欲しいのはあのバカ亭主」って言う言葉から

二人の間に深い愛情が垣間見えて、何気に心動かされました。

 

オリヴィア・コールマンのコメディエンヌ的演技も素晴らしかったけど、

(酔っ払ってコケてそのまま休憩しちゃう一連の動作も最高だった)

ベネさんの久しぶりなコメディ演技を見られたのが本当に嬉しかった。

アイビーとの喧嘩の最中に新居の中を駆け回る走り方が

SHERLOCKの「三の兆候」の「毒の巨人事件」あたりの、

手振りは大きいけど速度出てないっぽい走り方を思い出したり、

飛行機の中で同業者に会ってトイレの中で絶叫する場面とか、

ランニングしながら早口の独り言で自分を鼓舞する様子とか、

シリアスなドラマもいいけど、こういうベネさんが見たかったのよー!と満足。

 

アイビーのレストランのウェイターを演じるンシューティも

店が繁盛して「チップがポケットに入りきらない!」ってはしゃいでて可愛かった飛び出すハート

ンシューティが出てくるたびに手を振りたい気分。

 

↓ンシューティとケイトの英国テスト。
ケイトの祖父はグラスゴー出身らしくグラスゴーの学生だったンシューティ大興奮の巻。

ちなみに英国に留学してから私も紅茶にはスキムミルクを使うようになりました爆  笑

 

ただそんな贅沢な出演者の演技が楽しめる貴重な映画なのに

上映回数が少ないところを見ると、あまり人が入っていないのかもしれない。

 

監督にはコメディ映画は2時間以内であるべし!のような

ポリシーがあるのかもしれないけど、

もう少し時間をかけて各シーンを描いても良かったんじゃないかな。

もしくは、テオが別れを切り出してからのあれこれがもっと見てみたかった。

いよいよ戦うのか!と思ったら、案外早くエンディングになっちゃったし。

 

それに後半の食事会の後にテオとアイビーがテーブルに向かい合って話し合う、

二人の演技が冴え渡る素晴らしいシーンがあるんだけど、余計な音楽が入ってきて、

「あーん!二人のセリフだけで演出は事足りるのに!」と不満に思った。

 

↓ベネさんが「これは命懸けで戦う価値のある家だね」と称賛する新居のセット

 

はじめに思った、ジェイ・ローチとトニー・マクナマラの相性ってどうなんだ?

っていう疑問は、最後まで尾を引いてた。

ヨルゴス・ランティモスのようなドライなダークコメディとはテンポ感が違いすぎるし…

英国人が出てくるからと言って英国風コメディになるかというとそうではないんですよね。

 

そんなわけで個人的には傑作!って絶賛するほどではないけれど、

配信されたら定期的に見たくなるはずのコメディです。

 

ベネさんまたコメディ出てくれないかなー。

 

↓NGシーン


公開されるまで、ベネさんとオリヴィアの映画の内容には関係ない動画ばかり見てましたキメてる

 

 

 

 

 

 

 

以前、ブログ記事でジョー・ライセットが出演していた

英国のバラエティ番組”Taskmaster”が面白い!と紹介しました。
毎シリーズ、5人のコメディアンが出演し、
審判役で番組の企画者であるアレックス・ホーンが用意した、

一風変わったミッション(タスク)に挑戦。
司会のグレッグ・デイヴィスが独断で判定して順位を決定するという番組。

 

 

ジョーが出演したのはS4でしたが、番組は今やS20に突入。

S17にはついに!リーグ・オブ・ジェントルマン(TLoG)のメンバーであり、

「9から始まる奇妙な物語」"Inside No.9"(IN9)のクリエイターである

我らがスティーヴ・ペンバートンが出演しました。

 

↓はタスクをしながらインタビューに答えるスティーヴ。

 

スティーヴはTLoGのメンバーの中でも特にロジカルな思考の持ち主

クロスワード制作も得意で、クイズ番組にもよく出演していて毎回好成績を残しています。

”Taskmaster”ファンとしても安心して見られたのですが、

そんな「クイズ王」スティーヴも、タスクによってはそれほどスコアを稼げなかったり

課題の意図がわからないまま投げやりになったりもしていて、

器用さや賢さだけではクリア出来ない、時には単純さも求められる、

この特異な”Taskmaster”という番組の難しさがよく分かります。

 

↓スティーヴのハイライト集

ちなみに私はアレックスとのハングマン勝負、も好きでした。

 

そして、インタビュー・タスクの中でアレックスに

「この先の”Taskmaster”で誰が見たい?」と訊かれて

スティーヴはこんなことを言っていました。

仲間のリース・シェアスミスマーク・ゲイティスが是非見たい。

(でも2人が同時に出るのは)競争が激し過ぎるし、

自分が一緒にいなくて妬けてくるから嫌だ。

そしてスティーヴの望み通り!最新作のS20ではリースが出演することに!

 

 

なんでスティーヴが出演した時にブログの記事にしなかったのかって?

だってリースまで出演するとは正直思ってもみなかったんだもの。

 

グレッグとアレックスいわく、TLoGのメンバー全員が番組のファンらしく、

スティーヴに先に声をかけた理由はなかったらしいけれど、

数えるほどしかクイズ番組に出演していないリースがこの番組に出演したのは、

スティーヴが先に出演してその楽しさを教えてもらっていたかららしい。

 

リースが得意なのはゲームよりも、マジックと料理のイメージ

最近素で出演していたのは「ブリティッシュ・ベイクオフ」くらい。

インタビューでは、ゲーム番組のオファーはあるけど間抜けだと暴露されるのが怖い!

だから自分の頭の悪さは隠している、と話しています。

 

 

↓二人がホラー映画絵文字クイズに挑戦するとこんな感じ。


普段彼がやっている番組はじっくり考えて構築していくようなタイプのドラマだし、

短気なおこりんぼキャラのリースが”Taskmaster”のようなゲーム番組に出演したら、

キレ散らかして気まずい雰囲気になるのでは…大丈夫?と勝手に心配していました。

 

ところが蓋を開けてみると、スタジオでの彼は穏やかで優しげで、

ジャッジ役のグレッグも本編で同じことを言っていて笑いました。

頭の悪さを隠しているというより、短気をうまく隠してる(笑)。

 

 

リースと一緒に出演しているコンテスタントも、

そんな彼の隠れた気性を感じているのがインタビューを読むとわかって面白い。

リースはいつもは落ち着いた物腰なのに、

時々怖い校長先生モードになるから可笑しい。

頻繁に怒鳴ったりしない。叫ぶみたいなのじゃなくて、もっと厳しい眼差し…

ハンニバル・レクターみたいな、静かで冷静なのに、つまるところ恐ろしい。

− メイジー・アダム

みんな面白いけど、リースには何か

千の言葉に値する視線を投げかける時があってそれが面白い。

身を乗り出し、メガネをずらしてグレッグとアレックスを見つめる時。

それが私のお気に入り。リースが彼らに手こずるところを見るのが大好き。

それに彼はクリエイティヴなタスクがすごく得意

すごい思考の仕方をしていて見ているとカッコよくて、

IN9を作った人なんだってよくわかるよ。

− アーニャ・マグリアーノ

アレックスですらリースがちょっと怖かったらしい。

メイジーはかなり彼を怖がってたし、僕も怖かったと思う。

怒りが湧き上がっては収まって、予測できないところがあった。

− アレックス・ホーン

今にも爆発しようとして、実際には爆発しないという感じがしたな。

スタジオでは圧倒的に魅力的で面白くて輝いていた。

− グレッグ・デイヴィス

他の2人はもっと親しみがあるみたい。

彼とは気持ち悪いファンとして会ったことがある。

TLoGやIN9の大ファンで、スティーヴは何年か前に僕の出た公演に

子供達と一緒に来たから面識があった。

”Funz and Games”っていう不適切なキッズショーで

彼らはお菓子や賞品を貰ってて、

幸い何が起こってるかは分かってなかった。

だからスティーヴとはそこから知ってて、

Taskmaster Liveの発表会で彼と会って喋った。

番組に出演するとは言わなかったけど! 

実は何年も前にリースのサインを貰おうと列に並んだことがある。

この間サインしてもらったグッズを全部見つけたよ!

− フィル・エリス

サンジーヴ・バスカーは年長者でリースとも昔から面識あり。

初めて会ったのは私が”Goodness Gracious Me”を、

そして彼がTLoGを始める前のこと。

26年程前、SNLのような番組のオーディションで二人とも合格しパイロット版に出た。

彼のスケッチのファンだったし、勿論TLoGもその後のシリーズも。

リースは超スマート。彼の作品を見れば革新派でゴシック脳だと分かる。

私は彼より年上だけど、どちらも番組の脚本を書いて

異なる番組で異なる役柄を演じてきた。他の三人とは違って。

だから私たちはもう少し似ていると思った。

− サンジーヴ・バスカー

これからの本編でグレッグはリースとサンジーヴを年寄り扱いしていくみたいだけど、

本編の中で、QRコードを読み取るために

個人の部屋に戻って(携帯)電話を持ってくるようにアレックスが指示するも、

リースが理解できず"My telephone??"と繰り返し、

普段タスク中に滅多に笑わないアレックスも吹き出してしまう場面があります。

リースの年相応の素の反応が見られてこの番組の醍醐味だなーと思ったりします。

若い連中は電話がなんなのか分かってないと思う。

「携帯」と「電話」の違いがね。

リースと私は確かに(他の出演者と)違う時代の人間だから(年寄りと)思い浮かんだんだろうね。

− サンジーヴ・バスカー

そして、最終的には5人でアレックスとグレッグに

反逆するような行動も起こしたりするらしい。

異なる5世代の出演者が揃った今回の”Taskmaster”がどんな方向に向かっていくのか、

これから10週が楽しみです。

 

マークもいつか出演してくれるかなー。

やっぱりあんまりイメージ湧かないけど(笑)。

 

 

前回の記事では作品の成り立ちだけで終わってしまったので、
今回は第一シリーズ第1話”Slightly Foxed”(前編)について。
 
あらすじと合わせて、ちょっとした裏話と自分の感想を綴ってみました。
◼️ブックという名の書店主◼️
ホワイトチャペル刑務所から出所したばかりの青年ジャック(コナー・フィンチ)
手元のメモを頼りにアークエンジェル・レーンにある古書店に辿り着く。
店の看板には「BOOKS(本)」ではなく「BOOK’S(ブックの店)」と書かれている。
店を訪れたジャックをもてなす書店主の名前はブック(マーク・ゲイティス)
看板は本のことではなく書店主の名前だったらしい。
彼は出かける機会が多くなったため助手がいると話すが
職を求めて訪れたジャックは、出所したての自分が勤める場所ではないと困惑。
そこにブックの妻であるトロッティー(ポリー・ウォーカー)が駆け込んでくる。
戦時中に爆撃があった場所で不審なものが見つかったと言うのだ。
 
♦︎豆知識・感想♦︎
本編でも後に明かされますが、ブックのフルネームは「ガブリエル・ブック」
さらにブックの愛犬の名前は「ドッグ」
アークエンジェル(大天使)通りのガブリエル、
書店主のブックと愛犬のドッグとは、かなりふざけたネーミングですが、
マーク曰く
「主格決定論(=名前がその人の人生に影響を及ぼす仮説)というものです。何がいけないの?」
確か刑事コロンボも愛犬に「ドッグ」と名付けてましたね。
ドラゴンボール世代の私としては、こういう安直な名前の付け方は嫌いではありません。
それに、ロンドンの本屋に天使、というと「グッド・オーメンズ」も思い出します。
マークも出演しているので、影響を与えているかもしれませんね。
 
エピソードタイトルの”Slightly Foxed”は古書店用語らしいですが、
日本語の古本屋ならどう表すかな…と考えて
「若干の変色(シミ)有」と脳内で訳しています。
 
ブックがジャックに教える紅茶の淹れ方、「一人に一杯、ポットにも一杯」
マーク自身がおばあちゃんから教わった淹れ方だそうです。
今でも紅茶はティーバッグを使わずポットで淹れるそう。
 
あとジャックが「ただのジャックだ(Jack just Jack.)」と名乗って、
その後ブックが「ただのジャック君」と呼ぶのは、
「ビーイング・ヒューマン」でマークが演じたミスター・スノウ
ニック・カトラーを「カトラー・ニック・カトラー」と呼んでたのを思い出しました。
 
 
◼️謎のペスト墓地◼️
爆撃地のインカーマン通りを訪れるブックとトロッティーとジャック。
彼らを歓迎するブリス警部(エリオット・レヴィ)
見廻りをしていたベースハートによって発見された窪地の中の十数組の白骨を見せる。
ジャックは爆撃の死者であると考えるが、
ブックは衣服が朽ちていないことから最近の遺体ではないと推理。
そして窪地で見つかった1665年のコインからもペスト患者の埋葬墓地であると分かる。
 
♦︎豆知識・感想♦︎
ブリス警部を演じるエリオット・レヴィはマークと舞台「コリオレイナス」で共演。
その後も休暇中?にバースの広場で一緒にアイスを食べてるところを目撃されたりと
公私共に仲良し。
このドラマでも息のあったコンビっぷりを見せています。
ちなみにエリオットもマークも共に近年オリヴィエ賞を受賞したばかり。
 
ブックがチャーチルからの手紙を持ってるために事件現場に立ち会えるという設定は、
マークいわく「ドクター・フー」に登場する、
相手に見せたい身分を表示出来る「サイキック・ペーパー」から拝借したそうです。
現ショーランナーのラッセル・T・デイヴィスにも承諾済み?だとか。
 
モリス巡査部長「なんで普通の人みたいに切手集めをしないのか」と発言しますが、
これは「SHERLOCK」でマークが脚本を書いた
『大いなるゲーム』でもドノヴァン巡査部長がジョンに言ってましたね。
 
「人は皆、草の如し」’All flesh is grass’は聖書からの引用。
 
また現場を見にきてたご近所さんのノーラが
昔は意図的に感染させるために(to deliberately effect people)
ペストの死者を投げ込んだと話し、トロッティーが恐ろしい!と言うと
ブックが「分離不定詞も恐ろしい」と付け加えますが、
分離不定詞とはto不定詞の間に副詞を入れる間違った文法
『大いなるゲーム』の冒頭と同じく、
マークの文法警察っぷりがブックに乗り移っていて、
この後も何度も文法間違いを指摘したり閉口する様子が描かれています。
 
ちなみに余談ですが、ペスト患者の埋葬地と聞いて、
グリニッジ南のブラックヒースをドライブしていた時に、
地元の人から「ここに黒死病の犠牲者を大量に埋葬したんだ」
と教わってゾワっとしたことを思い出しました。
 
 
◼️薬剤師ハーカップの死◼️
ブックたちが白骨発見現場を後にしようとすると、新たな事件が発覚。
薬局を営むハーカップが青酸を飲んで自殺したという。
ブックは第一発見者である雑用婦のドレッジ夫人(ロージー・カヴァリエロ)
お茶をもてなしながら聞き込みをし、
ハーカップと仲違いをした娘マルーラ
恋人のミッキーと駆け落ちしていることを聞き出す。
また、ハーカップの翡翠の像のコレクションのひとつが
チェスの駒と入れ替えられていることを発見し…
 
♦︎豆知識・感想♦︎
「9から始まる奇妙な物語」最終回に出ていたのが記憶に新しい
ロージー・カヴァリエロがゲスト出演。
ドレッジ夫人の口を割らせるために持ち出した彼女の元職場ライオンズ・コーナー・ハウス
当時は今のマクドナルド程にどこにでもあるカフェチェーンだったそうな。
そしてここでも文法警察ブックはドレッジ夫人の間違った付加疑問文をあえて復唱しています。
 
 
◼️これは殺人だ!◼️
一方、書店の隣にあるトロッティーの壁紙屋を覗くジャック。
彼の部屋は屋根裏に用意されており、食事も用意されていることを聞かされ、
何故ブック夫妻が自分に親切にしてくれるのかと疑問に思う。
そしてトロッティーの店に戻ったブックは、
翡翠の像が置き換えられている点やハーカップの後頭部の瘤、
そして青酸が使われたことから、この事件が自殺ではなく他殺であるという推理を明かす。
 
♦︎豆知識・感想♦︎
翡翠の像がチェスの駒に置き換えられていることを
埃を見て気づいたブックは「埃は雄弁だ。誰かも言っていたが」と言いますが、
この台詞は「SHERLOCK」の『ライヘンバッハ・フォール』でシャーロックも言ってましたね。
ブックが警部に言う「最も強力な戦士は忍耐と時間」
“The two most powerful warriors are patience and time.”
トルストイの「戦争と平和」からの引用。
また、トロッティーに推理を披露する際に引用する詩は
ジョン・キーツの「ナイチンゲールに寄る」
 
ブックが何かを思いついた時にタイプライターのようなチン!という音がなったり、
推理に本気を出す時にメガネを外すのが好きです。
メガネかけないと実は美形アピールでしょうか。
そんなことしなくてもわかってるよ…
 

 

◼️私には体系がある◼️

翌日、ジャックは警察の捜査に協力するブックが

一体何者なのかを本人から聞き出そうとするが、

「時には私のような人間が秩序を強いることが必要なだけ」とはぐらかされてしまう。

彼には彼独特のシステムがあり、本棚の配列もアルファベット順ではなく、

彼の連想に基づいた配置になっているのだという。

 

ハーカップの娘マルーラに事情聴取する警部とブックは、

恋人のミッキーがかつて闇市場で働いていたことがあり、
ハーカップは店からモルヒネを盗んだのがミッキーであると疑っていたことを知る。

一方、店番をしているジャックとノーラはお互いの両親について語り合う。

 

♦︎豆知識・感想♦︎

「大滝(cataracts)」「白内障(cataracts)」の本が一緒に並べられていたり

ブックの本棚はシャーロックのマインドパレスのように、

彼でしかわからない並び方になっていて、

これが「アナログコンピューターとしての書店」というこのドラマのコンセプトになっています。

ジッと考え、本の場所を思い出すのは前回の記事で触れた本屋がモデルです。

 

そしてブックの元にジーンという女性客がやってきますが、

彼女は今後も出てくる非常にマークの作品らしい登場人物。

どの辺が?というのはまた追々…

こんなにハンサムな紳士にスマートに本をオススメされて、
足の具合まで気を遣われちゃったら、そりゃ通いつめたくなりますね。

 

 

◼️ブック夫妻の出会い◼️

ブック夫妻は寝室でジャックについて話し合う。

夫妻はジャックに話すべきことを抱えているが、
ブックは時期尚早だと読書を続ける。

トロッティーはブックと出会った猩紅熱病棟のことを思い出し…

 

♦︎豆知識・感想♦︎

ブックとトロッティーの出会いの場が再現されますが、

この子役が実にマークとポリーに似てる!

特にブックの子役(マイロ・スレッシャー)がマークの子供時代にそっくり!

これまでも子供時代の子役が登場することがあったとは思いますが、
ここまで本人のイメージに近い子は初めてじゃないでしょうか。

キャスティングGJ過ぎる!

(上が本編、下がマークの少年時代)

 

 

このシーンで若きブックが読んでいるのが"Tim: A Story Of School Life

年上の青年キャロル・ダーリーに恋をする少年ティムの寄宿学校生活を描いたもので、
ブックが同性に興味があることを示唆。

また、ブックとトロッティーが同じ寝室を使わずに別々に就寝していること、

夜に別々に外出することなどから、二人が一般的な夫婦とは違うことを少しずつ暗示させています。

 

ちなみにトロッティー役のポリー・ウォーカーはマークと同じ1966年生まれ

5月生まれなので、10月のマークよりちょっと早く生まれてる同い年。

近年は「ブリジャードン」「ライン・オブ・デューティー」に出演していますね。

「ブリジャードン」はいまだに見れていないからこれを機会にいつか手をつけたい…

 

 

次回は後半の第二話。