第二回「檸檬」感想 | 沢渡の感情記録簿

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触れたエンタメ作品の感想とかをつらつらと。

こんばんは。

 

つい先ほど梶井基次郎の『檸檬』を読み終えたので、つらつらと感想を書いていきたいと思います。今回はがっつり日本文学です。

 

 

ざっとあらすじ。

『檸檬』は不治の病に悩まされる主人公の物語である。

 

主人公は「えたいの知れない不吉な塊」に心をおさえつけられる。そんな状態で街を浮浪しているが、どんな美しい音楽も詩も主人公の心を晴らすことなく、むしろ辛抱ならなかった。

 

そんななか、町の果物屋で檸檬を買う。

檸檬を手に取ると、心をおさえつけていた不吉な塊がいくらか緩んでくるような気がした。そして主人公は普段は避けていた「丸善」へと入っていくのである。

すると、心を満たしていた幸福な感情が逃げていってしまった。

 

丸善の美術の棚で画本を手に取る主人公。本を積み重ね檸檬を置く。そこで奇妙なアイデアが起こる。

 

「丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けてきた奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう」

 

 

うーん。名作。非常に面白いと感じました。

たんたんと進む主人公の日常。その中で際立つ主人公のアイデア、非日常。

果物が数多くある中で、檸檬をチョイスするというセンス。檸檬と言えばすっぱい。爆弾のような危険なイメージにピッタリだと思います。さらに言うと警告色だということも爆弾と結びつけやすいなと思います。

 

構造もおもしろく、心をおさえつけていた不吉な塊を晴らしてくれたのが「檸檬」であり、幸福な感情が逃げて行ってしまう避けていた丸善を爆破するのも「檸檬」なのです。

 

さらに、文中で檸檬がカリフォルニア産であることが書かれています。海外産の爆弾で、日本の芸術に関する場所を爆破する。

あまり大きな声では言えませんが、戦争を想起させる仕組みになっているような気がしました。

なんだか梶井が当時何を考えていたのか、少し読めたような気がします。

いろいろ考えるのは楽しいですね。

 

 

梶井はほかの作品もおもしろく、読みごたえがあるので、気になった方はぜひ手に取って読んでみてください。