鎌田茂雄(1994)『法華経を読む』(講談社学術文庫)
普門品
観世音菩薩普門品――観音経の功徳――(p373)
「『観世音菩薩普門品』の『観世音』というのは『観世音を観ずる』ということである。世音というのは世間の人の声であり、われわれの悩みのことである。『観』とは観察することで、世の中の人々の悩みを観(み)て下さるのが観世音ということである。『普門品』の普門というのは、普(あまね)くすべての人を入れるという意味であり、どんな人でも入れることである。観世音菩薩があらゆる人々を救ってくれることを説いたのが、この普門品なのである」(p375)
「観世音菩薩普門品第25」は古くから人々に親しまれてきた。鎌田は「観世音菩薩があらゆる人々を救ってくれる」と解説しているが、この意味は誰かに救ってもらうのではなく、「観世」とは、末法の菩薩があらゆる人の苦しみを敏感に感じ取り、積極的に民衆救済に立ち上がる意味である。誰かに助けてもらうという生き方は本物の菩薩ではない。