3-4 女性を尊重した
日蓮は女性を尊重していた。
★「女の一生」と女性の自立
中国に「三従」という思想がある。「三従」とは、「女性は、生家では父に従い、嫁しては夫に従い、夫の死後は子に従うということである。NHKの 2012.12.18のニュースによると、OECDが、賃金の男女格差でわが国は、女性が男性の61%と加盟国中最低だった、と発表した。わが国では、女性の社会的地位の向上への戦いは、今も続いている。ギー・ドー・モーパッサン(Guy de Maupassant)の小説『女の一生』は、両親に大切に育てられたジャンヌが浮気性の夫ジュリヤンや放蕩息子ポールに振り回されて一生を送る様子が描かれている。この小説は女性の幸福とは何か、を考えさせる作品である。
筆者は女性が周囲に振り回されずに生きてゆくために大切なことは、自己自身の中に内在する仏界という境涯に気づくことではないか、と考える。
★女人成仏
「小乗教」では女人の成仏が許されておらず、「諸大乗経」においてすら「改転の成仏」といって、女性は、一度男性になってから成仏すると言われた。
「法華経提婆達多品第12」に竜女の成仏が説かれている。三枝充悳(2000)『法華経現代語訳』(中)で「竜女の成仏」を次のように通解している。「竜女が忽然の間に身体を変じて男子となり、ボサツの行を身にそなえて、直ちに南方のけがれのない世界に往き、宝の蓮華のうえに坐って、一切平等の正しいさとりを成就し、三十二相・八十種好があって、十方のすべての生あるものたちのために、すぐれた教えを演説するのを見た」(p310~311)と。日蓮も「開目抄」(御書p223)で「竜女が成仏此れ一人にはあらず一切の女人の成仏をあらはす」と、「竜女」の成仏を挙げて明確に女人も往生できる、と示されている。
★女性の特質を理解
世の中には女性を差別したり、女人禁制の宗教もあるが、釈尊、日蓮は女性信徒を大切にしていた。日蓮は女性の特徴を深く理解していた。例えば、女性の「月水(月経)」についても「月水と申す物は外より来れる不浄にもあらず」(御書p1202、月水御書)と述べている。また、「女子は門をひらく男子は家をつぐ」(御書P1566、上野殿御返事)と女性を尊重している。日蓮には女性を一段低く見る発想はない。
日蓮の思想がいかに時代の先端を行っていたか、次に紹介する。
「末法にして妙法蓮華経の五字を弘めん者は男女はきらふべからず」(御書 P1360、諸法実相抄)。「男女はきらふべからず」と日蓮が述べているように、日蓮の思想に現代社会でも通用するような理念が存在していることは、驚くべきことである。