小学校低学年のころから中学生になるころまで、子供たちの間で切手の蒐集がブームとなった時期があり、私もその仲間に加わった。少年向け漫画雑誌なんかに切手の通信販売の広告が載っていて、外国切手が20枚とか30枚のセットになって販売されていた。そんなお手軽な通販の中に入っていたのがエリザベス女王の切手。それがエリザベス女王という人がいることを知った最初で、「女王」の意味も分からぬまま、子供心に「きれいな人だな」と思った程度。その後、整理もしないまま半世紀余り押入れの奥に放置されていた切手帳を見つけ出し若き日の女王の肖像を撮ってみた。
切手に限らずコインや紙幣にも女王を描いたものがあり、カナダやオーストラリアなど、いわゆる英連合王国の多くの国で発行されていたようである。そして、これらがやがて新国王のチャールズ3世の肖像にかわるだろうと言われているが、なかには連合王国を離れ共和制に移行する国も出てきそうだと言われている。女王が偉大過ぎて70歳過ぎて即位した新国王は人気がない。
女王は若干25歳で即位している。TVでやってる回想録などを見ていると、その当時の声など、まだ弱々しく、女学生のような語り口をしているのだが、眼だけはこの切手のように強い意思の存在を感じさせる。国家元首として、王家の長として、尋常ならざる覚悟を持っていたのだろう。在位70年。決して短い時間ではない。公務でも家庭でも様々な風雪があり、それを乗り越えてきた。晩年の写真を見ると、この眼がさらに強く、深みを増しているように感じられ、感動すら覚えてしまうのは私だけではないだろう。
時代を象徴する「顔」というものがあるとすれば、エリザベス女王は第2次世界大戦後の平和な時代のまぎれもない「顔」であり、人々の記憶に長く残ってゆくだろう。国葬は現地時間19日11時、ウェストミンスター寺院で執り行われる。
合 掌
PS.次の時代の顔がプーチンやトランプにならないように祈ろう。