3年か4年ぶりだと思うが、とにかく実に久しぶりに小説を読んだ。村上春樹の「ノルウェイの森」。
この人は私と同じ時期に同じ大学で学生生活を送っている。年齢も1歳しか違わない。そんな人が30代半ばで書いた小説なので、どこかシンパシーを感じるところもあるかと期待もあったのだが、読みだしてすぐに感じたのが「つまらない」という事。ただ、この作品が発表された当時に読んでいれば、もっと違った感想もあり得たかもしれない。そういうエクスキューズはありうる。70年も生きてきた人間の読む小説ではない。そう言えば書いた本人も多少は納得してくれるだろう。
ただ、それでも気になるのはやたらに饒舌だという事。散見するところでは村上春樹評というのは高い評価と全く評価しないものと二分されているようで、評価しない人はこの饒舌を嫌ってるように思う。確かに読みやすい文章だとは思うが、「読みやすさ」はイコール「わかりやすさ」ではない。作家は言葉を素材として自ら語ろうとする世界を織りあげてゆく。語ろうとする世界を過不足なく、正しく伝えようとすると、どうしてもひとつひとつの言葉の選択にはシビアになってゆく、そういう所が感じられない饒舌さだけに、読者はする必要のない誤読をするだろうし、評判の高い小説だけにあえて言うなら人生を誤読する読者だっているだろう。私は好きになれなかった。
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「ノルウェイの森」は若者のいわば「自分探しの旅」がモチーフになった小説と言っていいのだろう。この人の作品を読むのは初めてで、最近の作品を読んでないのでわからないが、もしかするとこの人は今も自分探しをしてるのではなかろうか、まさかとは思うが「ノルウェイの森」の饒舌さからは、ありえないことではないと、そんなことも感じた。蛇足ながら付け加えておく。