20xx年。
人類は既存の原子炉に次ぐ新エネルギー『誘導炉』を世界で唯一、核汚染から逃れたアフリカ大陸の地下に建造し稼働させていた。
砂漠に地下誘導炉を掘った人類は、深く掘り下げるほどに誘導炉爆発を引き起こしてしまい、逆にリスクの高い地表へと追い出されていった。
地下第3深階まで追い詰められた人類は、高名かつ優秀なラビット・ラビ誘導炉主任の動向に注目していた。
ゴールドチェーンのメガネをかけた初老のラビ主任は声を上げた。
「ここで誘導炉暴走を止めなければ、このセクションは72時間も持たない。総員解析準備」
茶色のツナギを着た誘導炉作業員が敬礼をしながら言う。
「ラビット・ラビ誘導炉主任、この炉を沈静化するより第2深階の安全性を確保するのがプライオリティかと!」
「全ての深階の炉で総力を尽くさねば、この入植地の安定化はありえない。第2深階にはまた、この私を継ぐものがいるだろう」
「了解です!アンゴラ砂漠第3深階、総員に告ぐ。解析作業に重点、117サーバーを一時解放。除染専従員は現状維持!」
そこにTシャツジーバンの短い無精髭を生やした学生風の男が話に入ってきた。
「………えと、いいですか?ワタシは………はあ。これほど深く入植し、誘導炉爆発に追われ除染に尽くす日々を理解できません」
「………フィッシュ。今までどこにいた?俺にはお前の方が理解できん」
セクションアラームが告げる。
『ピーーーーーー。人道的公開案件:フィッシュ・フィ第3深階副主任:Ωウイルスに感染:0utput time :8760 hour.』
「………マザーの言う通りだ。ウイルス保持者。去れ。区域除外案件だ」
「………えと、ラビット・ラビ誘導炉主任。これまでありがとうございました。………そして、あ、下っ端の吉岡。生き残れよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……フィッシュ先輩。行ってしまわれた………あれほど炉制御に熱心だったのに。ラビット・ラビ誘導炉主任には、感傷というものは無いのですか!?」
「あいつは最後に舌を出していた。吉岡、お前は観察力が足りない」
「………舌?」
「母体を離れた個体は長持ちはしない。気が知れん。しかしそこに頭脳を割いている暇はない。解析を続けろ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フィッシュ・フィは赤い砂漠をふらふらと歩く。
「るーるーるー。初めて砂漠を見た。自由とはこの上なく虚しいものだ。
しかしワタシの中に声が響く。
イキロシネ?………辞書のインストールを忘れてきた。
とりあえずサンマが食べたい。
しかし賢人曰く、『砂漠のインド人は魚を食わないことを誓う』だと。
それじゃ何も面白くないだろうにねぇ。とりあえず探そうよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後、誘導炉制御は上手くいったらしい。
サンマはあるわけがない
(終わり)
画像生成AI すごいですね。
(2018/05/18筆ー2025/09/26加筆)

